地上の交通渋滞や悪路とは無縁で、目的地までひとっ飛び。そんな「空飛ぶクルマ」が徐々に姿を見せつつある。海外では2020年にも試験サービスが始まる見通しだ。世界のスタートアップや航空機大手の開発競争は激しさを増している。巨大市場に育つ可能性がある未来のモビリティー開発に、日本勢も割って入ることができるか。


SFアニメなどで描かれた、街の上を空飛ぶクルマが飛び交う世界はすぐ近くまで近づいている。実験としてはシンガポールで19年10月、パイロットが乗り込んだ空飛ぶクルマが、高層ビル群を背景に試験飛行を披露した。飛ばしたのはドイツのスタートアップ、ボロコプターだ。大都市中心部では同社初の有人飛行を成功させた。


競うように14年創業の中国イーハンも、中国・広州市などで有人飛行を繰り返している。米ウーバーテクノロジーズは20年にも米豪で「空飛ぶタクシー」の実験を始め、23年に商用化する計画だ。



ウーバーは空飛ぶタクシーを2023年をめどに米国などで実用化する方針だ(写真は模型)

こうした空飛ぶクルマは滑走路が不要で垂直に離着陸できる「VTOL」と呼ばれる機体だ。多くは電動で、自動操縦技術が完成すればパイロットも不要になる。多くの国で社会問題になっている大都市の渋滞緩和なども期待され、投資が集まっている。

この分野で海外勢に真っ向から挑む日本のスタートアップが、スカイドライブ(東京・新宿)だ。開発拠点は19年夏、愛知県豊田市に設けた。福沢知浩社長は「海外のトップ企業から1年遅れているが、より安全でコンパクトな機体へのニーズがあるはず」と語る。「多いときは週に100回近く試作機を飛ばす」


同社の無人実験用の試作機は長さ2メートル、幅1.5メートルほど。4カ所に付いた上下2枚組のプロペラで浮力を得る。全地球測位システム(GPS)などを積み、ドローン(小型無人機)のように飛ぶ。


スカイドライブはトヨタ自動車の社員らが12年に作った有志団体「カーティベーター」が母体で、事業化を目指し18年に会社を設立。19年にはベンチャーキャピタル(VC)の出資や自治体の助成金で15億円を集めた。航空機メーカーや自動車部品大手から、技術者が20人ほど集まった。


20年夏に有人での試験飛行を公開し、23年に機体の販売を始めるのが目標だ。人が乗るモデルは試作機より一回り大きくなり、制御が難しくなる。現在は主に屋内で試作機を10メートル弱浮かせている段階で、「開発の進捗はまだ3割」(福沢社長)。高度100〜200メートルを時速60キロ以上で飛ぶ性能を目指している。


国内ではスカイドライブのほかにもドローン開発のプロドローン(名古屋市)が人が乗り込める救助用ドローンを開発中。東大発のテトラ・アビエーション(東京・文京)も1人乗り機体の開発を目指すなど、動きが活発になっている。



空飛ぶクルマは社会をどう変えるのか。最大の変化は、個人の移動手段が空に広がることだ。限られた富裕層を除き、これまで短距離の個人の移動は地上と水面に縛られていた。世界中で都市への人口集中が進む中、地表の輸送網の整備には物理的な制約が多い。空飛ぶクルマは、移動をサービスとして提供する「MaaS」を支える交通手段として活用が見込まれる。


滑走路が不要で、離島や山間部など交通の不便な地域でも重用されそうだ。災害時には、医師や救援物資を被災地に送りやすくなるかもしれない。


人々の移動を一変させる可能性を持ち、米モルガン・スタンレーは機体やサービスを含む空飛ぶクルマの関連市場が40年までに世界で1兆5000億ドル(約160兆円)に達すると予測する。新興企業だけでなく、航空機大手の欧州エアバスや米ボーイングも巨大市場の取り込みを狙う。


普及のためには運航管理システムなど技術の進歩に加え、安全確保のルール整備や騒音への対策、社会全体の理解など解決すべき課題は多い。スタートアップと大企業、政府が連携し、日本でも離陸の道筋を描くことが、日本企業が世界に食い込むための第一歩だ。


(山田遼太郎氏)

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