OECD国際教員指導環境調査の結果から、日本の教員の長時間勤務は国際的にみても異例であることが分かる。
1週間の仕事時間は小学校54.4時間、中学校56.0時間で、ともに参加国・地域の中で最長。一方で職能開発にかける時間は小中とも最短だった。

中学教員の1週間の仕事時間のOECD平均は38.3時間で、日本は大幅に上回った。部活動など「課外活動の指導」が平均1.9時間に対し日本は7.5時間と長い。

仕事の内容別にみると、日本の教員は事務や同僚との共同作業などに割く時間が多い。「一般的な事務業務」は小学校5.2時間、中学校5.6時間で中学は平均(2.7時間)の2倍強だ。

研修などの「職能開発活動」は小学校で0.7時間、中学で0.6時間どまり。30歳未満の若手教員の割合は中学で21.0%(平均11.5%)と前回2013年調査より2.4ポイント上昇しており、勤務時間増の一因となっているとみられる。

OECDのシュライヒャー教育スキル局長は19日、「授業外でも生徒と交流し、個人的な絆を持てることは日本の教育の強みでもあるが、教員の負担は大きい。事務負担の削減など、できる限りの対策をとるべきだ」と話した。

千葉市、水泳授業民間委託 費用減・働き方改革なるか

千葉市は市立小学校の水泳の授業を民間のスイミングスクールに委託するモデル事業を6月から始めた。維持管理費の削減に加え、教員の負担軽減が目的だ。市は効果などを検証し、2020年度以降の導入校の拡大を検討する。

19日午前8時半すぎ、千葉市稲毛区の「セントラルウェルネスクラブ長沼」に市立源小学校の3、4年生約60人が到着した。学校からバスで約15分。屋内プールにはインストラクター5人が待機し「1時間目」の授業が始まった。

「足の力を抜いて」「肘を伸ばして」。児童は泳力別に3グループに分かれて、バタ足やクロールなどの練習に取り組んだ。4年生の尾島悠歌さん(10)は「室内プールだから寒くないし、雨でも中止にならないのがうれしい」と満足げだ。

プールサイドで様子を見守っていた教員(29)も「子どもたちの着替えにかける時間がとても短く、意欲の高さを感じた」と笑顔をみせる。引率は1人で、ほかの教員は学校で別の授業準備などに取り組めるという。

千葉市が水泳授業を民間委託する背景には、学校プールの老朽化と高額な維持管理費がある。市教育委員会によると、全ての市立小中学校(計166校)に屋外プールが1つずつあり、うち築30年以上は8割超の140ある。最も古いプールは築58年だ。修繕費に水道使用料などを加えた維持管理費は、全校で年平均約2億5000万円に上る。大規模改修ともなれば、1行1400万円程度が必要となるという。

水泳授業は教員の負担も大きい。プールの清掃や水質管理に加え、事故防止のため安全管理が求められる。千葉市の場合、小学校では担任に加え管理職ら1人が監視役として授業に付き添う。

ある管理職OBは「午前中の全授業をプールサイドで過ごし、熱中症になりそうになったこともある」と振り返る。委託で負担軽減が期待されるが、千葉県教職員組合の伊藤真太郎書記長は「どれだけ教員の労働負担が軽減されるか見極める必要がある」と指摘する。

委託は専門的な指導による泳力向上や、天候に左右されない計画的な授業実施などの利点もある。今回の千葉市のモデル事業には小学校2校が参加し、委託費は計約400万円だ。市は費用対効果や民間側の受け入れ体制などを検証した上で、2020年度以降の事業拡大を検討する方針だ。

水泳授業の見直しは千葉市以外でも広がっている。千葉県佐倉市は2つの小学校の屋外プールを廃止して授業を民間委託し、神奈川県海老名市は市立小中学校の19のプールを全廃して公営の屋内プールで授業をしている。埼玉県北本市も県内で初となるモデル事業を今年度から始めた。

自治体経営に詳しい静岡大学の日詰一幸教授は「教育現場には委託にふさわしくない業務もあり、明確な線引きが必要だ」と話す。民間委託が少子化、財政難、教員の長時間勤務など様々な課題の一つの解決策になるのか、その行方が注目される。

東京パラリンピックまで今日で1年。国際パラリンピック委員会(IPC)教育委員のマセソン美季さん(46)は、子供の教育にパラを取り入れようと奔走している。作成に携わった教材を片手に、学校の先生に活用を働きかける。根底には、交通事故で車いすを使うようになった後、長野大会で金メダルをとった経験がある。障害に対する偏見や差別をなくすのが夢だ。

