2020年度から始まる大学入学共通テストで、英語民間試験の活用に続き記述式問題の導入も見送りが決まった。二本柱が頓挫し、入試改革は迷走、停滞することになった。グローバルな競争の中にある企業の経営者らは、新しい時代に対応できる人材の育成を求め、日本の教育の現状に危機感を示している。

共通テストでは、記述式問題によって表現力・思考力を問い、英語の民間試験の活用で「話す」「書く」力を測るとされていた。その狙いは、経団連が4月の提言で、デジタル経済時代の人材に求められる能力として挙げた数理的に推論しデータを分析する力や、論理的に文章で表現する力、外国語のコミュニケーション力とも重なる。

日本商工会議所の三村明夫会頭は、従来の日本の教育について「外国語を話す力を高める視点が足りなかった」とし、受験生も選択式の問題ばかりに対応し「自らの頭で考える力が欠けていた」と指摘。入試改革について「目指すべき方向性は正しい」と話した。



三井化学の淡輪敏社長も「思考力や実用的な英語力を底上げするという方向性は間違っていない。公平性などの面で今回の改革は頓挫したが、将来に向けて取り組みを進める必要がある」としている。

社会のグローバル化や情報化を背景にした人材育成の要請に対し、短期間での採点を求められる50万人規模のテストで対応を図る限界も浮き彫りになった。

カシオ計算機の樫尾和宏社長は「論理的な思考を養うには、暗記ではなく応用の仕方を学ぶ必要がある。初等教育からの教育課程の在り方も含めて議論すべきだ」とし、入試の枠を超えた改革を訴える。

人事・組織問題に詳しいパーソル総合研究所の桜井功副社長は、近年の高校教育の改革を評価する一方で「就職予備校」となっている現状を批判。「主体的、論理的に考えられる人材の育成という点では、大学入学後の教育の在り方こそ見直さなくてはならない」と話す。

11年に経団連が産官学によるグローバル人材育成の取り組みを提言して8年。国立青少年教育振興機構などによる18年の調査で、留学に「興味がある」とした日本の高校生は51.0%にとどまり、日米中韓4カ国で最下位だった。

ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は「今の日本人は内側にこもりがちで成長できない」と危機感を示し、若いころから留学など異文化に漬かる必要性を説く。

東芝ライフスタイルの小林伸行社長は「パワーやマインドの点で中国と日本の若者には大きく違いがある。(日本の教育には)『考える』というプロセスが必要だ」としている。

経団連副会長を務めるANAホールディングスの片野坂真哉社長は「自国だけでなく、相手国の歴史、文化、芸術への理解が世界各国の人との相互理解の力になる」とし、国際感覚の養成を若者に求めた。

英語・記述式 理念後退重ね頓挫

2020年度から始まる大学入学共通テストの導入は、現行の大学入試センター試験を時代の要請に合わせて改革する目的で決まった。だが、内容の検討過程で当初の理念は後退を重ね、英語民間試験の活用と記述式問題の導入という残った二本柱も頓挫した。

経済界などからグローバル社会で活躍できる人材の育成を求める声が高まるなか、政府の教育再生実行会議は13年10月、センター試験の大幅な改革を打ち出し、「脱知識偏重」「脱1点刻み」「脱一発勝負」を掲げた。

理念は文部科学省の有識者会議などを経て薄まり、「脱一発勝負」のために試験を年に複数回実施する案は、負担増を懸念する高校側の反対で消えた。教科や科目の枠を超えた問題の導入も、指導要領に沿わないなどの理由で立ち消えとなった。

残る柱の一つだった記述式問題の国語では当初最大300文字程度を書かせる想定だったが、採点の都合などで80〜120文字に。それでも採点の懸念を払拭できず、導入は見送りとなった。

首都圏のある私立大は独自問題を出す一般入試を全てマークシート方式とし、共通テストが始まる20年度も前例を踏襲する予定。担当者は「英語民間試験、記述式を導入すれば受験生から敬遠される」と改革の理念からほど遠い実情を明かした。

1

PR

Calendar

S M T W T F S
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
<< February 2020 >>

kokoro_sukui

kokoro_sukui2

Archive

Recommend

 (JUGEMレビュー »)


Mobile

qrcode

Selected Entry

Link

Profile

Search

Other

Powered

無料ブログ作成サービス JUGEM