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6月上旬から7月中旬まで断続的に行われたラグビー日本代表の宮崎合宿。豪華なリゾートホテルの一室から、時折「君が代」が聞こえてきた。

慣れない日本語の歌詞と格闘しながら声を合わせていたのは、同部屋だった南アフリカ出身のピーター・ラブスカフニ(30)と、オーストラリア出身のジェームス・ムーア(26)。海外生まれながら、「3年以上継続してその国・地域に居住」という、国際統括団体ワールドラグビー(WR)の規定をクリアして今夏、日本代表となった選手だ。

【前回記事】 リーダーが10人 ラグビー日本の意思決定力
9月6日のワールドカップ(W杯)前哨戦、南アフリカとの試合前の国歌斉唱では、大きく口をあけて歌う2人の姿があった。「君が代に敬意をもっているので、ちゃんと練習した。何回も歌っているのでほぼマスターしたと思う」とラブスカフニ。

もちろん母国との対戦に抱いた複雑な感情も隠さない。「小さいころはまさか自分が日本代表として国歌を歌うとは夢にも思わなかった。南アの国歌を聴くと感情が高ぶるが、いまは日本の国歌を歌うことを誇りに思うし、振り返ってみても(日本代表になる)選択は良かった」

今回のW杯日本代表31人中、海外出身者は15人。前回2015年大会の10人を上回り、過去最多だ。他競技を見渡してみても、これほど「多様性」をキーワードに語られる日本代表はかつてなかった。その重要性を最も理解しているのが、ニュージーランド出身で日本に帰化した主将、リーチ・マイケル(30)だ。

■日本史も学べるクイズ大会も開催

前回大会も主将として海外出身選手たちに「君が代」を教え、歌うことを促した。リーチは「ラグビーというスポーツは情熱と愛国心が大事。情熱を出すために、国歌を歌うことは重要だと思う」と話す。リーチ自ら歌唱指導し、歌詞の意味も教えた。

出身国が7つと、これも過去最多となる代表をまとめる工夫はそれだけではない。代表の滞在先の一室には昨年から、甲冑(かっちゅう)が飾られている。名前は「カツモト」。ハリウッド映画「ラストサムライ」で渡辺謙が演じた「勝元」にちなんだ。他にも過去の代表選手の名が刻まれた模造刀などが飾られている。

リーチはスライドを使って日本史を教え、ゲーム感覚で歴史を学べるクイズ大会も主催。ラブスカフニやムーアのように、日本での滞在期間が短い選手たちに、日本代表の心棒のようなものを通すためには、こうした"授業"は欠かせないとリーチは言う。「潜在意識を強化することが、その後につながる。そこで相手と差をつけないといけない。それで歴史を入れたりした」

表面的に日本の文化を受け入れるだけでは足りない。心の奥底に植え付け、いざという時に無意識で引き出せないと、チームの一体感を保てないということか。チーム全体の半分を海外出身者が占めるとなるとなおさらだろう。W杯3大会連続出場の田中史朗(34)も「外国人で固まったりするから、日本人の中に引き入れている。もっと日本の文化を理解してもらってチームとしてやっていきたい」と宮崎合宿中に語っていた。
海外出身者15人という数字は、もっと大きくなる可能性もあった。昨年末に発表された日本代表候補名簿には「※」の注釈付き選手が6人。W杯までに「3年以上継続居住」の条件を満たして代表資格を取得する見込みがあり、代表ヘッドコーチ(HC)のジェイミー・ジョセフ(49)が目をつけていたのだ。結局、居住日数が足りず、資格を得られなかった選手も複数いる。その代表格のオーストラリア出身のラーボニ・ウォーレンボスアヤコ(24)が不足したのは「わずか数日」。所属するトップリーグチームのグラウンドが使えない期間、トレーニングのために帰国したのが響いた。日本ラグビー協会は理由を添えて情状酌量を求めたがWRは却下。伝え聞いたウォーレンボスアヤコは泣いたという。

■ラグビーには2つの国の代表になれた時代も

そもそもラグビーがサッカーなど大半の競技と違い、海外出身者でも代表になれる規定を設けたのは、ラグビーの母国・英国の選手が英国の植民地でも代表としてプレーできるように配慮したのが始まりとされる。かつては2つの国の代表になれたことまであった。

さまざまなバックグラウンドを持つ人が集まる今回の日本代表の強さとは何か。高い技術、日本人がどう努力しても得られなそうなフィジカルを持つ選手、強豪国・ニュージーランド出身のHCジョセフの知見……、そういったわかりやすいものに加えて、ラグビー協会の前男子15人制強化委員長の薫田真広(53)は「プレー精度の高さ」をあげる。

島国で同質性の高い日本は共通体験が多い社会のため、言葉以外でわかりあえる部分が多い。いわゆる「あうんの呼吸」でコミュニケーションが成り立つ。これに対して移民なども多い欧米では、何事も言葉できちんと説明する必要がある。勝つという明確な目的を達成するには、わかりやすいコミュニケーションはより重要だ。

「日本人同士なら、密集への入り方も、むかし高校時代に習ったやり方、と言えば通じた。でも実は『あうん』では細かいことを詰められない。外国人が入ると、必ず言葉にして、数値化、視覚化するコミュニケーションをとるようになるので、プレーの精度があがる。それが今の代表の強さ」と薫田は説明する。

代表では選手3〜4人のミニグループを結成。LINEのグループ機能を使ってやりとりする際、海外出身者がいると、日本語と英語の2カ国語で文章を書くようにしている。その日の練習内容について、細かい部分まで、お互いの意識にズレがないよう確認する手段として有効という。

実際、6日の南ア戦で完敗した後、選手たちが口々に語ったのが「ディテール(細部)が足りなかった」というフレーズだ。プレーの精度を高める意識が、過去の代表に比べても、隅々まで浸透している証拠と言えるだろう。

ユニークな日本代表を生み出した規定は、今回のW杯後、変更される。「3年以上継続居住」という代表になるための条件が「5年」に延長されるのだ。

厳しくなるのは強豪国の選手が出身国以外でチャンスを求めすぎると、地元選手の機会が減ることが背景にある。これは競技の普及面ではマイナスになりかねない。また、3年前にWR副会長に就任したアグスティン・ピチョット(45)が、自国選手だけで強化に成功している母国アルゼンチンを念頭に、他国の弱体化を狙っているとの見方もある。

いずれにせよ、ラグビー界の潮流は変わってきており、これほど彩り豊かなジャパンを今後も維持できるかは不透明だ。

日本ラグビー協会も手はうっている。日本代表資格を得る可能性のある海外出身選手が、トップリーグの試合で同時にプレーできる人数について、1人だったのを18年シーズンから3人に増やした。

トップリーグのチームに優秀な外国人の獲得を促し、将来の日本代表候補を増やそうという算段だ。新たなプロリーグ創設の構想もあり、多くの外国人選手が来る可能性もある。

ただ、彼らが桜のジャージーを着たいと思うかは、日本のラグビーが魅力的かどうかにかかる。ラグビー伝統国アイルランドを破った今のジャパンが、過去最強なのは間違いなく、その磁力は強いはずだ。多様性を受け入れた上での共生が課題となっている日本社会にとって、これからもお手本のような存在であり続けたい。

=敬称略

(摂待卓氏)

  • 1970.01.01 Thursday
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  • 18:04
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