パラリンピックというと、大半の方が「障害のある人」を思い浮かべるのではないでしょうか。障害という言葉には「かわいそう」とか「大変そう」といった先入観がつきまといます。

でもパラの選手たちは障害を言い訳にしません。できないことにこだわらず得意なことを伸ばしていけば、一体どんなことができるのだろうという、人間の可能性にこそ注目してほしい。そう考えて「アイムポッシブル(私はできる)」という教材を作りました。

公益財団法人、日本財団パラリンピックサポートセンター(パラサポ、東京・港)の支援があったから実現できました。IPCの公認教材として、日本はもちろん、全世界で使ってもらいたいです。

障害のある人をかわいそうと思っていた子供も、パラの選手を知れば「すごい」「格好いい」という羨望に変わります。固定観念を崩したところから、新しいアプローチが始まります。

たとえばパラの選手が学校に来るとしたら、どう迎えればいいかを問いかけます。競技場ですごい力を発揮した選手が、外では階段や狭い通路に行く手を阻まれます。選手の立場で身の回りのバリアを見つけだし、解決策をみんなで探ります。

パラ競技のルールを学んだうえで、公平についても考えます。クラスに車いすの子がいて、みんなで玉入れをするにはどうするのがいいか。答えは一つでありません。みんなで、車いすの子の意見にも耳を傾けます。

子供のときから先生になりたくて、カナダの小学校で教えていました。選手として出場した経験からパラの価値も知っています。これらをどう融合させるか、ずっと考えてきました。

私がけがをして一番嫌だったのは、車いすに乗っているだけで、自分は何も変わっているつもりはないのに、偏見とか差別の対象になることでした。

それはどこから来るのか考えていたら、人権教育啓発推進センター理事長だった故・横田洋三先生が「教育です」とずばっとおっしゃいました。親から子供、先生から生徒に教える以外に「無言の教育」もある、と。大人から刷り込まれて子供は育っていく。私がすべきことは教育だ! ビビッと来ました。

(高橋圭介)

緑に囲まれた三重県南部の林野にダンプカーが連日やってくる。積んでいるのは2020年東京五輪・パラリンピックをはじめ大都市圏の工事で出た大量の建設残土だ。突然現れた「土の山」に住民からは土砂崩れなどを危ぶむ声が上がる。なぜ残土は三重に集まるのか。(嶋崎雄太)

三重県の紀勢自動車道を走ると、ピラミッドのような茶色い土の山が見える。紀伊長島インターチェンジ(同県紀北町)近くの山林の一角。約3年前から建設残土が少しずつ積まれ、現在は十数メートルの高さになっている。

近くの町道から見上げると表面は雑草やコケが生え、割れ目が目立つ。「近くには民家もある。崩れたらどうするのか」。紀北町議会で残土の問題を取り上げた岡村哲雄町議(69)は不安そうだ。

県によると、残土の山は紀北町や隣の尾鷲市に少なくとも9カ所ある。大量の残土が持ち込まれ始めたのは12年ごろ。長島港(紀北町)と尾鷲港(尾鷲市)に船で入り、ダンプカーで周辺の山林に運ばれるという。県が確認しただけでも、18年度には25メートルプール280杯分を上回る計約28万トンが港に入った。

「千代田区大手町」「港区六本木」。搬入業者が県に提出した資料によると、残土のほとんどは首都圏や関西の都市部での建物の基礎工事などで掘り起こされたもので、五輪関係の工事もある。

「条例がないから、狙い撃ちされているんでしょうね」。岡村さんは語る。残土を規制する条例は1990年代以降、23府県で定められ、早くから残土が問題になった東京や大阪近郊の自治体は対応が先行した。だが、三重には条例がない。

東北地方の大半の自治体にも条例はないが、搬入業者によると、陸路で東北に運ぶより船で大量搬入した方が大幅にコストが低い。本州の真ん中に位置し東京からも大阪からもアクセスが良く、港の近くに山林が広がる三重が好都合だという。

県担当者は「搬入業者が土地を買い、残土を置くケースが多い」と指摘。過疎化や高齢化で、管理しきれない土地が増えたことも背景に挙げる。

有害物質を含まない残土は産業廃棄物には当たらない。条例の規制がなければ大量に放置すること自体に法的な問題はない。地元の搬入業者は「法令に基づいて運び入れており、土の安全性も確認済み。残土はどこかが受け入れなければならず、地元に理解を得られるようにしたい」と話す。

