男性の育児休業取得を推進する自民党の「男性の育休『義務化』を目指す議員連盟」(会長・松野博一元文部科学相)は男性社員から申請がなくても企業側が育休を取らせる制度を新設する検討に入った。育児・介護休業法の改正を視野に党内に新たに検討組織を設けて議論を加速させる。

議連は6月に男性社員から申請がなくても企業側から育休の取得を促す「プッシュ型」の取得義務化を柱とする提言をまとめ、安倍晋三首相に提出した。男性社員の育休取得への嫌がらせ「パタニティーハラスメント(パタハラ)」対策の必要性や、人手不足に悩む中小企業に配慮する対策の創設を盛り込んだ。

育休を義務化するためには育児・介護休業法の改正が必要だ。同法は2017年の改正で、男性社員の育児参加を促すための休暇制度の新設を企業の努力義務に位置づけた。

政府は2020年に男性の育児休業取得率を13%に引き上げる目標を掲げる。厚生労働省の「2018年度雇用均等基本調査(速報版)」では2018年度の男性の育休取得率は6.16%にとどまった。

男性社員の育休取得率が低いのは社内に取得を申し出にくい雰囲気があるからだとの指摘は多い。企業側から育休取得を促すことを義務化しない限り、男性の育休取得の改善は見込めないとの声がある。

議連は党内で新たに設ける検討組織で制度設計を詰めたうえで、公明党や野党の協力を求めて法改正の実現にこぎつけたい考えだ。





中国が輸入禁止、周辺国も反発
国境を越えて行き交うプラスチックごみが、先進国を中心に行き場を失っている実態が明らかになった。「資源」として受け入れてきた中国が一転、環境を汚す「ごみ」との理由で輸入を禁じたのがきっかけだ。慌てた先進国は東南アジアに振り向けるものの、それも反発を受けて輸出できない分が国内に滞る。プラ製品の使い捨て禁止や焼却処分の強化などの対策を急ぐが、海外任せにしてきたツケは大きい。世界の化学大手も対策に乗り出した。

小泉進次郎環境相は11日、就任後初の記者会見で、海に流れ出すプラスチックごみ対策で日本の取り組みを海外へ積極的に発信する姿勢を強調した。念頭にあったのが6月の20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)だ。海を汚すプラスチックごみを2050年までにゼロとする目標で合意し、世界の目がプラごみに向かった。

資源からごみへ

にわかに深刻な国際問題になったのはなぜか。日本貿易振興機構(ジェトロ)などのデータをたどると、処理を待つプラごみが先進国を中心に各地であふれているとみられることがわかった。

中国は2017年に年間約700万トンを世界から受け入れていた。プラごみが衣類や再生プラスチックの原材料になる「資源」だったからだ。中国側の需要に合わせ、2014年時点で米国は約110万トン、日本は約95万トンを輸出していた。

だが2017年末、中国が「汚れたプラごみが河川や海に流れ出し、環境汚染が深刻になった」(中国当局)として輸入を禁止した。この結果、2018年には米国から中国への輸出は約4万トン、日本からも約5万トンに激減した。

輸出先に急浮上したのはアジア諸国だ。米国はマレーシアに約20万トンを輸出するなどした。日本も約19万トンをタイに送るなどしたが、ここ数年で140万〜160万トン輸出してきた分をまかなえず、2018年は100万トンまで落ち込んだ。輸出できなくなった分は国内に滞留しているとみられる。

さらに事態を深刻にしたのは、東南アジアにも反発が連鎖したことだ。フィリピンやマレーシアは、受け入れた分を送り返す意向を相次ぎ表明した。






国連が各国の首脳らを集めて温暖化対策を議論する気候行動サミットが23日、ニューヨークの国連本部で開かれる。国連は温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」が2020年から本格運用となるのを控え、温暖化ガスの削減目標の上積みを各国に求める。だが、トランプ大統領が参加しない見通しの米国と、対策強化を訴える欧州勢の溝は深い。日本も大胆な対策に踏み込めない。温暖化の脅威に立ち向かう世界の前に暗雲が漂う。

