2020年は銀行を2つの大波が襲う。一つはマイナス金利政策で収益を削られる構図が続く。もう一つは異業種との競争だ。ヤフーを運営するZホールディングスとLINEが目指す「スーパーアプリ」は台風の目になりそうだ。銀行と異業種の生き残りをかけた競争で、革新的な金融サービスが生まれる年になるかもしれない。

銀行はこれまで営業職員を通じて個人や企業がどんな金融サービスを求めているのかを知り、実際にサービスを提供してきた。プラットフォーマーは多機能アプリなどの圧倒的な利便性を武器に金融機関と顧客との間に入る。銀行は戦略立案のうえでもっとも大事な顧客データを奪われ、顧客やプラットフォーマーによって複数の金融機関から選んでもらう立場になるかもしれない。


中国の「アリペイ」などのように生活に関わるほぼすべてのサービスを提供できる「スーパーアプリ」は、その最たるものだ。ヤフーとLINEの顧客は単純合算で1億人を超える。また有力なスマホ決済である「PayPay」と「LINEPay」を持つ。いずれも政府のポイント還元事業で商圏を広げた。メッセージアプリ内で決済だけでなく給与振込、金融商品の購入までできるようになれば勢力図は変わる。


企業融資の世界でも同様だ。たとえばクラウド会計のfreee(東京・品川)は地方銀行と組み、取引先企業の資金データをすべて可視化できるサービスを展開している。地銀にとっては取引先企業の実情が手に取るように分かる利点はあるが、もはやfreeeのサービスを通じてしか情報を入手できなくなるのではと懸念する声もある。


メガバンクも自前主義に限界を感じている。20年度中に設立が予定されているLINEとみずほフィナンシャルグループのスマホ銀行はLINE側が51%の出資を握る。銀行側は「助手席」(みずほ幹部)というわけだ。


三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は自社で進めていたコイン構想を転換し、20年からはリクルートが51%出資する新会社に委ねることを決めた。こうした戦略で銀行がどこまで主導権を残せるのか、バランスは手探りだ。

他支店との統合により移転予定の銀行の店舗(東京都世田谷区)

銀行に残された選択肢はそう多くない。新たな技術分野に手を広げる経営資源がマイナス金利政策によって削られているためだ。全国銀行協会が公表する全国115行の実質業務純益は2018年度に3兆240億円と3年で3割減った。


2019年には短期金利だけでなく、長期金利もマイナス圏に入り、市場運用も厳しくなった。合理化によって利益をひねり出そうにも、店舗や人員を減らすスピードには限界があり、規制対応での人員配置に経費もかかる。世界のマネーロンダリング(資金洗浄)対策を調査する金融活動作業部会(FATF)の審査もあり、預金の本人確認にもこれまで以上にコストがかかる見通しだ。


「できることなら銀行免許を返上したい」。銀行からはこんな弱音も漏れる。米マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツ氏は1990年代に「銀行機能は必要だが今ある銀行は必要なくなる」と発言したが、では将来は誰が代わりに銀行の役割を担えるのか。


注目されるのは公正取引委員会の動きだ。スマホ決済業者の利用者が銀行口座からチャージする際に生じる手数料や、家計簿アプリに口座情報を提供する「オープンAPI」の手数料など、銀行の動きを調査し始めた。送金手数料や、その土台となっている「全銀システム」のあり方も調べており、それらの結果を20年3月までに公表する予定になっている。


公取委の狙いは、銀行が金融分野での技術革新を邪魔する構図になっていないかどうかのチェックだ。安全・安心を守ることと新しい技術革新を進めることのバランスはいつも難しい。だが銀行が単に既得権益を守る側だと世間からみなされれば、その先の試練はさらに厳しいものになる。20年はその分岐点になる。


(高見浩輔氏)

  • 1970.01.01 Thursday
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