中学受験の本番が約2カ月後に迫った。都市部を中心に受験熱が高まるなか、注意が必要なのが家庭内の指導の行き過ぎだ。子どもの負担や苦痛に気づかず、心身を傷つける虐待に発展してしまう事例も起きている。多くの親に自覚がないのが特徴で、専門家は「どの家庭にもリスクはある」と指摘。人格を否定するような言動を避けるよう訴えている。


息子(左)を追い込んだことへの後悔を口にする男性(8月、神奈川県)

「息子の気持ちに気づけず、寄り添えていなかった」。神奈川県に住む会社役員の男性(44)は、中学受験を控えた息子に対する数年前のふるまいを今も悔やむ。自身は中高一貫校から有名私立大に進み「息子にも幸せになってほしいという思いだった」と話す。

息子が中学受験を目指し始めた小学3〜4年生ごろから家庭学習に付き合うように。毎晩日付が変わるころまで机に向かわせ、できない問題があると怒鳴りつけた。鉛筆を投げたり、爪で手のひらをつねったりした。

ある日、苦手だった計算問題を解けた息子が「パパ、見て!」とうれしそうに答案を見せた。「それ以外は全然できてないじゃないか」。男性が一蹴すると、息子はそれ以降、学校や塾に通えなくなった。受験は断念。現在は公立中学校に元気に通う息子は「当時は褒めてくれるかなって思った。悲しくて体が動かなくなった」と振り返る。

習い事なども含む家庭内の行き過ぎた学習指導を「教育虐待」と呼ぶ研究者もいる。武蔵大の武田信子教授(教育心理学)もその一人で、「教育の名の下に子どもに過剰な負担を与え、心身のバランスや心理社会的発達を阻害するような扱い」と定義する。

同教授によると、教育虐待をする親の多くは「子どもの幸せのために行動を管理する必要がある」と考え、虐待の自覚はない。一方、子どもは「親の言うとおりにできない自分が悪い」と自らを責めてしまうという。

厚生労働省によると、2004年1月から18年3月までに教育やしつけが理由の虐待で亡くなった子どもは87人に上る。

名古屋市では16年、中学受験の勉強中だった小学6年の長男(当時12)を父親(51)が刺殺する事件が起きた。父親は自身の母校だった名門進学校を志望する長男を、日ごろから刃物などで脅して勉強させていた。

公判では父親自身も両親から厳しい受験指導を受けていたことが明らかになった。殺人事件に至るのは特異なケースだが、武田教授は親から受けた教育虐待を子に繰り返す例は珍しくないとする。名古屋高裁は27日、父親を懲役13年とした一審・名古屋地裁の裁判員裁判判決を支持し、父親側の控訴を棄却した。

最近は親世代も中学受験の経験者が増え、我が子の指導に熱心になることも多い。虐待を受けた子どもを診察してきた青山学院大の古荘純一教授(小児精神医学)は「程度の軽いものも含めれば教育虐待はどの家庭でも起こりうる」と警鐘を鳴らす。

同教授は「心が弱い」などと子どもの人格を否定する言葉は慎むべきだと指摘。不眠などの症状に注意し、本人が行き詰まる前に周囲が異変に気づくことが大切だとしている。

■中学受験「第3次ブーム」 背景に大学入試改革
少子化にもかかわらず、都市部では中学受験の受験者数が増えている。東京都によると、私立中に進学した都内の公立小卒業者は2019年3月に1万6千人。5年間で2千人増え、割合も18%と2ポイント伸びた。



「現在は第3次ブームだ」。中学受験に詳しい森上教育研究所(東京・千代田)の森上展安社長は指摘する。塾に通わせ始める時期が低学年化したり、大手の塾と個別指導塾の両方に通わせたりと親の中学受験投資も拡大傾向だという。

森上氏によると、08年のリーマン・ショック後に減少していた受験者数が増加に転じたのは15年。「大学入試改革の議論が始まり、大学入試の先行きが不透明になったことで有名私大の付属中の人気が高まった」

中学受験塾「四谷大塚」(同・中野)の岩崎隆義・入試情報センター所長は、高校募集をやめる有名校が増えている点も過熱化の要因に挙げる。残り約2カ月に迫った20年1〜2月の入試についても、模試の申込者数の伸びから「1都3県の受験者数は前年比で1500人ほど増える」と予測している。

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