各地の大学が増加を続けるイスラム圏からの留学生への対応策を相次ぎ拡充している。イスラム礼拝室の開設や教義に合致したハラル食の導入など修学・研究環境の改善を通じて、グローバル化や大学の特色をアピールし競争に備える。ともに学ぶ日本人学生や教員にとっても異文化理解や意識改革につながっている。

金沢市郊外の山裾に広がる金沢大学角間キャンパス。校舎の階段横スペースを改造した礼拝室にはお昼の礼拝時刻になるとイスラム教徒の留学生が続々とやってくる。

リーダーの男子留学生が聖典コーランの一節を唱え、全員が聖地メッカの方角に向かって静かに祈りをささげる。カーテンで仕切られた奥のスペースでは女子学生もお祈りし、広さ8畳ほどの礼拝室はすぐに満員となった。

大学院で電子情報科学を専攻するマレーシア人女子留学生のヌルル・アマリナさん(23)は来日5年目。「礼拝室ができるまでは空き教室などを探すのに苦労したが、今は安心」とほほ笑む。

インドネシア出身の博士課程、ムハンマド・アミンさん(25)は環境デザイン学を研究する。「ここなら落ち着いて礼拝ができる。先生方や日本人学生も、ハラルや断食などイスラム教の教義や慣習を十分理解してくれている」と話す。

こうした需要に応え、ディスプレー大手の丹青社はハラル・ジャパン協会と共同で和風の建具や畳を使ったユニット式礼拝室を開発し、関西学院大学や立教大学などに納入した。「和の空間で礼拝したいというイスラム教徒の意見を取り入れた」と同社企画開発センターの担当者は話す。他の大学からも問い合わせが来ているという。

日本学生支援機構の調べによると、インドネシアなどイスラム教徒が人口の半数以上を占める国・地域からの留学生は2018年度で約1万8000人。2014年度以降に目立って増え、5年間で約2.3倍になった。

約1600人の留学生のうち100人前後がイスラム圏出身という上智大学では2016年にハラル認証を受けた学生食堂をオープンした。留学生へのアンケートで食事に苦労する、というケースが多かったからだ。

イスラム教徒以外のベジタリアンの学生にも配慮し、2017年4月には学生食堂で大豆ミートを使ったハンバーグやカレーなどのメニューを導入した。より動物性食品の制限が多いビーガン(完全菜食主義者)対応の日替わりメニューも登場し、日本人学生にも人気だ。

食堂の席数が足りないため、昨年からケバブやエジプト料理など、豚肉やアルコールを使わないメニューの移動販売車に来てもらっている。

留学生の生活支援も広がる。約650人の留学生が在籍する首都大学東京では、日本人学生が留学生と同じ寮に住んで生活をサポートする「レジデント・アシスタント」制度を導入した。「地震などの防災対応」「ゴミ出しルール」などの異文化理解講座を定期開催し、博士課程の大学院生が留学生の日本語論文作成を支援している。

「SNSの普及で留学生の活動範囲は大きく広がっている。今後は八王子市などの地域と連携した支援体制も充実させたい」(留学生交流係・佐藤麻衣子係長)という。

05年に学食にハラルを導入するなど早くから留学生の生活環境改善に取り組む名古屋大学では、ウズベキスタンなどイスラム圏出身学生200人以上が学ぶ。

名大ではイスラムになじみがない学生や教員向けに「ムスリムの学生生活」と題した小冊子を作成した。礼拝やハラルなどイスラムの教義や生活習慣を日・英語でわかりやすく解説している。

名大国際教育交流センターの田中京子教授は「目的はあくまでも多文化共修。世界中の学生が一緒に学べる環境になれば結果的に留学生も増える」と話す。

(シニア・ライター 山田剛)
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