CESでスマートシティー構想を発表したトヨタ自動車の豊田章男社長(左)と街の設計を担当するデンマークのビャルケ・インゲルス・グループのビャルケ・インゲルス氏(右)

年始に米ラスベガス市で開催されるデジタル技術見本市「CES」。その年のトレンドを占う重要なイベントだ。ちょうど欧米でサービスが始まった次世代通信規格「5G」が主要テーマになるかと思っていたが、事前に関係者に聞いたところ「5Gの本格的な展示は2月にバルセロナ市で開催される『MWC』にとっておく」と、多くを期待できない。そんな気乗りしないラスベガス入りを一気に興奮に変えたのが、相次いで予想を超える記者会見を実施した日本企業だ。正直度肝を抜かれた。


まずトヨタ自動車は東富士に街を造る構想を発表。自動運転電気自動車(EV)「イーパレット」が街なかを走り、人が自由に移動できる。イーパレットに組み込まれたコンビニや病院が自動運転で必要な人の場所にやってくる。


豊田章男社長は2年前の2018年に同じCESの会場でイーパレットを披露した。発表後にはソフトバンクと組んでモネ・テクノロジーズを設立。数多くの自治体などと協定を結んで、次世代モビリティーサービスの実現へ検討や実証実験を進めている。


今年開催される東京五輪・パラリンピックではイーパレットの「東京2020仕様」を十数台提供し、選手村内を巡回するバスとして選手や大会関係者の移動を支援する。


ただ現状では、東京五輪・パラリンピックが終わってしまえば、イーパレットが活躍できる場所がなくなってしまう。自治体との協定があっても、イーパレットを現実の環境で走らせられる場所の確保は難しい。商用化させるには、歩行者がいて自転車が走っている道路でイーパレットを走行させる必要がある。人と共存する環境で実験し、安全性を確保してようやく商用サービスに切り替えられる。そこからプラットフォームとして広く普及させるからだ。だから「手っ取り早く誰にも邪魔されないで実証実験できる場所」が必要だったと考えられる。


自治体と組んでも、法整備や安全性などからなかなか適した場所が確保できない。「場所がないなら自分たちで作ってしまえ」と東富士にある工場跡地を「イーパレットと人が共存する街」にしてしまおうというわけだ。


■ソニーはセンサーを多数搭載したコンセプトカー

一方ソニーはコンセプトカー「ビジョンS」を発表した。ソニーがクルマを作ってしまうとはまさに驚きだった。開発を担当したAIロボティクスビジネス担当執行役員の川西泉氏によれば「企画がスタートしたのは2年前の春。20カ月程度で開発を進めた」というスピード感だ。走行は可能だが、安全基準は満たしていない。それでも今後、日米欧でナンバープレートを取得し、公道で走れるようにするという。


ソニーがコンセプトカーを作ったのは、自動車メーカーを目指すのではなく「クルマ向けのセンサーを売る」狙いがある。ソニーのスマートフォン向けカメラモジュールは絶好調だが、14年から車載向けのカメラやセンサーモジュールにも注力している。


ソニーは18年のCESで「セーフティコクーン」というビジョンを発表している。車載向けのカメラモジュールやセンサーを活用して、人の目で確認できない障害物を早期に感知、回避して安全運転につなげる試みだ。


ただその効果や可能性が既存の自動車メーカーに伝わりにくい。カメラやセンサーモジュールを搭載した結果がどれだけ安全につながるかを理解してもらうために、わかりやすく自分たちでコンセプトカーを作ってみたのではないか。


実際、ビジョンSには33個ものカメラやセンサーが搭載されている。安全だけでなく、サスペンションの動きを調整するなど、乗り心地の向上にもセンサーを役立てようとしている。


トヨタ自動車もソニーも、2年前のCESでビジョンを発表した。両社とも目指すのは「クルマの未来」だが、それは1社単独で実現できるものではない。協力者が必要だが、自社が提唱するビジョンをすべての人にきちんと理解してもらうのは難しい。そこでビジョンを誰の目にもわかりやすいように具体化してきたのが今年のCESといえるだろう。それがトヨタ自動車の「自動運転車の走る街」であり、ソニーの「センサーによって安全に走れるクルマ」というわけだ。


今回のCESでトヨタ自動車とソニーの、未来のクルマに対する本気度合いがわかった気がする。クルマの将来は、トヨタ自動車とソニーが他の企業を巻き込むことで大きく変わっていくのかもしれない。


石川温(いしかわ・つつむ)
 

月刊誌「日経TRENDY」編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。ラジオNIKKEIで毎週木曜午後8時20分からの番組「スマホNo.1メディア」に出演(radiko、ポッドキャストでも配信)。NHKのEテレで「趣味どきっ! はじめてのスマホ バッチリ使いこなそう」に講師として出演。近著に「仕事の能率を上げる 最強最速のスマホ&パソコン活用術」(朝日新聞出版)がある。ニコニコチャンネルにてメルマガ(http://ch.nicovideo.jp/226)も配信。ツイッターアカウントはhttp://twitter.com/iskw226

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