急速な人口減少が公共サービスの見直しを迫っている。通信大手や地方自治体は過疎地を含めた一律のサービスを維持する負担に苦しみ、識者からはコストを踏まえた改革を促す声が上がる。

沖縄県の石垣島の東に浮かぶ小島。近くの電話局との間をつなぐ海底ケーブルで2015年、台風15号による断線が起きた。NTT西日本は長崎県から専用船を派遣して半年がかりで修理した。この島には固定電話の契約が2回線しかない。そのサービスを維持するために5千万〜6千万円の修理費がかかった。

国内の山間部では様々な要因で断線が起きる。倒木や積雪、落雷による切断が多く、キツツキがつついたり猟銃の弾が当たったりして切れることもある。どんなに利用者の少ない地域でも、NTT東日本・西日本の復旧チームは駆けつける。

固定電話はNTT法が「全国での公平かつ安定的な提供」を義務づけるユニバーサルサービスだ。どこでも利用者の求めに応じて電線を引いて維持する必要がある。津々浦々の通信網を維持するコストはNTT東西の収益を圧迫し、2018年度の両社の固定電話事業は360億円の赤字だった。

「電線の再敷設が著しく経済合理性を欠く地域では緩和してほしい」。たまりかねたNTTの要望を受け、総務省は20年の通常国会に改正法案の提出をめざす。過疎地では電線のかわりに携帯電話の電波を使うことを認める。NTT東西は投資を年数十億円減らせる。

固定電話の赤字の一部は携帯大手が補填し、携帯料金に月3円の原資が上乗せされている。赤字が減れば上乗せは減る。NTT東西が全国の光回線サービスなどの料金を下げる余地も広がる。

すでに米国、英国、韓国は電波による代替を認めた。有線よりも音声の伝達が遅いが、大差はない。通信品質のわずかな低下により、全国の利用者に恩恵をもたらす。

総務省は日本郵便が人手不足などを理由に求めた土曜配達の廃止も認める方針だ。これも北欧や韓国が先行する。

人口減で効率の低下した公共サービスを漫然と続けることはできないとの声が経営者や研究者の間で広がる。政府の経済財政諮問会議の民間議員は4月の会合で「水道、電力・ガス、郵便、通信などのユニバーサルサービスのコストを明らかにすべきだ」と注文した。

松村敏弘・東大教授は「全国一律に低廉な料金で、という発想がそもそも正しいのかを見直す必要がある」と語る。地域の実情がわかる自治体がサービスの内容や料金を選ぶ柔軟さがあってもよいというのが同教授の考えだ。「高齢者らの見守りに必要な光ファイバー通信を優先し、他のサービスは低下を受け入れるといったメリハリをつけるべきだ」と提案する。

給水時間や水質などサービスの質を落としにくい水道。静岡市は2020年4月に料金を平均14.8%も引き上げる。総延長2600キロメートルに達する水道管の老朽化が進み、更新を加速する必要があるためだ。住宅がまばらになった地域もあるが、今と同じ場所に引き直す。

同市は「1軒でもあれば水道管を引くのが行政の役目だ」と理解を求めつつ、長期的な負担の抑制策にも取り組む。公共施設や商店を中心部に集め、市民の住む場所も誘導する「コンパクトシティー」だ。居住地域が狭くなればインフラ維持のコストも削減できる。

公共サービスの内容や対象地域の今ある姿を絶対視せず、柔軟に見直すことなしに人口減時代に活力を保つのは難しい。

  • 1970.01.01 Thursday
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  • 10:15
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