「残業ゼロ、1日8時間勤務を徹底しています!」。7月28日、東京・池袋で保育士向けの転職イベントが開かれた。現役の保育士など約160人が転職先を探し、保育所の採用担当者が熱心に声を掛ける。イベントの活況は、今の職場に不満を抱える保育士が多いことも意味していた。

「ブラック保育所」。こんな呼ばれ方をされる保育所がある。保育士に十分な給与が支払われず、自宅への業務の持ち帰りも常態化している施設だ。保育所の増設が進む裏で、全体の一部だが、保育士が虐げられる問題が深刻になっている。

2018年11月30日、なとりおひさま保育園(宮城県名取市)で保育士が集団退職した。残業代未払いやパワーハラスメントが横行し経営者に訴えても改善されなかったという。「これ以上、ここでは働けません」。7人の保育士が辞めた。

運営側との対立で保育士が辞職するケースは後を絶たない。東京都中央区のある保育所では園長を含む約10人の職員が一斉退職し、3月9日に運営会社が保護者に謝罪した。娘を通わせる30代の会社員男性は「また同じことが起きるのではないか」と不安げだ。

「同僚の保育士が大勢やめてしまった。強いストレスを感じます」。介護・保育ユニオンの執行委員、池田一慶(39)の元には連日、20〜30代の保育士の女性からこんな相談の電話がくる。

ユニオンの母体はブラック企業対策を目的に2014年に発足した労働組合「総合サポートユニオン」。問題が増える保育の現場でも専門組織をつくった。「8割以上の保育所で残業代未払いなど労働基準法違反がある」。保育士の団体交渉を担当している池田は明かす。

なぜ保育所で労働環境の悪化が目立つのか。原因の一つは2000年の民間事業者の参入解禁を機に運営費の「弾力的運用」が可能になったことだ。規制が緩くなったことを逆手にとり、人件費を削って利益優先に走る施設が出てきた。

保育所では運営費から人件費にまわす割合は7〜8割が適正とされる。だがユニオンの調べではこの水準を維持せず、なかには2割しかないところもある。待機児童の問題が深刻になり、保育所を増やせば事業チャンスがあるとみるや、人件費より設備投資を優先する運営者がいるという。

保育士の平均賃金は月額23万2600円(2018年、厚生労働省調べ)。全体平均の30万6200円を大きく下回る。転職支援のネクストビート(東京・渋谷)によると保育士の4人に3人は転職を経験している。3回以上の人も3割近い。待遇への不満だけが転職の理由ではないが、定着度合いの低さは目立つ。

行政も問題は認識する。「量の整備に重点が置かれすぎ質の確保への意識が十分でなかったのでは」。内閣府の企業主導型保育所の検討会。少子化相の宮腰光寛(68)は2018年12月17日の会合で述べたが3月に報告書をまとめた後も問題が続く。

内閣府が4月26日にまとめた調査では、2016〜2017年度に助成金の交付を決めた企業主導型保育所のうち、約1割の252施設がすでに撤退したことがわかった。悪質なケースでは、助成金を不正に受け取ったまま施設を開園しない事例まである。

政府は2020年度末までに、4月時点で1万6772人いる待機児童をゼロにする目標を掲げる。達成には約46万人(2017年10月時点)いる保育人材をもっと増やす必要がある。だが東京都の調査では保育士の22.4%が今後は保育士を辞めるつもりだと回答した。

20代のころに保育士だった加藤春香さん(仮名、35)はいま、営業事務で働く。「保育士の仕事はやりがいがあるけど、汗だくで走り回っても給料は今と一緒だし……」。今後も保育士に戻るつもりはないという。

保育士の資格を持ちながら保育士として働いていない「潜在保育士」は全国で約80万人いるとされる。ミスマッチの解消につなげる改善を急ぐ必要がある。(敬称略)

  • 1970.01.01 Thursday
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  • 13:26
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