人工知能(AI)研究の第一人者であるカナダ・トロント大学のジェフリー・ヒントン名誉教授は日本経済新聞のインタビューに応じ、AIの未来について「最終的には人間の考えを理解できるAIが実現するだろう」と述べた。あらゆる領域に応用できる汎用型のAIが実現する可能性も示した。AIの進化には基礎研究の投資が不可欠として、日本も政府が投資を増やす必要があると訴えた。


■「自然な会話可能、人間を支えるシステムに」

ヒントン氏は人間の脳の神経細胞を模した「ニューラルネットワーク」に着目し、約40年にわたりAIを研究してきた。大量のデータを学ばせるディープラーニング(深層学習)の中核技術を開発し、3度目とされる現在のAIブームのきっかけを作った人物だ。



ジェフリー・ヒントン トロント大学名誉教授

現在のAIスピーカーやチャットボットは質問に答えるが、内容は理解していない。ヒントン氏によると、将来は「AIが相手の考えを理解して自然に会話できるようになる」といい、あらゆる目的に応用できる汎用AIが実現する可能性がある。


ただヒントン氏は、汎用AIが技術的には可能だが「人間がいるので同じような汎用ロボットは必要とされないかもしれない」とも指摘した。「グーグルなど米IT(情報技術)大手は会話しながら人間をサポートする高精度なシステムを提供したがっている」といい、物理的なロボットよりも、人間を支えるシステムとしての開発が進むと見通した。



汎用AIは複数の技術を組み合わせ実現するとみられている。ヒントン氏は足りない要素について「論理的に思考する能力だ」と指摘。今のAIは画像や音声の認識は得意だが、人間のように推論するのは難しい。「思考するAIは次の研究フロンティアの一つになる」と強調した。


ヒントン氏は「チンパンジーは音声や画像を認識するが、人間のように論理的に思考できない」と話した。人間の脳が進化の過程でこうした能力を備えたことを踏まえて、仕組みが近いニューラルネットワークがAIによる推論を実現する鍵を握ると指摘した。


ディープラーニングなどAI技術は今後もあらゆる産業に広がる見通しだ。ヒントン氏は「生産性を高めて人々の生活を改善する」と強調し、今後5〜10年にAIによる技術革新が起きる分野として「医療画像の認識や自然言語の理解、ロボット」を挙げた。


■日本に苦言「基礎研究にもっと投資を」

日本の課題にも言及した。「政府は好奇心に基づいた基礎研究にもっと投資をすべきだ」と苦言を呈した。ヒントン氏が研究拠点を置くカナダは政府が大学での基礎研究に投資し、AIが注目されなかった冬の時代にも研究を後押ししてきた。「日本の投資が十分とは思えない」と話した。


特に「大きなブレークスルーは若い研究者から生まれる」とし、「自分の直感を信じて追求してほしい」と語った。応用研究だけでなく、若者が好奇心のままに大学で新しいアイデアを発展させられるようにする必要性を強調した。


今のAI開発はグーグルなど莫大な資金をコンピューターに投じた企業がけん引する。ヒントン氏は「データ量とコンピューターの性能がAIの進化を支える潮流は今後も続く」と話す。そのうえで「新たなアイデアが研究のさらなる飛躍につながる」という。量子コンピューターが実現すれば計算能力は飛躍的に高まり、AIの可能性も広がりそうだ。


《聞き手から》貫いた信念、日本に教訓


1969年、今のAIの根幹であるニューラルネットワークの可能性を否定する本が出版された。「誰もが限界を感じました」。ヒントン氏にこう投げかけると「私以外はね」とにやりと笑った。なぜヒントン氏は信念を貫けたのか。ヒントは彼の経歴にある。


 

今でこそコンピューター科学の権威だが、学部時代にケンブリッジ大学で実験心理学を学んだ。「私は常にヒトの脳の仕組みに興味があった」。好奇心に基づいた研究の重要性を訴える言葉は説得力がある。 AIの可能性をいち早く見抜いたのがグーグルだ。2012年夏、ヒントン氏を2カ月間研究所に招き、ヒントン氏はその経験で同社の研究者と働きたいと感じた。13年に加わり、彼に憧れる研究者がグーグルに集まる循環を生んだ。


 

翻って日本。ヒントン氏より少し上の世代に世界的なAI研究者がいたが、「冬の時代」を経て米国やカナダに研究で出遅れ、応用では中国にも差をつけられた。日本はAIが注目されて初めて巻き返しに動くが、ヒントン氏は基礎研究の重要性を説き、長年の蓄積が花開いたのは事実だ。日本はAIで失敗した教訓を生かさなければならない。


(清水孝輔、小河愛実)

  • 1970.01.01 Thursday
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