「石炭火力発電所を閉鎖し新規建設を取りやめ、カーボンプライシング(炭素値付け)を導入すべきだ」。国連のグテレス事務総長はサミットの開催にあたり、各国に具体策を強く求めた。

国連が対策をせかす背景には欧州の記録的な熱波など世界で相次ぐ異常気象がある。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書は、現在のペースでは早ければ2030年代に産業革命前からの気温上昇が1.5度になると指摘。すでに約1度上昇しており、このままでは海面上昇や干ばつなどで多くの人命が危険にさらされる。

小泉環境相出席

グテレス氏の危機感はサミットに臨む姿勢に表れている。「2050年までに温暖化ガスの排出量を実質ゼロにするための具体的計画」を持ち寄るよう参加国に促した。これに応える意向なのが、イギリスなどの欧州諸国だ。削減目標の引き上げ検討の考えを表明する国もある見通しだ。

一方、グテレス氏の意気込みとは裏腹に先進国を中心とする各国の連携にはほころびが目立つ。

日本は小泉進次郎環境相が出席するが、石炭火力発電所の新増設計画などに国際社会の批判が根強い。温暖化ガスの排出量を30年度に13年度比で26%減らす目標を掲げるが、原子力発電所の再稼働が進まない現状では達成が難しい。上積みできる状況にはない。

石炭火力について小泉環境相は「減らしていきたい」と話すものの、全廃の方針は示していない。石炭を維持する姿勢は海外の市民団体などから「対応が不十分だ」と批判を浴びている。グテレス氏が求めた「具体策」の要求に応えられず、日本に演説時間が与えられないとの臆測も流れる。

トランプ政権は2017年にパリ協定からの離脱を表明し、撤回する意向もない。米国の担当者はサミットでも距離を置く見通しだ。米国は6月の20カ国・地域首脳会議(G20サミット)関係閣僚会合の場でも「パリ協定は不公平な条約だ」(ウィーラー米環境保護局長官)などと主張した。

広がる批判姿勢

態度を硬化させる国がほかにも現れる。石炭産業が盛んなオーストラリアだ。太陽光発電などの普及が進むものの、液化天然ガス(LNG)も多く輸出する。化石燃料と経済が深く関わる。

モリソン首相も「石炭はこの国の将来の糧だ」と主張。温暖化の影響を指摘するIPCCの報告書にも後ろ向きな発言を繰り返す。

ブラジルのボルソナロ政権の環境相は「パリ協定は優先事項ではない」と批判姿勢をあらわにする。森林開発が原因とみられるアマゾンの熱帯雨林の火災対策でも欧州各国と対立を深める。

最大の温暖化ガス排出国である中国の出方もみえにくい。再生可能エネルギーを導入する一方、中国政府が17日に発表した声明では先進国側が資金や技術面で途上国を支援すべきだと訴えた。

こうした現状にスウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥンベリさん(16)の呼びかけに賛同した若者が20日、世界各地でデモ行進に加わっている。国内でも東京などで「気候の脅威は身近になっている」などと若い世代が声を上げた。

サミットでは、日本を含め各国がどれだけ危機感を共有し、実のある議論ができるかどうかが問われる。

(塙和也氏、安倍大資氏)





データを使い都市を効率よく管理する「スマートシティー」が世界で広がっている。中国は500都市以上が整備に乗り出し、カナダでは米グーグル親会社の傘下企業が建設を本格化した。人工知能(AI)を駆使し交通管理や省エネルギーにつなげる。ただ必要なデータ利用のルール整備が後手に回れば、プライバシーを脅かす「監視社会」の懸念もくすぶる。

