ドローン(小型無人機)で社会課題を解決するビジネスを模索する動きが日本で広がってきた。国は2022年度にも「有人地帯での補助者なしの目視外飛行(レベル4)」の実現を目指す方針で、規制緩和へのロードマップを示した。機体は中国勢に席巻されたが、人口減やインフラ老朽化など「課題先進国」の地で磨いたサービス力でビジネスを世界に向けて離陸できるか。

 

■北の大地はドローン実験で最適な地域

 

「離陸します」。操縦士が話すと、ドローンがふわりと浮上し、青空に向けて飛び立った。

調剤薬局大手のアインホールディングス(HD)と旭川医科大学(北海道旭川市)は19日、ANAHDと協力し、医師の指導を通じて処方された医薬品を、ドローンで患者の元にまで届ける国内初の実証実験を実施した。

ビデオ会議サービスを用いて、旭川医大の医師とアインHDの薬剤師が500メートルほど離れた場所にある老人ホームの患者に診療と服薬指導を実施。処方された医薬品をANAHDのドローンチームが患者の元まで約4分の飛行で無事に届けた。ドローンを用いた「非対面医療」の実現に向けて一歩を踏み出した。

国立社会保障・人口問題研究所によると、北海道の総人口は45年に約400万人と、今後25年で2割以上減る見通し。医療や物流の維持のため、北海道では企業や大学、自治体などにとってドローンのニーズは切実だ。ANAHDのドローン事業化プロジェクトを担当する信田光寿ディレクターは「産業ドローン実用化に向けたノウハウを蓄積するのに、北海道は最適な場所だ」と語る。

国は3月末、「小型無人機の有人地帯での目視外飛行実現に向けた制度設計の基本方針」をまとめ、22年度のレベル4の実現に向けた考え方や課題などを整理した。18年に「無人地帯における目視外飛行(レベル3)」の制度を整備したが、有人地帯での飛行に向けて、最適な規制に緩和するための道筋を示した。

 

 

 

 

■ドローン、有人地帯の目視外飛行には課題山積

 

レベル4が実現すれば、陸上輸送が困難な地域に生活物品や医薬品などを配送したり、高齢化が進む地域を巡回警備したりできる。基本方針には「小型無人機が産業、経済、社会に変革をもたらすためには、レベル4の実現が不可欠」と明記。7月には「空の産業革命に向けたロードマップ」を改訂し新たな個別分野で医療などを加えた。

ただ、レベル4の実現に向けたハードルは高い。基本方針も有人地帯の上空を飛ぶには、「社会的に信頼される手段として受け入れられることが必要」とした。機体所有者の把握やプライバシー侵害の対策など課題は山積する。カギを握るのは、具体的な社会課題を掘り起こし、実用化に向けての障壁を丁寧に取り除く産学官の連携だ。

北海道での医薬品配送実験は、その象徴と言える。北海道経済産業局が音頭をとり、ANAHDのほか、旭川医大やアインHD、旭川市の協力を取り付けた。産学官の連携で、国内初の取り組みの実現につながった。新型コロナウイルスの感染拡大に伴って規制緩和されたオンライン診療を活用できたほか、住宅密集地の公道をドローンで横断できたことなどだ。

ドローンの信頼を得るには、社会課題の解決に必要な手段として人々に認知してもらう必要がある。レベル4に向けたロードマップが示され、課題解決型サービスを軸に企業のドローンビジネスも活発に動き出した。

人口減や人手不足に着目したのは住友商事だ。2月、ドローン開発スタートアップのエアロセンス(東京・文京)と資本業務提携した。国内の建設現場では作業員の高齢化で人手が不足するなか、ドローンを使って作業を自動化し、生産性の向上につなげる。

 

ドローンを活用すれば、高齢化や人手不足で悩む建設現場の効率化につながる

ドローンを活用すれば、高齢化や人手不足で悩む建設現場の効率化につながる

 

エアロセンスはドローンで収集した画像データの解析や、ドローンの自律制御システムなどソフト開発力を強みとする。例えば、建設現場の測量では2.5秒ごとに撮影した画像を基に、人工知能(AI)が距離や高さなどを分析する。人力による測量よりも所要時間を3分の1から2分の1程度に短くできる。

住商は農業分野でもドローン開発のナイルワークス(東京・渋谷)と組み、19年10月に農業用ドローンをバッテリーとセットにして貸し出すサービスを始めた。タブレット端末で指示を出すと、完全自動運転で農場内に農薬を散布できる。

 

■ドローンの機体は中国が席巻、日本の活路は産業用途の機体・サービス

 

インプレス総合研究所によると、国内のドローンビジネスの市場規模は25年度に6427億円と19年度の4.6倍に拡大する見通し。そのうち、約7割をドローンを活用したサービスが占める。

ドローンビジネスでは機体とサービスに大別されるが、機体分野は中国のドローン大手のDJIが市場シェアの約7割を握るとされる。

 

 

 

ドローン関連の業界団体、日本UAS産業振興協議会によると、18年に世界で出荷されたドローンの機体数は400万機で、米国が150万機、日本は15万機だった。機体の内訳では趣味用途が9割で、産業用途は1割という。ドローンを用いた課題解決型のビジネスモデルを確立できれば、産業用途で世界市場を開拓できる余地は大きい。

中国勢が圧倒する機体分野でも風穴を開けようとする挑戦が始まった。

パソコンメーカーのVAIO(長野県安曇野市)は3月、ドローンの設計や製造を手がける子会社、VFR(東京・品川)を新設した。活路を見いだしたのは、産業用途のドローンだ。VFRの留目真伸社長は「産業用ドローンは用途別に細かな最適化が必要。環境変化のなかでも安全な機体が必要になる」と指摘し、「中国が先行するが、世界のドローン市場は黎明(れいめい)期で参入の余地がある」という。

パソコンの製造で培ったノウハウをドローン製造で生かす。「特に小型・軽量のドローンには、省電力や高い通信性能など総合的な技術が必要」(留目氏)と述べ、日本のパソコンメーカーの強みを生かせるという。留目氏は「日本のドローン産業を世界トップにしていきたい」と意気込む。

 

VFRは産業用ドローン開発のACSLと共同開発に取り組む

VFRは産業用ドローン開発のACSLと共同開発に取り組む

 

22年度のドローンの有人地帯への目視外飛行に向けて産学官はスタンバイに入った。制度整備などで先行する米国や中国などにどう対抗していくか。留目氏は「オープンイノベーション型で役割分担しながら産業を創り出していく」と話す。課題解決型サービスの実現に向けた産学官の連携が、ドローンビジネス飛躍の条件となる。

(札幌支社 久保田皓貴、企業報道部 坂本佳乃子、河端里咲)

  • 1970.01.01 Thursday
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