仕事場所や内容を最初から限定しておく「ジョブ型正社員」の推進が閣議決定され、2020年度には関係法の整備を意識した検討が始まる。転勤がなく育児や介護との両立がしやすくなる一方、事業統廃合で勤務先がなくなったときの雇用保障は不透明。働く人にとってジョブ型雇用は使いやすいのだろうか。

■「長く働いてキャリアを向上させたい」

「契約社員で入社し、美容相談を担当してきた。昨年『エリア正社員』になったことで、長く働いてキャリアを向上させたいと意欲が高まった」。ファンケルの旗艦店、銀座スクエアで店長を務める西海望さん(30)の表情は明るい。

ファンケルは2018年4月、全国約200店舗で美容相談を担当する有期契約社員1000人全員を、無期契約のエリア正社員に切り替えた。西海さんもその一人。エリア正社員は勤める店舗が自宅から1時間半圏内で、仕事内容が美容相談に限定されるジョブ型正社員の典型だ。

制度導入の最大の狙いは「専門性の高い人材の長期にわたる確保」(熊谷洋介人事企画グループ課長)。評価基準と賃金テーブルは接客能力に焦点を当てており、総合職とは異なる。専門性が評価されるうえ、休暇日数やボーナスが契約社員時より増えるため、対象者から好評という。

ジョブ型正社員を提言した規制改革推進会議が利点に挙げるのは、転勤がないことで育児や介護、病気治療など個人の事情と仕事の両立がしやすくなり、国内外の多様な人材が活躍できること。法改正でジョブ型の要件が明確になれば、個人も会社もよく考えて労働契約を結ぶようになり、労使紛争防止につながるとする。

■ジョブ型正社員の整理解雇、企業の間に共通規範なし

だが、現在のジョブ型正社員の立場は法的にあいまいだ。歴代の規制改革会議や推進会議は、特に店舗閉鎖や業務からの撤退でジョブ型正社員を整理する場合について議論してきた。

現在、従来型の正社員を整理解雇しようとする場合、
(1)赤字決算など人員整理の必要性があるか
(2)解雇回避努力をしたか
(3)解雇者の選定は合理的か
(4)労働組合などと十分協議したか
   ――の「整理解雇4要素」を考慮することが、裁判例上は確立している。

しかし、ジョブ型正社員の整理について企業の間に共通規範はなく、トラブルが起きれば社員は訴訟を起こしてその都度判断を求めることになる。例えば物流サービス会社の東京都内支店で、支店採用の仕分け専門職として働いていた女性(54)の裁判だ。

女性は14年、「業務集約であなたの仕事はなくなる」として同僚と共に解雇された。「会社には異動先を探す誠意がない」と憤った女性は解雇無効を求めた。代理人の岡部玲子弁護士は、まず業務集約が本当に全社の方針なのか問い、次に女性が勤務する支店だけでなく本社や他の事業所も含めて異動先を探すべきだと主張した。従来型社員と同様、4要素の主に(1)と(2)を求めたわけだ。

裁判所は15年、ジョブ型の女性にも整理解雇の4要素を当てはめ、解雇無効判決を出した。二審で和解し、女性は支店に復帰。元の仕事を今も続ける。

■職務限定型のジョブ型正社員、解雇有効の可能性も

ジョブ型正社員の解雇に関する61の裁判例を詳細に分析した青山学院大学法学部の細川良教授は、地域限定社員の整理でも、裁判所は従来型社員同様に4要素を当てはめて可否を判断することが多いと指摘する。「契約書より労働実態重視」の姿勢で、地域型と従来型の扱いの差は実質的に小さいと取れる。

ただし職務限定型のジョブ型正社員が能力不足で解雇された場合は事情が異なる。「専門職や管理職採用で能力不足の場合、募集広告までさかのぼって採用時の認識を調べ、解雇有効になることも目立つ」

ファンケルは、店舗閉鎖の場合、エリア正社員にも転勤の選択肢を用意し、最大限異動先を提供するというが、そこまでの配慮は一般的ではない。ジョブ型正社員は発展途上の働き方だけに、納得がいくまで条件を聞き、将来を見据えて選ぶ必要がある。

(礒哲司)