湖畔の再開発が進むカナダのトロント。グーグル持ち株会社のアルファベット傘下で、都市計画を手がける米サイドウォーク・ラブズが最先端都市の開発を進める。

道路の横断に時間がかかる歩行者を認識する信号や突然の悪天候から人々を守る自動式の雨よけなどを備える計画だ。開発費用は39億カナダドル(約3200億円)にのぼる。

日本でスマートシティーといえば環境配慮型都市を指すことが多かったが、概念は変化している。野村総合研究所は現在、議論の俎上(そじょう)に載っているのは第3世代だと指摘する。AIとビッグデータを活用して全システムを統合し、グーグルや中国のネット大手アリババ集団といった「プラットフォーマー」と呼ばれるIT(情報技術)大手も取り組むのが特徴という。

米国では米運輸省のコンペで優勝したオハイオ州コロンバス市が、センサーの情報を集約し、交通事故の抑止や駐車場管理といったサービスに役立てる計画をたてる。同州のデワイン知事は「州としても技術の先端を常に行きたい」と語る。

インドのモディ政権は国内100都市をスマートシティーにする構想を進める。首都移転を打ち出したインドネシアのジョコ大統領は新首都を「グリーンなスマートシティーにする」と意気込む。

スマートシティーが異なった形で注目を集めたのは香港だ。8月下旬、「逃亡犯条例」改正案を巡る抗議活動で、カメラとセンサー付きの街灯が次々と壊された。デモ参加者が狙ったのは、香港政府が設置を進める「スマート街灯」だった。当局はスマートシティー計画の一環で交通や気象のデータを収集すると説明するが、デモ参加者は監視社会に「ノー」を突きつけた。

既に中国本土では町ぐるみの監視システムは現実といえる。上海市郊外の「臨港新城」は1100台の顔認証カメラやドローン(小型無人機)で情報を集める。人の密集状況を検知して異常に対処する。クラウド技術を駆使するこのシステムを開発したのはアリババだ。

北京市と上海市では監視カメラで撮った映像をAIで分析している。新疆ウイグル自治区ではウイグル族を追跡するため顔認証システムが使われていると伝わった。ペンス米副大統領は2018年10月に「中国は他に類を見ない監視国家を築いている」と断じた。中国国営の新華社によると、2018年に国内500以上の都市がスマートシティー建設を提案した。

トロントの計画についても、米ベンチャー投資家のロジャー・マクナミー氏は6月、「収集されるデータ量は空前の規模で、悪用される恐れがある。ディストピア(暗黒郷)のような構想だ」と批判する書簡を同市議会に送った。

データを統合して活用する都市は、市民の安全や暮らしやすさを高める可能性を秘めるのは確かだ。個人情報の利用や保存の目的を明確にし、目的外の使用を防ぐ仕組みづくりが重要になる。





地球温暖化がもたらす影響について国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)がまとめる報告書の原案が判明した。温暖化ガスの排出削減が進まないと、北極の氷が解けるなどして今世紀末までに海面が最大1メートルを超えて上昇すると予測した。高潮や洪水によって世界の10億人が危機にさらされ、2億8000万人以上が家を失う。

影響は世界の科学者が最新の研究にもとづいて分析し、報告書にまとめる。原案は各国政府にインフラ整備や防災対策の強化を迫る内容で、温暖化のリスクが改めて浮き彫りになった。IPCCは20日からモナコで総会を開き、25日に報告書の詳細を公表する。

IPCCではこれまでも温暖化によって80センチメートル程度の海面上昇があると分析していた。北極の氷床や陸地の氷が解ける速度が速まる兆候があり、原案では上昇幅を大きく見積もり、影響が深刻になるとの見解を示した。

水没を恐れる島しょ国の脅威となるほか、沿岸部の大都市にも甚大な被害をもたらす。台風やハリケーンなどで陸地に海水が押し寄せ、広い範囲が浸水する危険が高まるためだ。

温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」の成否などへの言及はないものの、有効な対策を取らなければ被害が拡大すると警鐘を鳴らした。

このほか、山岳地帯の氷河も今世紀末までに少なくとも5分の1が消える。欧州の一部地域では氷河の8割が失われるという。IPCCの分析では、世界の平均気温は産業革命前からすでに約1度上がっている。

