内閣府は23日、国の少子化対策の基本方針となる「少子化社会対策大綱」の策定に向けた有識者会議の提言を公表した。提言では「希望出生率1.8」の実現を阻む障害の打破に取り組む方針を強調した。多子世帯の負担軽減をめざすほか、社会全体で子育て家庭を支援する必要性も訴えた。

結婚支援や子育て分野における人工知能(AI)や情報通信技術(ICT)の活用にも触れた。

衛藤晟一・一億総活躍相は同日の閣議後の記者会見で少子化は国難だと指摘し「子育てへの支援を充実させなければならない。異次元の思い切った形でやる」と強調した。政府は提言を踏まえ2019年度中に新しい大綱をまとめる。

少子化対策の優等生フランスに試練 学ぶべき教訓とは

フランスは少子化対策の成果が出た先進国として広く知られている。児童手当や税制優遇など手厚い子育て支援策が一定の効果を発揮した。また、事実婚の増加を受けて婚外子が不利にならない制度を導入したことも「産む」という選択を後押ししたようだ。しかしここ数年は再び出生率が減少傾向に転じている。この例が示すように、成熟社会が少子化に歯止めをかけることは極めて難しい。本書『少子化する世界』はフランス、ドイツなどヨーロッパ4カ国が直面する少子化の現状と子育て支援など様々な対策を細かく分析。日本が取るべき進路の模索を試みている。

◇  ◇  ◇


村上芽氏
著者の村上芽さんは京都大学法学部卒業後、日本興業銀行(現・みずほ銀行)を経て2003年、日本総合研究所に入社。専門分野は気候変動と金融、SDGs(持続可能な開発目標)、子どもの参加論で、現在は同社で創発戦略センターシニアマネジャーをつとめています。共著に『ビジネスパーソンのためのSDGsの教科書』(日経BP)などがあります。

なぜフランスの出生率は下がっているのか
18年1月、フランスの出生率が3年連続で低下したというニュースが話題になりました。フランスといえば少子化対策の先進国で知られています。しかし、データで出生率の推移をみていくと、実は10年ごろから15〜34歳の女性の出生率はなだらかに減少しているのです。一方で、35〜49歳の女性の出生率は年々上昇しています。つまり高齢出産は増えているのです。

根付くか「子連れ出勤」、選択肢の一つとして柔軟に
若い世代ほど子どもを産まなくなっている理由として、筆者は2つの見方を紹介しています。まず子どものいる家庭向けの現金給付が15年に一部カットされたことです。中間層が出産と育児の経済的負担をより大きく感じるようになったのです。もう一つは「女性が教育を受けて安定的な仕事に就くまで子育てを先送りしている」という見方です。

フランスは、少子化対策の優等生といわれてきた。しかし、2017年には1.88と、2002年並みに逆戻りしてしまった。フランスは、2008年の経済危機以降も出生率の高さを誇っていたことから、この結果は「フランスも例外ではなかった」と受け止められている。

失業率の上昇で「子どもを持つこと」に消極的
フランスでは若年層の失業率が目立っています。男女の20〜24歳の失業率は男性22.9%、女性は21.5%になったと著者は指摘しています。さらに、その失業は1年以内といった短期的なものではなく、長期的な失業が4割を超えてきているのです。

パートタイムで働く女性が置かれた状況に変化が出ていることも影響しています。もともとはワークライフバランスを意識して短時間働きたいと考える既婚女性が多かったのですが、最近では仕事が見つかりにくいためパートタイムを選ばざるを得なくなってきた人も増加しています。それだけ経済的にゆとりのない層が拡大しているようです。

パートタイムといっても、フランスでは日本と違い無期限雇用の定着や一定の賃金の保障がなされています。しかし、男性では仕事への満足度が低くなる可能性が指摘されています。こうしたことも出生率の低下に拍車をかけているのではないか、と著者はみているのです。

若年層の失業率の高止まりや、就業できても希望どおりではない男性の増加などが、じわじわ将来への不安になっていく可能性がある。そうなると、「子どもを持ちたい」と男性の側で考えにくくなり、2番目の条件を達成しにくくなるかもしれない。また、家計の支え手としての女性の役割の重要性が上がると、子どもを持つことより仕事を優先する女性が増えることも考えられる。

ドイツの「小さな奇跡」の裏側
フランスの出生率が低下する一方で、隣国のドイツでは出生率が上がっています。16年には1.59に上昇し、1970年代前半の水準にまで戻りました。このことが、同国では「小さな奇跡」とさえいわれています。

過去25年の推移をみると、ドイツ人よりも外国人の方が出生率の押し上げに貢献しています。もともと出生率が高い国の女性が移民として入国し、ドイツで子どもを産むようになっています。移民政策が出生率に影響を与えているのです。この動きは、外国人労働者の受け入れを進めている日本としても注視する必要がありそうです。

ドイツ連邦統計局では、子どもの国籍別人数も発表している。外国人の子ども全体でみると、主には欧州諸国だが、最近シェアや伸びの大きい10ヶ国分の内訳によると、(中略)2016年までの6年間、一貫して単独で最も多いのはトルコである。2015年までには、次に多いグループはポーランド、ルーマニア、コソボといった東欧諸国だったが、2016年に急上昇したのがシリアである。

外国人ほどではないですが、ドイツ人の母親の出生率もじわじわと上がっていることに筆者は注目しています。ドイツでは日本と同じように「3歳までは親が育てる」という伝統的な考え方が根強かったようです。しかし最近は仕事と家庭生活の両立支援という観点からも子育て支援を充実させる動きが広がってきました。13年8月から1歳以上のすべての子の「保育を受ける権利」が保障されるようになっています。子育て支援を資金面でも充実させることで、幼い子どもを育てている女性が社会進出をしやすい環境づくりが整えられ始めています。

本書では、ほかにも英国やデンマークなど、欧州各国の事例が紹介されており、国によって異なる少子化対策は非常に興味深いものになっています。こうした世界各国に事情を深く知ることで、日本がこれから「少子化」とどう向き合うべきかを考えるためのヒントを与えてくれる一冊です。

◆編集者からひとこと 雨宮百子

本書は、1年ほど前に雑誌にのっていたフランスの出生率低下に関する著者の記事をみたことがきっかけで企画がはじまりました。フランスといえば、少子化対策先進国と認識されていると思うのですが、どうやらここ数年、変化が訪れつつあるようです。

フランスだけではなく、移民に関する議論が巻き起こるドイツや、数だけではなく、子育ての質に関しても議論がされる英国など、欧州では多様な議論が展開されています。どれも日本よりはるかに先の議論・課題に直面しており「少子化」が本当に根深い課題であることに気付かされます。しかし、それにもかかわらず議論を続け、着実に前に進んでいる欧州諸国に学ぶところがたくさんありそうです。

日本ではどうしても子どもの数に関する議論が多くなりがちですが、生まれた子どもたちへの保育や20〜30歳代の若者への支援をもっと議論し、誰もが“生きやすい”世の中にしていきたいです。

1

PR

Calendar

S M T W T F S
  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
27282930   
<< September 2020 >>

kokoro_sukui

kokoro_sukui2

Archive

Recommend

 (JUGEMレビュー »)


Mobile

qrcode

Selected Entry

Link

Profile

Search

Other

Powered

無料ブログ作成サービス JUGEM