冨田所長は、人並みではだめだと説く

冨田所長は、人並みではだめだと説く

日本海に面した山形県鶴岡市。のどかな水田地帯にバイオ系スタートアップの聖地と呼ばれる「鶴岡サイエンスパーク」がある。独創的な技術を持つ6つの企業が誕生し、約500人の雇用を創出。先進的な拠点を生み出したのは約20年前、この地に足を踏み入れた1人の研究者だ。

 

「普通は0点」

 

慶応義塾大学先端生命科学研究所の冨田勝所長は、生命現象をコンピューターで解析する研究の先駆者だ。2001年、40代前半の若さで縁もゆかりもない山形にできた同研究所の責任者に就任した。

学生時代に人工知能(AI)に関心を抱き、米カーネギーメロン大学で博士号を取得。音声自動翻訳の研究で、当時のレーガン大統領から表彰も受けた。やがて人の全遺伝情報を解読する「ヒトゲノム計画」に触発され、日本に戻って慶大で教員を務める傍ら、医学の博士号も取った。

異色の経歴は、旧来の学問分野にとらわれない新たな研究スタイルを育んだ。「普通は0点」。研究所では「人並みはダメ」との方針の下、研究者や学生が奮起。血液からうつ病を診断する技術を開発し東証マザーズに上場したヒューマン・メタボローム・テクノロジーズなど独創的な企業を次々に生み出した。

たんぱく質を使って石油に頼らない繊維を開発するスパイバーの菅原潤一取締役兼執行役は「大学1年生で冨田さんと出会い、人生が変わった。失敗を恐れないことが大事だと教わった」と話す。

ローカルな成功物語にすぎないと軽視すべきではない。早稲田大学の牧兼充准教授は「『スター科学者』が一人行くだけでこんなに変わるのか、という典型」と指摘する。自らの研究だけでなく、周囲にも影響を与えて輝きを生みだす。そんなスター研究者の存在に、日本を衰退から救うヒントが隠れている。

「研究者はプロ野球選手やタレントのような存在」。NECの西原基夫最高技術責任者は指摘する。同社は19年10月、優れた業績をあげた研究者に上限なしで報酬を支払う制度を導入し、まず9人を選んだ。

 

動き出す企業

 

日本企業の研究開発はかつて「組織力」を強みとしていたが、非連続にイノベーションが生まれる今の時代は「個」の発想や突破力が不可欠。1人の挑戦が世界を一変させることもある。遅まきながら企業もスターの育成に動き出した。

現状は厳しい。米調査会社クラリベイト・アナリティクスは例年、優れた研究論文を複数発表し後続の研究に大きな影響を与えた著者のリストを公表している。いわば「スター研究者の指標」だ。14年版で日本はその数が世界5位だったが、19年版では11位にとどまる。首位の米国の約2700人に対し日本は100人と、圧倒的な差がある。

日本の大学などでは挑戦の機会が減り、スター研究者も生まれにくくなっている。「出るくいは打たれる」という風潮が強まって20年余り。スターを絶滅の危機から救えるか。個の可能性を見いだし、能力を引き出す試みが、日本の復権の鍵を握る。

 

新井重徳、生川暁、川手伊織、越川智瑛、駿河翼、竹内悠介が担当しました

  • 1970.01.01 Thursday
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  • 07:16
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