温暖化が食料供給リスクに IPCC特別報告書公表

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は8月、世界の土地利用と気候変動に関する特別報告書を公表した。温暖化の進行は食料の安定供給のリスクとなっていると指摘し、食料システムから出る温暖化ガスは人の活動による排出量の最大4割弱となるという試算も出した。特別報告書の内容について、執筆にも携わった国立環境研究所の三枝信子センター長に聞いた。





ニチレイ、AIで鶏肉ロス8割減/カルビー、工程変え賞味期限長く
大手食品会社が人工知能(AI)など先端技術を使い、食べられるのに廃棄される食べ物のゴミ「食品ロス」の削減に乗り出す。ニチレイフーズはAIで鶏肉を効率的に加工し、カルビーなどは主力製品の賞味期限を延ばす。10月1日施行の「食品ロス削減推進法」で企業の対策も求められる。サプライチェーン(供給網)の川上にいる食品会社の対策が進めば、削減効果は大きい。

農林水産省によると、日本の食品ロスは2016年度時点で643万トン。このうち55%の352万トンを占める事業系の中で、食品メーカーからの発生量は4割弱を占める。小売業や外食産業を上回り、業種別では最大だ。食べられない部分も含む事業系廃棄物全体に占める割合は8割と圧倒的に多い。

施行される食品ロス削減推進法は、食べられる食品の廃棄を減らすため、国の基本方針を踏まえ自治体が削減推進計画を策定し、企業に協力や取り組みを求める内容だ。努力義務のため、罰則はないが、食品メーカーの対応は急務となっている。

ニチレイフーズは唐揚げなどに使う包装前の鶏肉加工品で、除去しきれない骨をAIで識別する技術を開発した。試験導入で成果が確認できたため、2019年度中に国内外の工場に順次導入する。従来のX線検査は肉の形状や置き方によって骨がなくてもあると誤認することがあり、一定量を捨てていた。AIで検査精度を高めて歩留まりを改善し、3年後に鶏肉の加工や原料処理に伴う食品ロスを8割減らす計画だ。

メーカーにとって技術を生かして、食品ロスを削減することは収益の改善にもつながる。

カルビーは原料や製造工程を見直すことで、主力商品のポテトチップスの大半の賞味期限を10月製造分から6カ月と従来より2カ月延ばす予定だ。あわせて、賞味期限の表示は「年月日」から「年月」のみに見直す。表示変更で製造管理の手間が省けるため人件費を削減できるという。

大手豆腐メーカーの相模屋食料(前橋市)は日本気象協会のデータを活用し、気温の上下に左右される豆腐の需要予測精度を高めた。作りすぎることを抑えられ、人件費や光熱費などのコストを年間1000万円ほど削減できるとい
う。





車いすに乗ったまま利用できるユニバーサルデザイン(UD)タクシーを巡り、運転手が乗車を拒否するケースが相次いでいるとして、障害者団体「DPI日本会議」(東京)が、東京パラリンピックの開幕300日前となる10月30日に全国で乗車拒否の件数などを調査する。乗降用スロープ設置に不慣れなどの理由が目立つという。

調査は札幌、東京、名古屋、大阪の車いす利用者100人規模での実施を想定。流しやタクシー乗り場で乗車を試みるほか、電話で配車を予約し、拒否されるケースを集計する。

また乗車できた場合は、発車までにかかる時間を計測。まとめた調査結果を基に国土交通省やタクシー事業者に改善を求める。

UDタクシーは2017年度までに全国で2万113台が導入されたが、同年秋ごろから「乗車を拒否された」「時間がかかりすぎる」といった声が国交省に寄せられた。ほとんどがスロープ設置に運転手が不慣れなことが原因だった。

こうした状況を受け、同省は昨年11月、乗車拒否を違法とする道交法の順守や障害者差別解消法の理解を深めるよう全国の事業者に通達。今年3月からは、運転手にスロープ設置を身に付ける研修実施を補助金支出の条件とした。DPI日本会議の佐藤聡事務局長は「普及しているのに乗れないのは残念。運転手の意識改革のきっかけにしたい」と話している。

