インドの無人探査機「チャンドラヤーン2号」が7日に月面への着陸に挑んだが、失敗した。着陸目前に通信が途絶え、墜落したとみられる。インドが目標にした月の南極付近は多くの水があると期待されており、月面開発の重要な拠点になる可能性がある。今回は失敗に終わったが、各国は高い関心を寄せている。



チャンドラヤーン2号は、ヒンディー語で「月への乗り物」という意味。インドの月面探査では、2008年に打ち上げたチャンドラヤーン1号に続く。前回は上空からの探査で、水分子が存在した痕跡を発見した。

2号が打ち上げられたのは7月22日。地球を周回しながら徐々に軌道を伸ばし、地球から約40万キロメートル離れた月を回る軌道に約1カ月かけて8月20日に到達した。探査機本体から切り離された着陸機「ビクラム」が南極付近に降下し、着陸後は探査車も月面に降ろして月の岩石などを詳しく調べる計画だった。

ビクラムは7日早朝、着陸を目前に大きく予定の軌道からそれはじめ、直後に通信も途絶えた。これまでのところ原因の詳細などは分かっていない。

月にはこれまで旧ソ連と米国、中国の3カ国が着陸に成功した。有人のアポロ宇宙船をはじめ多くの探査機が送り込まれている。しかしほとんどは降りやすい表側の赤道付近に着陸し、南極付近に着陸した探査機はまだない。

ロケット燃料にも

1月には中国が月の裏側に初めて探査機を着陸させて注目を集めたが、南極付近は裏側と表側の境界にあたり、着陸に適した平らな場所も少ない。「南極近くに着陸するのも簡単ではない」と宇宙航空研究開発機構(JAXA)技術領域主幹の星野健さんは説明する。

それにもかかわらず南極付近への着陸を目指すのは、南極や北極の周辺には、これからの宇宙開発に欠かせない水資源が豊富に眠っている、と期待されているからだ。アポロ11号が月に着陸した当時は、月は乾いた世界だと考えられていた。しかしその後、いくつもの探査機の観測データから月に水が存在するのは確実とみられるようになった。

なかでも南極や北極の周辺にはクレーターの影になって永久に太陽の光が当たらない場所がある。そうした場所は常に極低温に保たれていて、多くの水が凍ったまま存在しているのではないかと考えられている。JAXA名誉教授の的川泰宣さんは「水の存在がはっきりすれば、基地建設の戦略も具体的に立つ」と話す。

水は人が月で生活するために必要なだけでなく、ロケット燃料の原料やエネルギー源としても期待されている。水を分解すれば、燃料の液体酸素と液体水素が作れるからだ。月でロケット燃料を作ることができれば、地球から多くの費用とエネルギーをかけて宇宙に燃料を運ぶ必要がなくなり、月開発や火星を目指す探査の費用対効果は飛躍的に向上する。

ビジネスで月探査に参加しようとしている多くの民間企業の狙いも、この水資源の開発だ。まさに月開発ビジネスの中核といえ、各国も南極や北極付近の探査を2020年代前半に目指している。

データ収集は成功

インドの今回の月探査は、日本と無関係ではない。日本はインドと月探査で協力することで合意しており、2023年度を目標に共同で月の南極か北極付近への着陸を目指して探査機を打ち上げる予定だ。打ち上げは日本の次期主力ロケット「H3」を使い、着陸機はインドが担当するなど分担する。

着陸には失敗したが、チャンドラヤーン2号本体は月を回りながら月の精密な写真などのデータを取得している。こうした経験やデータは、共同探査にいかされるはずだ。

インドの宇宙開発の実力は急速に向上している。2014年にはアジアで初めて火星を回る軌道に無人探査機「マンガルヤーン」を送り込むことに成功。有人宇宙船も2022年までの打ち上げを目指して準備を進めており、米ロ中に続いて独自に有人宇宙船を打ち上げる4番目の国になるのは確実とみられる。的川さんは「インドはすでに宇宙先進国の仲間入りをしている」と話す。

日本はこれまで米国や欧州との国際協力に取り組んできたが、米国との力の差は大きく、欧州とは競合する部分も多い。インドとは補完できる部分が多く、星野さんは「今後の日本のパートナーとしてとてもよい相手」と期待する。

(編集委員 小玉祥司 氏)

  • 1970.01.01 Thursday
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  • 16:43
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