リモートワークの導入は転職を検討するきっかけにもなった(写真はイメージ) =PIXTA

リモートワークの導入は転職を検討するきっかけにもなった(写真はイメージ) =PIXTA

転職への関心が急速に高まっている。きっかけは新型コロナウイルスの感染拡大だ。就職・転職支援の日経HR(東京・千代田)が実施したアンケート調査では、約6割が「転職への関心が高まった」と回答。コロナ禍に伴う需要減などで、現在の勤め先や業界の成長性を不安視する層に加え、在宅勤務をはじめとする新しい働き方を実践しやすい職場を志向する人が多かった。ただ、今後の転職活動については約8割が「非常に厳しくなる」と悲観的な見方を示した。

このアンケート調査は日経HRが「日経キャリアNET」登録会員を対象に、2020年7月30日から8月7日にかけて実施した。有効回答数は735人。

新型コロナウイルスの感染拡大後、転職を意識する人が増えた

非常に高まった 35%
少し高まった 22%
変わらない 36%
少し低くなった 5%
非常に低くなった 1%
その他 1%

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コロナ禍を経験して転職への関心について変化があったかを聞いたところ、「非常に高まった」が35%、「少し高まった」が22%で、合わせておよそ6割となった。転職意向の高まりを年代別で見ると、20代(61%)と40代(62%)が、30代と50代(ともに54%)を上回っている。「非常に低くなった」(1%)、「少し低くなった」(5%)は合計しても1割に満たず、今回の調査からは、コロナが総じてビジネスパーソンの転職意欲を引き出す方向に作用したといえそうだ。

「転職意向が高まった」理由としては、現在の会社や業界の将来への不安や、在宅勤務ができなかったり働き方改革の速度が遅かったりする会社に対する不満が多く示された。「リモートワークできる会社に転職したい」や「多様な働き方ができる職場に魅力を感じる」など、柔軟な働き方を希望する意見が目立った。自粛期間をへて、働き方やキャリアについて見つめ直す時間が増えたことによって、在宅勤務や副業が可能な新しいキャリアを模索するようになった人も多いようだ。

 

 

 

自由回答から透けて見える、勤め先への「がっかり感」

アンケートに含まれていた自由回答を分析すると、転職する気持ちが強まった人たちが勤め先に不満を募らせている様子が読み取れる。いったんはリモートワークを採用したのに、しばらくたって出社が基本の旧スタイルに戻したケースも少なくないようだ。

【自由回答】

■非常に高まった
・業界が苦しい(51歳男性、ホテル)
・自社の、働き方を変えようとする意識の低さに嫌気がさした(36歳男性、銀行)
・常時リモートワークできるところで働きたい(28歳女性、メーカー)
・コロナですら変われない会社を見て、見切りをつける最後の一押しになった(34歳女性、生保・損保)
・自宅で自分を見つめ直す時間があり、転職のリサーチに使えた(54歳女性、IT)

■少し高まった
・在宅勤務を推奨しない会社に危機を感じる(45歳男性、IT)
・DX(デジタルトランスフォーメーション)や働き方改革を推進できる絶好のチャンスだったのに、意識も仕事のやり方もコロナ前に戻ってしまった会社の姿勢に疑問を持った(58歳男性、紙パルプ)
・緊急宣言の解除後、在宅勤務できる雰囲気になっていない(30歳女性、化学)

■変わらない
・コロナの影響が少なく給料など変わらない(28歳女性、建設関連)
・コロナに関係なく、転職意思が固い(42歳女性、コンサルティング)

転職意向が「非常に高まった」「少し高まった」と回答した人に、転職に向けて具体的に始めたことがあるかを尋ねたところ(複数回答)、「転職サイトに登録した」が64%、「履歴書・職務経歴書を作成した」が42%、「人材紹介会社に登録した」が35%となったほか、「業界・企業に関する情報収集を始めた」(22%)、「自己分析・キャリアの棚卸しをした」(20%)、「仕事に必要な知識・スキルアップの学び直しを始めた」(16%)が続いた。

転職への関心が高まる半面、転職市場の先行きについては厳しい見方が大勢を占める。「今後の転職活動がどのようになるとみているか」を聞いたところ、「非常に厳しくなる」が44%、「やや厳しくなる」が33%と、8割近くが先行きの厳しさを予想した。「非常に楽になる」と回答した人はおらず、「やや楽になる」も1%にとどまった。

 

 

 

リモートワーク・在宅勤務を転職先選びで重視

転職先を選ぶ基準については、「給与・待遇」(80%)に続き、「働きやすい制度(リモートワーク・在宅勤務など)」(44%)との回答が多かった。「休日・休暇」(38%)や「福利厚生制度」(21%)といったワークライフバランスに関連する項目が上位に並んだほか、「副業が可能」を挙げた人が5%に上り、リモートワーク希望者と合わせ、新しい働き方を志向するビジネスパーソンが増えている兆しとみてとれる。

前回(2020年2月)の調査では、「働きやすい制度(リモートワーク、育休など)」は13%で8番目だった。3つまで選択可能(今回5つまで)にしていたほか、「働きやすい制度」の選択肢にリモートワークや育休などをまとめていたため一概に比較することはできないものの、リモートワークを重視する層が大幅に広がっているとみられる。

「新しい働き方」のなかで、今後挑戦してみたいことを聞いたところ(複数回答)、「リモートワーク・在宅勤務」が52%でトップ。そのほか、「副業(所属組織で働きながらの形態)」39%、「副業(所属組織と異なる組織で働く形態)」35%と、副業への関心の高さがうかがえるほか、「週休3日など休日が多い働き方」(34%)、「フリーランス・個人事業主」(19%)、「地方都市への移住」(16%)、「起業」(16%)など様々なタイプの「新しい働き方」が注目を集めているようだ。

年代別の比較で、「リモートワーク・在宅勤務」は20代(61%)、30代(60%)、40代(57%)と差はなかったが、50代は43%と他の年代に比べて低かった。副業に関しては、所属に属すか属さないかで年代に差が出た。「所属組織で働きながらの副業」は20代(52%)が高く、30代、40代、50代は、それぞれ41%、38%、37%。「他社で働く副業」については、30代(37%)、40代(33%)、50代(37%)が高く、20代は21%と低かった。「地方都市への移住」は20代と30代が21%、40代と50代が15%と差が出た。

転職に向けてすでに活動していた人を対象に、コロナによって自身の活動に変化があったか、という質問への回答では「以前と変わらないペースで続けている」が52%で最多だったものの、「一時停止したがその後再開した」(12%)、「転職すべきか迷うようになった」(11%)、「活動を停止した」(7%)など何らかの影響を受けた層も3割に達した。

転職活動における「ニューノーマル」ともいえる電話やウェブによる「リモート面接」については約4割が「受けたことがある」と回答。「リモート面接で採用担当者に言いたいことや気持ちを伝えることができたか」という質問には6割程度が「そう思う」とした半面、「対話がぎこちなくなる」「相手の表情が分からずコミュニケーションがとりづらい」など実際に会わずに自分の言いたいことを伝える難しさを感じている人もいた。

(日経転職版編集部 宮下奈緒子氏)


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