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日本企業で働く管理職の大半はプレーイングマネジャーだといいます。そしてリモートワークの環境で苦労しているのもまたプレーイングマネジャーです。これまでうまくいっていたプレーイングしながらのマネジメントスタイルを、ニューノーマルの環境でどう変えていくべきか、指針を探ってみましょう。

「背中で教える」プレーイングマネジャー

日本企業でプレーイングマネジャーが多い理由としては諸説あります。欧米企業では出世してマネジャーになると人事権が与えられるけれど、日本企業では人事権は経営層や人事部に置かれたままだからだ、とか。

あるいはプレーヤーとして高い成果を出した人を出世させるので、マネジャーとしての適性がない人が昇進してしまっていたり、あるいはプレーヤーであり続けることを楽しく思う人が昇進してしまったりしている、という説などです。

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そもそも日本企業では年功処遇による横並び意識が強いので、資質がなくても課長相当に昇進させないと年次管理がうまく機能しないとか、やる気をなくした従業員が社内の雰囲気を悪くするとかいう説もあります。順法精神の低い会社では、とりあえず管理職にして残業代を払わないようにする、という場合もありました。

そうしてたくさん生まれたプレーイングマネジャーは、マネジャー本来の仕事である、マネジメントによる組織としての成果創出に時間をとることができません。そこでマネジメントする代わりに、背中で教える、ということが多かったわけですが、リモートワークではそれが機能しなくなりました。

ニューノーマルではスーパーマン以外は機能しない?

プレーイングマネジャーによる「背中で教える」スタイルは、同じ場所で長い時間一緒に働くことで機能していたスタイルです。それがリモートワークになることで、まったくと言っていいほど機能しなくなってしまいました。それはできる人の基準の変化すら生み始めています。

 

たとえばプレーイングマネジャー型の田中営業課長を想定してみましょう。

田中さんは課長として10人の課員がいる課全体の売り上げ責任を負っていますが、実は彼自身の売り上げが全体の25%をも占めています。課長になる前はスーパー営業社員だったし、お客様も田中さんのことを信頼しています。だから部下に引き継ぐよりは、田中さん自身が営業を担当してくれていることでさらに関係性が強化されます。

さて、このような状況でリモートワークになった場合に、田中課長はどのような働き方をするでしょうか?

課の25%をも占める売り上げを担当しているとなると、激変する環境の中でお客様への対応に多くの時間をとられることでしょう。そしてそうすることで契約を維持し、売り上げを確保することができます。スーパー営業社員だったころの能力は、プレーイングを続けているためさびついてはいません。

しかし週に1回の営業会議で、田中課長はがくぜんとします。10人いる課員たちがことごとく売り上げを下げてしまっているからです。そこで田中課長は叱責したり、聞きかじったコーチングスキルを発揮しようとしたりします。が、うまく機能しません。

さらに課員の一人からはこんなことを言われてしまいます。

「僕たちは田中課長みたいなスーパーマンじゃないんです。こんな状況じゃ誰だって売り上げを下げてしまってもしょうがないですよ」

背中を見せるより課員を見る

それもそうかもしれない、と納得する田中課長ですが、課長同士が集まる月次の営業会議で、売り上げを下げていない課がいくつかあることを知って驚きます。

その中の一人、1つ後輩にあたる山下課長に話を聞いてみるとこんな答えが返ってきました。

「今日みんながどんな作業をする予定なのかスケジュールを見ればわかるものの、なんとなく見過ごしてしまうんですよね。だからリモート朝礼を始めてみたんですよ」

朝礼は田中課長もやってみています。けれども逆に、スケジュールを見ればわかるので報告は不要だといつしか廃止していました。

「そうですね。スケジュールを見ればわかることじゃなくて、会社全体の状況を話すか、雑談をするようにしています。たまに後ろにお子さんが出てくる課員もいて、なごやかですよ。あとは前日の様子を踏まえて今日の対策について議論するとか」

山下課長はさらにこんな答えを返してくれました。

「営業もリモートですよね。全員の営業になるべく同行という感じで、課長としてログインもしようと思ったんですが、時間がどうしてもあわなくてね。だから営業が終わった時点ですぐにチャットツールに感想を書いてもらっています」

田中課長も営業管理システムにすぐに報告を書くようには指示しています。同じことじゃないのかと尋ねました。

「同じだと思うんですけれど、私はすぐに返事をするようにしています。あと、結果が良かったり悪かったり、はっきりしているときにはリモートをつないで顔を出して話すようにもしていますね」

 

他にも山下課長はこんな工夫をしているといいます。

・スケジュールが空いている課員に対しては、その理由をたずねるようにしている。それが意味のある空白、たとえば資料作成の時間などであればよいけれども、アポイントが入らないなどの不意の空白だとしたら、売り上げにつながるような作業にするにはどうすればよいか意見を聞くようにしている。

・その日の終わりには日報が営業管理システムに登録されるので、それらをチェックする時間を最低1時間とるようにしている。そこでコメントをすぐに書くのではなく、別のファイルに記載しておき、翌日の仕事が始まる朝の時点でコピーして記載するようにしている。そうすることで時間外とのメリハリをつけるようにしてみている。

それらを聞いて、田中課長は尋ねます。

「自分の営業はいつやるんだ?」

「少しずつですが、課員に引きついでいます。この状況だから、逆に先方も理解してくれますよ」

マネジメントが変わるきっかけになりつつある

あなたの会社に、スーパープレーヤーであり続ける田中課長と、少しずつプレーヤーであることから卒業しつつある山下課長がいたとして、あなたはどちらの人と働きたいでしょうか。

また、もしあなたが会社の社長だとして、どちらの課長を将来の経営幹部として育てたいでしょうか。

これは実は簡単なようで簡単な問いではありません。

仮にプレーイングマネジャーにプレーイングをやめるように指示をしたとして何が起きるでしょう。私が見てきた中ではおおむね3つのことが起きます。

第1に、プレーイングで保たれていた売り上げの減少です。第2に、慣れないマネジャー業務にストレスを感じて疲弊するモチベーションの低下です。第3に、そうした人たちの離職です。

プレーイングマネジャーがプレーイングマネジャーであり続ける背景には、実は経営層がそれを期待しているから、ということもあるのです。売り上げを下げずに現状を維持し続けるには、名プレーヤーにはそのままでい続けてもらう方が楽だからです。

ただ、そんな中でも先ほどあげた山下課長のように、自分なりの工夫をしながら、成長する人もいます。

また、一部の会社では、ニューノーマルにあわせて、マネジメントスタイルを変えようとしている会社も出始めています。管理職にプレーイングを求めるのではなく、マネジメント、すなわち組織を率いて成果を出すことを求めるように変わろうとしているのです。

現在プレーイングマネジャーとして活躍されているのであれば、ぜひ自社の状況や業界の状況を見据えつつ、いつどのタイミングでプレーイング割合を下げ、マネジャーとして行動を学ぶべきか、ぜひ考えてみてください。

平康慶浩氏

セレクションアンドバリエーション代表取締役、人事コンサルタント。1969年大阪生まれ。早稲田大学大学院ファイナンス研究科MBA取得。アクセンチュア、日本総合研究所をへて、2012年から現職。大企業から中小企業まで130社以上の人事評価制度改革に携わる。高度人材養成機構理事リーダーシップ開発センター長。

 

 

 

 

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