国交省は東京五輪・パラリンピックを見据え、UDタクシー導入に1台当たり補助金最大60万円を出し、2020年度までに福祉タクシーを含めて4万4千台の普及を目指す。






人手不足の深刻化や働き方改革を背景に、人材関連市場が急成長している。リクルートホールディングスなど海外市場に打って出る大手だけでなく、国内市場を地盤に着実に成長する中堅企業は多い。ITを駆使したきめ細かいサービス提供が強みだ。人材関連サービスを展開する売上高100億円以下の中堅上場企業「NEXT1000」を紹介する。

「あなたの『冷静さ・安定力』は49点。リスクを検討せずにスピードを重視する傾向がある」――。技術者の派遣を手掛けるエスユーエスは派遣する社員の能力や適性を点数で「見える化」するのが特徴だ。社員向けにアンケートを実施。約200問にも及ぶ質問の回答をもとに、独自開発したシステムが点数をはじき出す。

評価するのは本人の指導力や周囲を説得する力、業務を遂行する力など9つの基礎能力と、関連する36の項目だ。システムがそれぞれ100点満点で自動的に点数化する。ストレス耐性や自分を良く見せようとする傾向もつかめる。各自の課題を改善するための研修も用意する。

ITや電機業界向けの技術者派遣分野では、専門的な技術を持っているのはもはや当然。だが交渉能力や責任感など技術以外の強みを点数化してアピールできれば、他社との違いを打ち出せる。斎藤公男社長は「ゲーム会社からは『アイデア力が際立った人材がほしい』といった要望がある。こうした顧客の要望に細かく応えられる」と話す。

資質などを数値化する仕組みは慶応義塾大学や中部大学と共同開発した。自社で活用するだけでなく、外部にも販売。人事異動や人事評価に活用する企業や地方自治体など約3000件の導入実績を持つ。

人材サービスに最新技術を駆使する「HRテック」が急速に広がっている。新しい分野だけに中堅企業の参入余地は大きい。顧客企業のニーズを巧みにつかみ、成長を続けているのがアトラエだ。

顧客企業の従業員の満足度などを点数化し、離職防止や効果的な人事異動につなげている。「あなたの能力は会社に十分評価されているか」「自社を友人に勧められるか」などを質問。スマートフォンで1回当たり3分程度で回答できる。料金は1人あたり月額300円で、8月時点の採用企業数は前年同月に比べて2.5倍の1000社になった。AGCやLINEなど大手企業も利用する。

大企業などで人材教育を外部に委託する動きが広がるなか、きめ細かな企業向け研修を展開して事業を拡大する企業もある。

インソースは約2500もの講座を開発。ビジネスマナーや電話対応といった一般的なものから「部下との面談力向上」や「保育士を対象にしたクレーム対応」「LGBT」など幅広いメニューをそろえる。人工知能(AI)を活用して研修の受講者数を予測する。舟橋孝之社長は「受講生1人を対象にしたものから1万人向けまで対応できる。業績が研修の流行に左右されにくい」という。16期増収を続けている。

アルーは企業の要望に合わせて内容を組み替える「セミオーダー型」の研修を得意とする。たとえば一般的な新入社員向けのビジネス研修を実施。その後、習得内容を確認するため職場に戻った新入社員の日報や週報をチェックして助言するサービスを組み合わせたりする。

中堅企業のなかには特定の分野の人材に強みを持つ会社も多い。

スマートフォン向けゲームや家庭用ゲーム開発を手掛けるエクストリームはプログラミングなどの技術を持つデジタルクリエーターを抱え、他社にも派遣する。高度技術を維持するための社内研修を実施するほか、ベトナムの人材活用にも取り組む。ゲーム業界は市場規模が拡大する一方、人手不足が深刻化している。「多様な教育や研修プログラムをアピールして優秀な人材を集めたい」(同社)としている。

SERIOホールディングスのように既婚女性を主な対象として派遣などのサービスを展開する企業もある。

矢野経済研究所(東京・中野)によると、人材紹介と派遣、再就職支援の市場規模は2018年度推定で約7兆4000億円と前の年度から約1割増えた。人手不足と働き方改革で今後も人材業界の市場規模は拡大するとみられている。中堅企業が躍進するチャンスは大きそうだ。