■「有効性は個別に判断」 鶴光太郎・慶応大学大学院教授

ジョブ型社員の導入について以前は労使とも懐疑的だった。しかし今では潮目が変わり、特に経団連が前向きと感じる。私が規制改革会議のワーキンググループ座長だった当時、労働者側は事業から撤退するときの雇用保障について非常に懸念していた。だが「既存の正社員制度に波風立てるな」では問題は解決しない。

私は整理解雇の4要素など今の解雇規範は、ジョブ型社員にも当てはめられると考えている。ただ、勤務場所や仕事内容が労使合意で明確になるジョブ型の場合、解雇の有効無効は個別判断で変わるだろう。

ジョブ型が定着するまで、企業は撤退時などに乱暴な解雇をするのではなく、労使コミュニケーションに努め、丁寧に対応することが重要だ。そうすればジョブ型は理解され根付いていくだろう。




学生の主体的な学びを促す新しいスタイルの「プロジェクト型授業」が広がっている。連載の第2回は立教大学経営学部国際経営学科、西原文乃准教授によるSDGs(持続可能な開発目標)教室。ヤマト運輸やANAなどの協力を得て、大手企業が抱える課題を学生が読み解き、担当者とともに実践的思考力を鍛えた。

「なんでもいいです。こんなサービス、あんなサービスがあったらいいなと思うことがあれば手を挙げて教えてください」

ヤマト運輸事業構想プロジェクトプロジェクトマネージャーの斉藤泰裕氏が約30人の学生に向かって呼びかけると、次々と手が挙がった。

斉藤氏は、西原准教授が担当する演習のゲスト講師として招かれた。学生と企業が一緒になって身近なSDGsを探すことがテーマだ。学生の主体的な学びを促すため、西原准教授は企業側と授業内容について綿密な打ち合わせを重ねた。

SDGsは国連が定めた持続可能な開発目標のこと。企業にとり、利益の最大化と社会的な価値創造の両立を迫っている意味で無視できないテーマになっている。学生の関心は高く、受講希望者は定員をオーバーした。

西原准教授がヤマト運輸を選んだ理由は、同社は直接的にSDGsをうたっていないものの、業務内容はSDGsにつながるヒントに満ちているからだ。例えば、日々大量の車両が稼働し、段ボールを使っていることから、SDGsゴールの7番目「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」や13番目「気候変動に具体的な対策を」と関連性が深い。実際に多くの学生が同社の「宅急便」を利用しており、身近な話題でもある。

さて、授業の続きに戻ろう。

■学生の提案、企業担当者がSDGsへの気づきへと転換

斉藤氏によれば、2018年度の実績で年間の総配達個数は18億353万個。稼働車両は一日約3万5千台に上る。「世の中の変化は激しく、宅急便の使い方も時代に応じて変化してきている」といい、かつては進学や就職などで一人暮らしをしている子どもに両親が仕送りの品々を送るなどのニーズが多かったが、近年では、eコマースやフリーマーケットアプリ経由で利用する顧客の割合が増えている。

その一方で、取り扱う荷物の数が増える一方で、深刻なドライバー不足にも悩まされているのは報道の通りだ。

授業では学生から、こんな質問が飛び出した。「宅配でアコースティックギターを送りたいのですが、ハードケースに入れないと送れないと言われます。しかし、ハードケースを買うと1万円くらいしてしまう。送料込みで考えると、高くて考えてしまいます」



7月下旬の昼下がり。水戸市の茨城大学では、心理学の講義の教室に次々と学生が入る。後方の座席に着く人が多いなか教壇に近い前列窓際にスーツやワイシャツ姿の男女3人が座った。「試験前日なのに勉強せずに掃除をしてしまう。これが逃避です」。教授の説明を聞きながら配布されたレジュメにペンを走らせる。睡魔に勝てない学生もいるなか、3人は講義スライドや教授を食い入るように見つめていた。

「落ち込んでいる部下にどう声をかけるべきかなど、業務に生かせる場面が多い」。最前列で受講していた、エネルギー事業などを手掛ける関彰商事(茨城県筑西市)システムソリューション部の小林孝之課長(39)は講義の効果をこう話す。職場では管理職として多くの部下に接しており「日常の経験を学術的に整理できる面白さがある」と満足げだ。

