月60時間を超える残業をする人の45.2%が強いストレスを感じ、無駄な会議での企業の損失は年間15億円。残業は同調圧力によって感染し、帰りにくさを感じる20代は50代の2倍近い。

立教大経営学部教授の中原淳さん(43)が2018年末、全国の企業で働く約2万人への調査を基にした「残業学」と題した本で日本の長時間労働の病巣に斬り込んだ。ネットなどで「データが示されることで、残業の実態と生み出される構造が良く分かった」と反響を呼び、増刷が続く。

働き方改革の掛け声が響く中、部下の仕事内容を把握しにくい仕組みや不適切な仕事の量など「残業の根本的な原因を放置しては本当の改革にはならない」と訴える。

専門は人材開発や組織のマネジメントだ。個人の能力を企業などの目的に沿う形で育て、集団を組織として機能させる意思疎通の方法や人の配置などを考える。

研究の原点にあるのは自分が職場で感じる「モヤモヤした悩み」だ。

大学の研究室で、多いときには約20人の部下を束ねた。限られた陣容での仕事の割り振り、部下の育成に試行錯誤を繰り返した。

部下も自分も一生懸命働いているのに、仕事に追われ続ける。自らも共働きで子育てをしながら、早朝に研究時間をひねり出した。「与えられた時間と仕事の量は適切なのか」。自分たちの努力だけでは解決しきれない課題に頭を悩ませた。

自身の経験から、組織の抱える課題は現場から見えてくると信じる。研究でヒアリングをした働く人は2千人を超えた。

「人が足りない」「無駄な会議が多い」など100人中95人の仕事の悩みは組織と人にかかわる。「組織の変革につながる研究には意義がある」との思いは強い。

就職氷河期に学生時代を過ごし、世の中に安定した職場はないと思っていた。「学びが人生を左右する」と説く大学の恩師の影響で、研究の世界へ。企業での人材教育のあり方を巡り企業人と話すうち、「無駄な残業など皆が息詰まる土壌を生む組織の改革が先決だ」と気付いた。

研究室に掲げたのれんには「そして人生はつづく」。仕事や会社が時代と共に変わろうと、そこにいる人それぞれには人生がある。一人ひとりが職場で実りある暮らしを送ることのできる社会を目指し、研究も続く。

「残業学」 データが見せた実態

「残業学」に代表される著書や研究で中原さんが重視するのはデータに基づく分析だ。残業学では「職場でなぜ残業が発生するのか」というメカニズムについて、パーソル総合研究所(東京都)と共に2017〜18年、全国の20〜59歳の正社員1万2千人を対象に実態調査を行った。

残業は「集中」「感染」「まひ」「遺伝」し、組織的に学習され、世代を超えて伝わっていく――。調査データから導き出される残業の病巣とは。いくつかのデータと中原さんたちの分析を紹介する。

残業は「感染」する

残業時間を増やす要因の一つは「周りの人が働いていると帰りにくい雰囲気」とみられる。「帰りにくい同調圧力」は若い人ほど感じやすく、上司の残業時間が長いほど部下は帰りにくいという「感染」の現象が明らかになった。

生活費を残業代に依存するという問題


極めて多くの従業員が「基本給だけでは生活ができない」と考え、「残業代」を前提に生活費を組み立てているという実態が浮かび上がった。

残業時間を減らして残業代が削減されたら、会社は「残業代還元」という見返りを用意することが大切だと中原さんたちは指摘する。全社的に強制力の強い残業施策を行いながら、賞与をアップさせたり特別手当を支給したりという還元方法を実施して社員のモチベーションを維持する努力を試みる企業もあるという。

長時間労働は健康リスクを高める


残業時間がゼロの層と比べ、60時間を超えると、食欲減退・重篤な病気・ストレスを抱えるリスクが1.6〜2.3倍に。

相当な過剰労働をすると残業に対する「麻痺」の状態に陥り、主観的な幸福感・会社満足度は「上昇」する場合も増える興味深い現象も見られた。中原さんは「健康を害するリスクを負ってまで過剰な労働量を追いかけるのは避けるべきだ」と指摘する。

「今日はどんなふうに世界を見ようかな」。毎朝色も形も違う20本以上のコレクションからメガネを決める。日々、新しい視点で物事を見ようと前日とは別のモノを選ぶという。研究対象の企業や社会が日々、変化し続ける中で「自分も変わり続けなくてはならない」と常に思っている。メガネで見た目の印象を変えるのはそんな姿勢の表れなのかもしれない。

  • 1970.01.01 Thursday
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  • 16:39
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