教育の現場で国連が掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)」を、社会課題を解決するためのテーマとして取り上げる動きが広がってきた。民間企業と組んで体験型のプログラムを用意したり、生徒がSDGsをより身近に感じられるように独自の目標設定を試みたりする高校もある。2つの事例を取材した。

「ビーツっていう野菜を初めて食べた」「カボチャの種まで入っているなんてびっくり」。8月上旬に東京都内で開かれた「食品ロス」を考えるイベントでは高校生ら約50人の参加者が、ミツカングループが開発した棒状の食品などを味わいながら感想を言い合っていた。

これは10代の若者と社会人とを橋渡しする民間プロジェクト「近未来ハイスクール」が、SDGsの掲げる17の目標の一つ「飢餓をゼロに」を題材に高校生に考えてもらおうと企画したプログラムの一環だ。

2日間の「授業」ではまず初日に農林水産省の役人や野菜生産者が講師となり、「家庭での食品ロスの内訳は食べ残しや皮のむきすぎ、賞味期限切れ」であることを説明。日本では「1人あたり茶わん1杯分の食べ物を毎日捨てている計算になる」ことなど、食品ロスの現状や持続可能な農業のあり方を紹介した。

ただ、プロジェクトを運営するオプンラボ(東京・千代田)の小林利恵子代表は「飽食の日本で食品ロスをなくし、さらに世界で飢餓をなくすための解決策を座学だけで解決するのは難しい」とみる。体験を通じて高校生により身近な問題に感じてもらおうと、手を組んだのがミツカンだった。

ミツカンは今年3月、食品ブランド「ZENB(ゼンブ)」を立ち上げた。トウモロコシやビーツ、カボチャなどの野菜を芯や種を含めて丸ごとすりつぶし、砂糖や添加物を使わないスティック型の食べ物と、スープやドレッシングに混ぜて使うペーストにして発売している。

食品の廃棄物を削減できるほか、素材の栄養を余すことなく摂取できることが特徴とあって「食品ロスの解決策のリアルな例だ」と小林さんは評する。同商品を活用することで、「食糧不足の解消や環境負荷の減少を目標とするSDGsのテーマに具体性も持たせたかった」と語る。

2日目の授業では、参加者はペーストを使った料理などを試食するとともに、「使っている野菜の形のパッケージにすると目立つ」「『心も体も満腹に』といったキャッチコピーはどうか」などゼンブの魅力を伝えるアイデアも練った。

埼玉から参加した下館麻以さん(昌平高校3年)は2日間の授業を終え、「食べることがままならない国もある一方で私たちは恵まれている。食品ロスや飢餓といった世界の問題に取り組む日本企業の存在を知ることができたことも有意義だった」と振り返る。学んだ内容は同級生に伝えたいという。

同プログラムへの参加を授業の単位として認めた高校もある。都立駒場高校は「社会のいろいろな立場の人や他の高校の生徒と関わることができる」(木村裕美主任教諭)点に着目し、13人の生徒が参加した。

その一人、小久保太陽くん(1年)は「食品ロスという重く大きなテーマを身近なこととして考えられた」と語り、「食べ残しをしないように気をつけたい」と気持ちを新たにしていた。






戦後最悪の火山災害となった御嶽山(長野・岐阜県)の噴火からまもなく5年がたつ。火山活動は落ち着いたが、観光業や地域経済への影響は今も残る。東日本大震災後、日本の火山はにわかに活発になり各地で噴火が相次いだ。火山は温泉などの恵みをもたらす一方、災害の危険と常に背中合わせだ。周辺の地域では火山と共生する手探りが続いている。



8月下旬の週末、御嶽山頂の剣ケ峰(3067メートル)は登山者でにぎわっていた。死者・不明者63人を出した2014年9月27日の噴火後、火口周辺は立ち入り規制が続くが、今年から夏期に山頂まで登れるようになった。近くには避難用のシェルターが新設され、火口1キロメートル圏にある山小屋も噴石に耐える特殊な繊維で覆って再建された。

