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沿岸インフラに危機 日本、問われる対応

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は25日、地球温暖化が海面上昇や生態系にもたらす影響を予測した特別報告書を公表した。南極の氷が速く解けるなどして海面が今世紀末までに最大1.1メートル上昇する。被害を抑えるため沿岸部のインフラ整備などに年間で数千億ドルの投資が必要になるとした。従来の想定を超える影響が地球規模で広がる恐れがあるなか、日本も具体的な政策対応が問われる。



IPCCの総会は20日からモナコで開かれ、世界の科学者らが最新の知見にもとづいて地球温暖化の影響を議論した。

25日に公表した報告書で、今世紀末までに海面の上昇が進むと予測。2013年の報告書では、2100年までに82センチの海面上昇があるとみていたが、南極の氷の解ける速度が予想より速まっていることが判明し、上昇幅の見通しを変更した。

これまで南極の氷床の融解についてはデータが不足していたが、調査を重ねた結果、南極のほかグリーンランドの氷も解け、海面上昇が加速していることが分かったという。1901〜90年に比べ2.5倍の速さで海面が上昇しているとした。

「確度は低い」としながらも、2300年には最大で5.4メートル上昇する恐れがあるとした。

世界的な海面上昇に伴い、沿岸部にある湿地の2〜9割が消失する恐れがあると指摘した。1年あたりの沿岸の浸水被害は現在の100〜1千倍に増えるとみている。

海面の温度が急上昇する「海洋熱波」という現象が今世紀末には50倍の頻度で発生するとした。海の生態系に危機的な打撃を与え、魚の収量は20〜24%減るとした。

沿岸の都市インフラへの影響に備える必要がありそうだ。報告書の作成に関わった東京大学の阿部彩子教授は「沿岸の水位が1メートルでも上がると現在のインフラを使い続けることが難しいものも出る。経済や産業構造を含めて見直しが必要になる場合もある」という。

陸地でも高山の氷河や永久凍土などに広く影響が出てくる。2100年までに欧州やアジアなどの一部の氷河では8割以上が解けると予測した。スイスやアジアのヒマラヤ山脈付近は山岳氷河を観光資源としている国も多く、影響は必至だ。

芝浦工業大学の平林由希子教授は「日本でもライチョウなど高山に住む生物の生存への影響は避けられない」と話す。

日本では2018年に「気候変動適応法」を施行。各自治体に対し防潮堤の整備や熱中症予防にも役立つインフラ建設などの適応策の作成を求めた。

報告書で海面上昇の速度に言及があったことを踏まえ「適応策を作成中の沿岸部などの自治体は、これから海面上昇への対応を織り込む必要が出てくる」(環境省)という。環境省の2001年の調べによると、海面が1メートル上昇すると国内の砂浜面積の9割が消失するという。当時の試算では港湾施設の対策に7.8兆円、海岸構造物には3.6兆円が必要とした。

高潮や高波の影響を受けやすくなることも予想され、防潮堤や低地のかさ上げなどの対策も求められる。西欧諸国は二酸化炭素(CO2)の排出量に応じて負担を求める炭素税の導入などで先行している。環境対応に消極的な企業から投資を引き揚げる動きが世界で広がるなか、日本も官民をあげたさらなる取り組みが大きな課題となる。


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