日本は機体やエンジンでは着実に自主開発力をつけつつある(写真は先進技術実証機X2=AP)

日本は機体やエンジンでは着実に自主開発力をつけつつある(写真は先進技術実証機X2=AP)

日本政府は、航空自衛隊の次期戦闘機を、日本主導で国際共同開発する方針を明らかにした。2021年度から本格的に開発に着手する。米国を振り切る形での決定には、開発と改修の自由を求めた日本側の並々ならぬ思いがあった。

 

幻の「F57」

 

今後約15年かけて開発するのは、35年ごろに退役する空自支援戦闘機F2の後継機。米側は当初、米空軍のステルス戦闘機F22と、米国を中心に国際共同開発した汎用ステルス機F35を融合した新型機の共同開発を日本に持ち掛けた。F2の時と同じ既存の米軍機を基にした新型機開発の打診だ。この米側提案を一部の関係者は22と35の数字の合計から「F57」という「暗号」で呼んだ。

その流れを変える一石になったのが、F2開発当時に中心的役割を果たした三菱重工業の神田國一氏が記し、同氏の没後5年の18年に刊行された手記「主任設計者が明かすF-2戦闘機開発」(並木書房)だった。

開発当時、米側は自らの技術機密は明かさない一方で、欲しい日本の自前技術は吸い上げた。日本が担当箇所で間違いをしていることに米側技術者が気づいても教えてくれない。心底腹を割った共同開発からは程遠かったこと、できれば日本が自前で開発した方が円滑に進められ経費も抑えられたことなどを手記は生々しく記していた。

遺言とも言える神田氏の手記で封印されていた事実が広く公表され、F2のような米主導の開発を繰り返すことは政治的に許されなくなった。

さらに「日本の主導的開発」を決定づける出来事が起きた。空自が18年に配備を開始したF35のうちの1機が翌19年4月の訓練中、搭乗員が高速飛行中に上下の感覚などを間違える「空間識失調」を起こして誤って海に墜落する事故が起きた。これを見た米軍は同年7月、当初は26年ごろを予定していた「墜落防止装置」の同型機への搭載をにわかに前倒し実施し始めたのである。

「F35のように米軍が改修の権利を握る機体の導入を続けていては、大切な搭乗員を守れない」と日本側関係者の多くが静かに思った。こうしてF57案は幻となった。

 

育てる装備品

 

とはいえ日本は、完全な自前開発に踏み切ったわけではなく、「日本主導の国際共同開発」を標榜する。理由は外国製の方が明らかに優れている「部品」があるからだ。

代表例が飛行電子制御技術(アビオニクス)だ。現代の航空戦は、飛行や通信、索敵、武器の運用などを電子機器を使って行う。米軍は過去の実戦データを制御ソフトに反映する作業を地道に続け、それによって世界最強の座を独走してきた。

三菱重工業などがステルス機体研究を進めてきたほか、F2開発時には外国製に頼るしかなかった十分な推力を持つエンジンもIHIが開発中だ。国産要素技術はそろいつつあるが、アビオニクスは実戦に裏打ちされた米国製が望ましい、と空自関係者は語る。

一方で、仮に米国から提供を渋られた場合は「厳しいが自前で開発するしかない」(関係者)との声もある。そうまでして日本側が日本主導にこだわるのは、遠回りになっても自前開発には利点があるからだ。

戦闘機は、使って不具合を見つけ、それを改修しながらより性能の高いものへ数十年間かけて育てていく装備品だ。そうした過程で技術力もつくし人材も育つ。

主力戦闘機F15は、F35と違って日本側の改修の自由度が大きかった。そのおかげで、運用開始から約40年の間に実は相当「日本仕様」に進化している。

陸自や海自との統合運用強化、無人戦闘機との一体作戦、レーザー兵器の搭載、弾道ミサイル撃墜――。次期戦闘機も改修を続ければ、将来性はどんどん広がる。

次期戦闘機の開発を日本が実際にどこまで主導できるか。一つの防衛装備品の在り方を超えて、この国がいかに自律的に自らの守りに向き合うかの試金石ともなる。

(編集委員 高坂哲郎氏)

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