世界中で乱立する動画配信サービスに、かつて「LINEの顔」だった森川亮が挑戦している。若い女性に照準を合わせた「C Channel(Cチャンネル)」だ。おしゃれや食、恋愛などにかかわる1分程度の動画を提供。合間に見られる手軽さと、かゆいところに手が届くコンテンツが受け、今や10カ国で展開、登録数はのべ約2800万に達する。


■LINE社長の座捨て起業


「一緒に動画のビジネスをやらないか」。森川がCチャンネルの起業を考え始めたのは2013年。新卒で入った日本テレビ放送網時代の同期の三枝孝臣とのランチで盛り上がったのがきっかけだった。森川は当時LINE社長、三枝は日本テレビでインターネット事業を手がけていた。高速通信規格「5G」時代の到来が見えて来た頃だ。


LINEは上り調子だったが、森川はすでに社長退任を考えていたという。LINEはスタンプやゲームで収益を上げるだけでなく、電子商取引(EC)や広告などへと事業領域を広げていく段階に入っていた。


森川は日本テレビとその後転じたソニーで映像ビジネスに関わり、LINEの前身のハンゲームジャパンでゲームを手がけてきた。多角化するLINEが自分の得意分野から遠ざかっていくと実感。吸収合併した旧ライブドア出身で、ネットビジネスに明るい出沢剛に社長の座を譲る心づもりでいた。


LINEの顔だった森川には、多くのネット企業から経営者や社外取締役にと声がかかっていた。「リスクを取らないなら、社外取締役の方がいい」。しかし選んだのは、元同僚と、思い入れのある映像コンテンツの世界に回帰し、ビジネスを立ち上げる道だった。



森川(左)の社長時代にLINEは急成長した

■「男性目線」で失敗


とはいえすでに雨後のたけのこのごとく新サービスが登場する動画配信の世界で、どうやって生き残るか。目をつけたのが女性だった。化粧品やファッションなど、女性を巡るビジネスに関わる企業は、イメージを大事にするだけに広告宣伝費も多い。広告収入で稼ぐビジネスモデルが成り立つと踏んでいた。


ただ15年に始めた当初はうまくいかなかった。SNSで影響力のある女性のインフルエンサーを選び自社制作の動画を載せたが、狙う若い女性はいっこうに見てくれない。アクセスしてくるのはおじさんばかりだった。


考えてみると理由は簡単。当時のCチャンネルの社員は森川はじめ男性ばかり。「男性目線」でインフルエンサーを選んでいたからだ。この経験から森川は女性社員を中心とした動画制作へと切り替える


現在では女性社員が全体の7割を占め、男性社員は営業などの業務が中心だ。森川も動画については女性の意見を尊重、コスト以外には口を出さない。「男性が女性向けの動画を作っても説得力はない」


■グローバル化を志向


今は女性社員による自社制作と「クリッパー」と呼ぶ動画の講習を受けた女性インフルエンサーの投稿動画を配信している。


LINEの成功モデルも持ち込んだ。スマートフォンへの対応だ。ユーチューブは横長、若い女性がよく見るインスタグラムは正方形の画面が基本だが、スマホに合わせた縦長の画面を採用。動画がスマホで見やすいことも、支持を集めるきっかけとなった。月間再生回数は1億回以上に達している。


森川がCチャンネルでもう一つめざしているのがサービスのグローバル化。原点にあるのは日本テレビ時代に通った青山学院大学のビジネススクールの経験だ。テレビ局のグローバル展開をテーマに書いた卒業論文がCチャンネルの海外ビジネスの元になっている。「日本経済が停滞する今こそ、コンテンツを海外に発信することで日本を元気にしたい」




18年にはTBSホールディングスや集英社と組み、新人タレントが動画を配信するアプリ「mysta(マイスタ)」と呼ぶ新しいビジネスも始めた。「5Gは人がメディアになる時代。インフルエンサーというスターを生み出していくことが重要だ」とみている。


■5Gの勝ち組めざす


「5G時代を迎え、動画の需要は爆発的に伸びる」。森川は期待するが、まだ会社は赤字続きだ。現在の主力利用者が10〜20代前半の女性なのに対し今春、購買力のある20代後半から30代に照準を合わせた動画サービスを始めるなど、収益源を広げ黒字化をめざす。


インスタグラム、TikTok(ティックトック)など女性に人気の動画配信サービスは、いずれも短い動画が主力だ。この系譜に連なるCチャンネルにもチャンスはあるはず。森川は「有料の米ネットフリックスなどとは異なり、お金をかけて楽しむ領域ではない。空き時間に短時間で楽しめたり、成長できたりするサービスに力を入れていく」と意気込む。


インスタもティックトックも若い女性が普及の起爆剤となった。魅力的な動画やサービスで移ろいやすい女心をとらえ続けることができるか。LINE社長時代に、日本のSNSの頂点を極めた森川が、5G時代の勝ち組になれるかどうかは、そこにかかっている。



(篠原英樹)

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