全国の大学でリカレント教育(社会人の学び直し)を後押しする動きが広がっている。これまでは公開講座など気軽に受けられ教養を高めるものが中心だったが、専門性を高めたり企業・団体のニーズに合わせてカリキュラムを組んだりしている。子育てで仕事を離れた女性の職場復帰を支援する講座や学費の補助など、多様な人に受講を促している。

茨城大は4月、リカレント教育を「オープン」「専門」「カスタム」の3コースに再編した。カスタムコースでは企業・団体のニーズに応じ、個別に教育内容を組み立てる。同コース第1号の関彰商事では前期に16人が受講した。受講料は会社が負担し、受講も勤務時間に含める。

再編に当たり、茨城大社会連携センターは1年かけて県内の企業や自治体を訪れた。個々の課題や大学への要望などを聞くなかで「学び直しのニーズは予想以上に高いと感じた」(桐原武文特命教授)。再編後は7〜8の企業や自治体が、受講に向け検討を進めているという。

シニア学費半額や保育サービス 企業以外にも門戸

リカレント教育の需要は高まるが、学費や家庭を理由にためらう社会人は少なくない。千葉県我孫子市の川村学園女子大学は中高年向けに「シニア社会人学生制度」を2018年度導入した。学部の場合は入学時に満50歳以上の女性が対象で、授業料と施設費の負担は年45万円と一般学生のほぼ半額にした。初年度は3人、2019年度は2人(編入学含む)が利用した。

2019年度からは大学院にも同じ制度を導入し、1人が入学した。半額の学費で学位を取得できる。入試広報担当者は「当初の想定通りのペースで学生が集まっている。今年度実施予定の入試にも既に問い合わせが来ている」と話す。

 「『辞められたらまた採用すればいい』では駄目。
外国人だって職場環境を見ている。これからは海外の労働者にも選ばれる時代だ」。下野接客支配人はこう語る。

福岡県朝倉市にある「原鶴温泉」。この温泉街で最大級の75の客室を構える旅館「泰泉閣(たいせんかく)」には、9人の外国人正社員が在籍している。ネパール出身のティムシナ・ビマルさん(25)もその1人だ。

「ホテルの経営などを勉強したかった。都会も苦手だったので」と泰泉閣に入社して1年。現在は宴会場の配膳などを担当し、客とのコミュニケーションにも支障はない。「懐石料理では料理を出すタイミングなど個々の部屋の状況把握が大事で、日本人でも難しい。彼はそれも難なくこなす」とラウンジマネージャーの松尾一生氏は話す。

 泰泉閣ではかつては高卒の新卒社員を5〜8人採用していた。ただ定着率は悪く、1年未満で辞めてしまうケースが多かった。「5、6年前から外国人材の労働力に頼らざるを得なくなった」と下野博文・接客支配人が実情を明かす。

「最初は外国人が宴会場の個室対応なんて無理だと思っていた。でも、今は本人の頑張り次第で『結局は本人の資質だ』と思うようになった」と松尾氏。一方、外国人材の多くは3年以上定着しないという苦悩もある。スキルが上がればキャリアアップを目指して転職してしまうのだ。「田舎ということもあるのでしょう。博多や天神の方に移ってしまう人もいる」と松尾氏は苦労を語る。

 だが人気が高いとは言えない業種でさらに人材の少ない地方都市だからこそ、外国人の力は必要不可欠だ。松尾氏はビマルさんにいつかはフロントのリーダー役を任せたいと考えている。ビマルさんの育成を成功モデルに「外国人材がスキルを学べる場」というイメージをアピールすれば、彼らのコミュニティーからさらに人を呼び込めるとみているからだ。




【シドニー=松本史】世界のビーチリゾートで、主要な日焼け止めの販売や使用を規制する動きが広がっている。日焼け止めのクリームやローションに使われることの多い化学物質がサンゴ礁の成長に有害との指摘が出ているためだ。米ハワイ州は2021年から、太平洋の島国パラオは20年から制限する。日本人を含む世界の観光客に影響を及ぼすが、科学的な根拠が不十分だとの声もある。

日本から年間100万人超の観光客が訪れるハワイ州では21年1月から、化学物質「オキシベンゾン」「オクチノキサート」を含む日焼け止めの販売や流通が禁止される。英BBCなどによると、これらの化学物質は大手メーカーが市販する日焼け止め3500種以上に含まれており、影響は大きい。同州のイゲ知事は「ハワイのサンゴ礁を守る第一歩だ」と意義を強調した。フロリダ州キーウェストも21年から同様の措置を導入する。