ただ最近の登山者数は噴火前に比べ8割程度にとどまる。山麓の観光案内所の職員は「犠牲者の遺族の気持ちを思うと、遊びに来てと積極的にPRするのは気が引ける」と複雑な胸中を明かす。

御嶽山は活発な時期と静かな時期を繰り返し「常に謎を突きつける火山」(名古屋大学御嶽山火山研究施設の国友孝洋特任准教授)だ。有史以降、噴火記録がなく死火山と思われていたが、1979年に突然噴火した。活火山の定義が「おおむね過去1万年以内に噴火」などと見直されるきっかけになった。

14年の噴火災害はふたつの重い教訓を残した。

ひとつが異変を観測したとき情報をどう伝えるかだ。この噴火では17日前から火山性地震が増え、気象庁は解説情報を公表した。しかし噴火の恐れを示す警戒レベルを「1(平常)」に据え置いたため、多くの登山者が異変を知らずに入山し悲劇を招いた。

これを教訓に気象庁はレベル1の説明を「活火山であることに留意」と改め、臨時情報や噴火速報を迅速に公表する体制に変えた。自治体も登山口の看板などで登山者への注意を徹底している。

ふたつめの教訓が、将来も続く噴火リスクとどう向き合うかだ。地元の長野県や木曽町、岐阜県などは北海道・有珠山の噴火を乗り越えた洞爺湖町や壮瞥町を参考に、火山との共生策を探っている。

長野県は、住民が火山について学び情報発信も担う「御嶽山火山マイスター制度」を始めた。これまでに山岳ガイドや教師ら11人を認定した。「よく学び、畏れ、再発見する」を合言葉に、研究者を招いた勉強会や一般向けの自然観察会を開き、県外からも参加者を集めている。

地元の小中学生の学習機会も増やし、約60人を「ジュニア火山マイスター」に認定した。木曽町立三岳小学校教頭でマイスターでもある川上明宏さんは「火山を畏れ、故郷を愛する心を世代を超え育みたい」と話す。

2015年6月、箱根山(神奈川県)で起きたごく小規模な噴火も観光業に打撃を与え、年2千万人を数えた観光客は一時、2割近く減少した。箱根山は3千年前の活動で芦ノ湖が誕生して以降、静かな時期が続いていた。活動はいったん収まったが、今年5月にまた活発になり、警戒レベルも再び引き上げられた。

神奈川県や箱根町は「噴石などで被害が及ぶのは火口のある大涌谷周辺に限られる」と風評を防ぐ広報に懸命だ。町立の博物館、箱根ジオミュージアムも「箱根火山のいま」と題した展示を計7カ所で開催中だ。同ミュージアムの笠間友博さんは「火山活動は前より高い水準で続きそうだが、火山と友達になるという意識をもってほしい」と住民らに呼び掛けている。

2011年の東日本大震災以降、国内の火山は噴火が相次いだ。震災直前に新燃岳(鹿児島・宮崎)、2013年に小笠原諸島・西之島(東京)、2015年に口永良部島(鹿児島)が噴火した。藤井敏嗣東京大学名誉教授は「間違いなく地震、火山両方の活動が高まった。日本のどこかで常に噴火していると考えた方がよい」と話す。

注意が必要な火山はほかにも多い。2018年の噴火で死者が出た草津白根山(群馬)、今年8月に噴火した浅間山(長野・群馬)では火口周辺への立ち入り規制が続いている。蔵王山(山形・宮城)や吾妻山(山形・福島)でも一時、火山性の微動や地震が増え警戒レベルが引き上げられた。

山梨県富士山科学研究所の吉本充宏主幹研究員は「火山は溶岩流や火砕流、噴石、火山灰のほか、泥流や山体崩壊など多様な災害を起こす。どんな被害が起こりうるか知り、正しく畏れることが必要」と話す。「特に登山者は気象庁のホームページなどで最新情報を調べて入山してほしい」と訴えている。

(編集委員 久保田啓介 氏)


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