2020年度に始まる大学入学共通テストでの英語民間試験の活用見送りが決まった。グローバル時代に対応して英語入試を変える構想が浮上して6年。不十分ながらも積み上げられてきた準備は土壇場の政治判断で瓦解し、白紙に戻った。多くの高校生や大学を翻弄した混乱の原因と、試験の再構築を期して新たに始まる議論の課題を探る。

「入試として使うのは初めてなので、海外の事例を参考にしながら精いっぱい頑張っている」「東京五輪の影響で試験会場を借りるのが難しい」。10月21日に全国高等学校長協会(全高長)が開いた民間試験を巡る緊急シンポジウム。複数の試験団体の幹部が準備の遅れについて釈明した。

試験開始まで半年を切っても決まらない試験会場や日程の詳細。全高長の幹部は「改善の兆しが見えない」とあきれた。

実施の準備がここまで難航し、混乱が広がったのはなぜか。最大の問題は文部科学省・大学入試センター、試験団体、大学の3者が有機的な連携を欠いたことにある。

試験運営を民間に委ねることで財政負担を抑えられる代わり、文科省には団体の指導権限がない。会場確保などは団体に実質丸投げされた。

その上で文科省側は新たな要求を団体に次々に出した。推薦入試などに合わせ2020年4〜12月の間の3つの時期に成績を提供するのをはじめ、経済的弱者らへの配慮でも細かな注文が付いた。

「後出しジャンケンの連続だった」と関係者。今年7月初めには「TOEIC」がこうした要請に「適切な対応を見いだせない」と撤退した。

民間団体である以上、採算度外視の運営は難しい。ある団体の幹部は「試験会場を用意して誰も来なかったら損失になってしまう」と話す。

大学側の民間試験の活用方針も割れた。同じ大学の学部や学科で利用法が異なることも。大手予備校からは「我々でも情報収集に青息吐息。受験生が混乱するのは当然だ」との声が上がった。

東京大の五神真学長が事態改善の要望書を出したのを受けて文科省が昨年12月に設置した、試験団体や高校、大学などとの作業部会も「ほとんど開かれなかった」(委員の一人)。

「文科省、試験団体、センターのどこに言っても責任ある答えが返ってこない」。試験の全容が見えない中、いら立ちと不安を募らせた全高長は7月下旬、文科省に「責任を持って事態の収拾を」と求めた。

この頃には大手試験団体の幹部も「止まってくれたらベストかも」と漏らすようになっていた。しかし、文科省が政治の力に折れる形で見送りを決断するまでには、さらに3カ月余りを要した。

民間試験の活用は政治主導で始まった。活用ありきで、懸念や問題点を高校や専門家が繰り返し指摘しても立ち止まらなかった文科省。その要請をこなすのにきゅうきゅうとするだけだった試験団体。急転直下の見送りは、責任の所在が曖昧な今回の仕組みの根本的欠陥を是正せずに進んだことの当然の帰結だった。

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