太平洋の島国パラオは20年からより厳しい規制を敷く方針だ。「サンゴ礁に有害」と定めた10種類の物質を含む日焼け止めの販売に加え、持ち込みも禁止する。販売した場合には最高で1千ドル(約10万6千円)の罰金を科し、持ち込まれた製品は没収する。

メキシコでは法規制はないが、リビエラマヤやシェルハ海洋公園など複数の観光地で市販の日焼け止めを使用しないよう観光客に呼びかけている。

各地で規制が広がるきっかけとなったのは15年発表の研究論文だ。米ハエレティクス環境研究所のクレイグ・ダウンズ博士らは、年間6千〜1万4千トンの日焼け止めがサンゴ礁の生息する海域に流れ込み、オキシベンゾンがサンゴの成長に悪影響を与えていると分析した。

ただ研究結果に疑問の声もある。世界最大のサンゴ礁として知られる豪グレートバリアリーフの海洋公園管理局は「ほぼ全ての実験が屋内の研究所でサンゴの僅かな破片や細胞を使っており、日焼け止めがサンゴに悪影響を与えるという証拠は限定的」として、日焼け止めを制限しない。

化粧品会社の間でも、世界最大手の仏ロレアルが2月、自社のサイトに「化粧品の紫外線吸収剤はサンゴに影響を与えるのか?」と題した文章を投稿した。モナコ科学センターとの共同研究で「ロレアルの日焼け止めに含まれる主な紫外線吸収剤をテストした結果、サンゴ礁に有害な影響はなかった」と強調した。

日本の大手化粧品メーカーが販売する日焼け止めの一部にもオキシベンゾンなどは配合されている。サンゴ礁への影響については資生堂は「国内外の研究機関で評価中で結論は出ていない。必要と判断した場合には、代替物質に切り替える」とし、花王は「規制地域での販売には必要な対応を行う」としている。

米調査会社トランスペアレンシー・マーケット・リサーチによると15年に148億ドルだった日焼け止め市場は24年に68%増の249億ドルまで拡大する見通しだ。皮膚がんとの因果関係など紫外線のリスクへの認識が高まったことで、北米を中心に市場が拡大している。

オーストラリアのがん予防・啓発団体「キャンサー・カウンシル」のヘザー・ウオーカー皮膚がん対策委員長は海洋生物への悪影響は明確でないとし、「日焼け止めががんにつながる紫外線のダメージを防ぐという点には、確固たる証拠がある」と指摘する。各国・地域の日焼け止めへの規制は代替品市場を生み出す可能性も秘めるが、しばらくは賛否両論の議論が続きそうだ。




アマゾンも個人配送網

配車サービス「ウーバー」の物流版といえる個人配送が本格的に広がり始めた。スマートフォンのアプリを用い、空き時間に荷物を配る。大量の荷物を扱うアマゾンジャパン(東京・目黒)はこうした個人を活用した配送網の構築に乗り出した。国内の宅配便数は急増し、運転手不足も深刻ななか、自由度の高い働き方が注目されつつある。長引く物流危機の解決策になる可能性もある。

「週50時間で月額40万〜43万円を稼ぐことが可能。時間と日時を自由に選べる働き方です」――。アマゾンジャパンは首都圏と愛知県の一部地域で、個人の運送事業者に宅配を委託する「アマゾンフレックス」を始めた。

対象は貨物軽自動車運送事業の届け出をした軽貨物車(黒ナンバー)を持つ20歳以上の個人だ。受注から最短2時間で商品を届ける「プライムナウ」などの配送をする。従来も荷主と契約する個人はいたが、2時間単位の業務でより柔軟に働くことができる。

■スマホに配送順
6月上旬の朝9時。東京都大田区にあるマンションのインターホンを押すのはポロシャツ姿の40代の男性だ。訪問客のようだがアマゾンのロゴ入りの段ボールを抱える。男性はフリーのトラック運転手で、企業間の緊急配送やレンタカーの回送の合間に、アマゾンの仕事も始めた。

「軽バンドライバー募集 アマゾンとの直接契約」。ポスターがいくつも並ぶ配送センターの駐車場に男性が着いたのは午前7時。45個の荷物を受け取り、軽バンで午後3時までに配る。ルートはアプリ上に示され、荷物には配達する順番のシールが貼られていて初心者でも迷わない。正午すぎには配達先をすべて回り、車には再配達となった大小10個の段ボールが残った。

