学生がキャンパスを飛び出し、地域の未来を考えたり、文化の魅力を伝えたりする活動が広がっている。課題解決型学習と呼ばれる授業の手法で、問題意識やチームワークが学びの成果につながる。学生らしいアイデアと行動力は、社会との新たな結びつきを築いている。

9月10日、東日本大震災の被災地復興への課題を考える「陸前高田プロジェクト」の報告会が立教大学池袋キャンパス(東京・豊島)で開かれた。参加したのは立教大、米スタンフォード大、香港大、シンガポール国立大の学生21人である。

学生は大学の枠を超えて5チームに分かれ、9日間の活動をともにした。岩手県陸前高田市について学んだ後、現地に5日間滞在し、人々に聞き取りをしたり、街の魅力を探したりした。会話は英語を用いており、通訳は立教大生が担う。

「Team Gohan Rice」の4人は、普門寺に納められた「ねがい桜」を紹介した。地元の女性たちが慰霊のため、全国から寄せられた着物などを材料に桜の花をかたどった。花の数は1万8千を超える震災の死者・行方不明者に相当し、「二度と散らないように」との人々の願いが託されているという。

「SOBA TEAM!」の4人は、ゴーヤーなどを育てる農家を訪ねた。津波で農地が流されたこと、復興へ後継者不足に悩んでいることなどを報告した。地元の農作物を素材に商品をつくり、全国に情報を発信してはどうかと提案した。

全チームが報告書をまとめた。被災地の現状や街の魅力を世界に知ってもらおうと、現地で撮影した多くの風景を写真投稿サイトから発信した。

立教大は2003年から同市で学生の林業体験を続けている。その縁で始まった同プロジェクトは7年目を迎え、海外にも理解者を広げてきた。学生は「言葉の壁を越えて話し合う難しさと大切さがわかった」などの成果を得たようだ。

「被災地には、いまを伝えてほしい、忘れないでほしいという思いがある。その気持ちに寄り添うことが大切です」。プロジェクトを担当する立教大グローバル教育センターの高井明子特任准教授は意義を語る。

交渉や予算管理

映画上映会を企画・運営したのは立命館大学映像学部の学生6人だ。履修科目の一環である。

9月21日、「京都みなみ会館」(京都市)でサイレント映画「メトロポリス」(フリッツ・ラング監督)の有料上映会が開かれた。世代の異なる映画ファン100人が訪れ、会場は8割強の座席が埋まった。

同作品は1920年代に公開された。貴族階級と下層階級に分断された格差社会、科学技術が発展したおよそ百年後の未来が映し出されている。サイレント映画の専門会社から16ミリフィルムを借り、本格的な上映会の実現にこだわった。

この作品を選んだのは、映像文化にふさわしい貴重なSF作品という理由だけではない。活動弁士が映像に合わせて語り、演奏家が生で伴奏をするサイレント映画ならではの臨場感を楽しんでほしかったからだ。

上映会後、シニア世代の女性が「とても懐かしいひとときでした」と声をかけてきた。ある若者は「初めて体験したけれど、面白く、興味を持った」という感想を投稿サイトにつづっていた。

学生は鑑賞者のメッセージに勇気づけられた。活動弁士や演奏家、会場などとも交渉し、予算管理にも気を配らねばならなかったからだ。

渉外担当の2回生、後藤優風さんは「情報を共有し、計画を実現する難しさと大切さを体験した」と振り返る。また、ともに3回生で広報担当の鈴木奈々さんと松崎優里香さんは「世代を超えて作品を楽しんでくれた反応が伝わってきた」と手応えを感じている。

実習担当の川村健一郎教授は上映会の意義を強調した。「社会とのつながりの中で何事かを実現できる確信を学生に持ってもらうことが重要ではないか」。同学部では卒業後、映像ビジネスに携わる学生も多く、実習は貴重な社会経験になる。

SDGsを実践

想定外の台風災害に遭遇し、活動の輪を広げる学生たちがいる。

「お釣りは被災地へ寄付を」。9月24日、昭和女子大学の高木俊雄准教授のゼミ生らは、千葉県香取市で収穫された大根やさつまいも、梨などの販売会を東京都内で開いた。思いがけず購入者から支援を託された。

9月初めの台風15号によって、香取市でも農家のビニールハウスが壊れるなど大きな被害が出た。学生はボランティアで復旧作業に加わり「規格外を含む農作物の販売を提案しました。今後も協力したい」(3年生の高崎杏実さん)という。

学生たちはグローバルビジネス学部に所属する。高木准教授の下で国連が提唱する「SDGs(持続可能な開発目標)」をテーマに、2019年度から国内4都市で研究・活動を計画している。まちづくりや産業振興策などを地域の若者と一緒に考えるのが目的だ。

香取市は対象の一つ。今夏、県立佐原高校の生徒8人と地域の関係者へ聞き取りをして問題意識をまとめた。「農業従事者が減るなか、どのような農業の未来を築いていけばよいか」「香取神宮、日本地図を完成させた伊能忠敬の記念館など名所をどう活用するか」

香取市ではSDGsが掲げる17の目標のうち、「産業と技術革新の基盤をつくろう」「住み続けられるまちづくりを」など6つの目標があてはまった。そして地域を大切にする人々が多いことに刺激を受け、より身近な街になってきた。

ほかのゼミ生たちもグループに分かれ、通信環境が充実している徳島県美波町、金属加工の産業集積がある新潟県燕市で活動している。豊かな農業や漁業がある北海道釧路市でも計画している。

地域で一緒に活動する中高生とシンポジウムを開く予定だ。高木准教授は「若者にこそ、ふるさとの未来を考え、行動し、新しい時代をつくってほしい」と強調する。


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