しかしこれで業務は終了。残りは次の時間帯の運転手に荷物を引き継ぐ。「ノルマもなく、自分のペースでそこそこ稼げる。だから人が集まる」

この日の報酬は1万4000円だった。土日や雨の日には報酬が増える。アマゾンフレックスだけで生計を立てる仲間もいるという。

アマゾンが日本市場に参入したのは2000年。ネット通販の成長や共働き家庭の増加などを背景に、宅配便の取扱数は増え続け、17年度に42億個を超えた。20年代には60億個に増えると予測する専門家もいる。

宅配便最大手のヤマト運輸は17年、運転手不足を理由に最大顧客だったアマゾンに3〜4割の値上げを提示し、契約を大幅に縮小。当日配送から撤退した。アマゾンはその経験で中堅・中小の運送会社を束ね、独自の配送網を築いてきた。



調理自動化で厨房へ 体の負担軽減 警備会社の「管制」に 顧客対応も柔らか

男性が中心だったサービス業の現場職として働く女性が増えてきた。企業は時間帯を限定した働き方や調理作業の自動化を取り入れるなど、長時間労働や体力勝負が前提となっていた職場の改革を急いでいる。女性が活躍しやすい労働環境が整うことで、男性も働きやすくなるという好循環につながっている。

8月上旬の東京都江東区。日が傾き始めた午後6時ごろ、住宅街の路上を今井恭子さん(39)がヤマト運輸の配送カートを押しながら小走りで駆けていた。在宅率が高まる夕方以降は宅配便業者にとってかき入れ時。時折雑談を交えつつルートを回る。日が暮れるころに80個の荷物を配り終えた。

今井さんはヤマト運輸が推進する午後限定の勤務形態「アンカーキャスト」として18年6月から働く。契約社員で、モデルケースでは350万円弱の年収が見込める。勤務時間は午後1時から9時。中学1年生から高校1年生まで食べ盛りの息子3人を育てる今井さんにとって、「午前中に余裕を持って家事を終えられる」メリットがある。

ヤマト運輸は長時間労働を前提とした男性的な働き方で業績を拡大してきた。ただ、残業代の未払い問題など現場からの悲鳴が表面化したことで抜本的な対策を求められることに。アンカーキャストの導入を柱に、労務管理や拠点改修など働き方改革を進めてきた。

現在約6000人のアンカーキャストのうち3割以上は女性だ。今井さんのような働くママから、プロのサッカー選手との二足のわらじを履く人まで幅広い。利用者の防犯意識の高まりなどもあり、女性ドライバーのほうが荷物を受けてもらいやすいといった宅配ならではの利点もある。

同社の宅配便数の大半は法人荷主で、営業先は100万社に及ぶ。女性ドライバーによる安心感などで不在配達が減り、「浮いた時間を営業に回せるようになった」(浅草支店の長谷川純支店長)と相乗効果も高まっている。

東京都大田区。リンガーハット イトーヨーカドー大森店の厨房に立つ店長の林佳奈さん(26)は、注文の入った「長崎ちゃんぽん」や「長崎皿うどん」を慣れた手つきで次々と調理していた。

リンガーハットの厨房では、鍋を振るという作業がなくなりつつある。キャベツやタマネギ、もやしなどの野菜を混ぜていためる作業は自動で回転する鍋が担う。林さんは鍋の具材を時折混ぜる程度。鍋を持ち上げたり、振ったりする作業はない。「調理をしながら体に負担はあまり感じない」(林さん)

10年以上前は厨房に立つのは男性が多かった。当時は片手で鍋を持ち、野菜などの具材を人の手でいためていた。約8人前を一気に調理することもあり、鍋と具材を合わせた重さは約5〜6キログラムにもおよんだという。

だが、こうした重労働ともいえる作業は男性でも手首や腰を痛める原因になり「体がきつくて辞める人もいた」(平野晶也・リンガーハットジャパン東日本第4営業部部長)。「誰が作っても均一で、おいしい商品が出せるように追求した」結果が調理作業の自動化につながった。

リンガーハットの店舗で働く女性の数は増えている。約10年前は全体の6割が女性だったが、現在は7割に増えた。林さんはリンガーハットジャパンの社員になって4年目。入社するまで飲食業の経験はなかった。環境整備もあって短いトレーニング期間で調理の技術が身につくため、男性にとっても働きやすくなっているようだ。

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