インドの無人探査機「チャンドラヤーン2号」が7日に月面への着陸に挑んだが、失敗した。着陸目前に通信が途絶え、墜落したとみられる。インドが目標にした月の南極付近は多くの水があると期待されており、月面開発の重要な拠点になる可能性がある。今回は失敗に終わったが、各国は高い関心を寄せている。



チャンドラヤーン2号は、ヒンディー語で「月への乗り物」という意味。インドの月面探査では、2008年に打ち上げたチャンドラヤーン1号に続く。前回は上空からの探査で、水分子が存在した痕跡を発見した。

2号が打ち上げられたのは7月22日。地球を周回しながら徐々に軌道を伸ばし、地球から約40万キロメートル離れた月を回る軌道に約1カ月かけて8月20日に到達した。探査機本体から切り離された着陸機「ビクラム」が南極付近に降下し、着陸後は探査車も月面に降ろして月の岩石などを詳しく調べる計画だった。

ビクラムは7日早朝、着陸を目前に大きく予定の軌道からそれはじめ、直後に通信も途絶えた。これまでのところ原因の詳細などは分かっていない。

月にはこれまで旧ソ連と米国、中国の3カ国が着陸に成功した。有人のアポロ宇宙船をはじめ多くの探査機が送り込まれている。しかしほとんどは降りやすい表側の赤道付近に着陸し、南極付近に着陸した探査機はまだない。

ロケット燃料にも

1月には中国が月の裏側に初めて探査機を着陸させて注目を集めたが、南極付近は裏側と表側の境界にあたり、着陸に適した平らな場所も少ない。「南極近くに着陸するのも簡単ではない」と宇宙航空研究開発機構(JAXA)技術領域主幹の星野健さんは説明する。

それにもかかわらず南極付近への着陸を目指すのは、南極や北極の周辺には、これからの宇宙開発に欠かせない水資源が豊富に眠っている、と期待されているからだ。アポロ11号が月に着陸した当時は、月は乾いた世界だと考えられていた。しかしその後、いくつもの探査機の観測データから月に水が存在するのは確実とみられるようになった。

なかでも南極や北極の周辺にはクレーターの影になって永久に太陽の光が当たらない場所がある。そうした場所は常に極低温に保たれていて、多くの水が凍ったまま存在しているのではないかと考えられている。JAXA名誉教授の的川泰宣さんは「水の存在がはっきりすれば、基地建設の戦略も具体的に立つ」と話す。

水は人が月で生活するために必要なだけでなく、ロケット燃料の原料やエネルギー源としても期待されている。水を分解すれば、燃料の液体酸素と液体水素が作れるからだ。月でロケット燃料を作ることができれば、地球から多くの費用とエネルギーをかけて宇宙に燃料を運ぶ必要がなくなり、月開発や火星を目指す探査の費用対効果は飛躍的に向上する。

ビジネスで月探査に参加しようとしている多くの民間企業の狙いも、この水資源の開発だ。まさに月開発ビジネスの中核といえ、各国も南極や北極付近の探査を2020年代前半に目指している。

データ収集は成功

インドの今回の月探査は、日本と無関係ではない。日本はインドと月探査で協力することで合意しており、2023年度を目標に共同で月の南極か北極付近への着陸を目指して探査機を打ち上げる予定だ。打ち上げは日本の次期主力ロケット「H3」を使い、着陸機はインドが担当するなど分担する。

着陸には失敗したが、チャンドラヤーン2号本体は月を回りながら月の精密な写真などのデータを取得している。こうした経験やデータは、共同探査にいかされるはずだ。

インドの宇宙開発の実力は急速に向上している。2014年にはアジアで初めて火星を回る軌道に無人探査機「マンガルヤーン」を送り込むことに成功。有人宇宙船も2022年までの打ち上げを目指して準備を進めており、米ロ中に続いて独自に有人宇宙船を打ち上げる4番目の国になるのは確実とみられる。的川さんは「インドはすでに宇宙先進国の仲間入りをしている」と話す。

日本はこれまで米国や欧州との国際協力に取り組んできたが、米国との力の差は大きく、欧州とは競合する部分も多い。インドとは補完できる部分が多く、星野さんは「今後の日本のパートナーとしてとてもよい相手」と期待する。

(編集委員 小玉祥司 氏)






レジ袋やペットボトルで社会的な関心が高まる海洋プラスチック(廃プラ)問題がアパレルに波及してきた。衣料品に含まれるポリエステルなどが洗濯や廃棄で粒子となり、魚などの海洋生物に取り込まれていることが明らかになってきた。欧米を中心に消費者は環境に配慮した企業の姿勢を重視している。日本のアパレルや素材メーカーも対応商品や技術の開発を迫られている。


「洗濯時に毛が落ちにくい素材を見せてほしい」。帝人子会社で繊維素材を開発する帝人フロンティア(大阪市)に、欧米のアパレルやスポーツメーカーからこんな要望が寄せられている。

同社が開発したのは、繊維の抜け落ちを抑えるポリエステル素材。防寒着として知られるフリースは保温性を高めるために起毛するが、洗濯時に繊維のくずが流出しやすい。糸を輪のように織り込むことで毛が抜け落ちにくくした。フリース素材の保温性ややわらかい肌触りは保ち、「アパレルだけでなく寝具などでも展開できる」(同社)。2019年度に50万メートルの生地の販売を目指す。

プラスチック素材による海洋汚染問題は、発生源としてレジ袋やペットボトルなど目に見える廃棄物に関心が集まる。衣料品の洗濯などで抜け落ちるマイクロプラスチックと呼ばれる繊維は直径が5ミリメートル以下の粒子。影響が本格的に指摘されたのはここ数年のことだ。

急速な人口減少が公共サービスの見直しを迫っている。通信大手や地方自治体は過疎地を含めた一律のサービスを維持する負担に苦しみ、識者からはコストを踏まえた改革を促す声が上がる。

沖縄県の石垣島の東に浮かぶ小島。近くの電話局との間をつなぐ海底ケーブルで2015年、台風15号による断線が起きた。NTT西日本は長崎県から専用船を派遣して半年がかりで修理した。この島には固定電話の契約が2回線しかない。そのサービスを維持するために5千万〜6千万円の修理費がかかった。

国内の山間部では様々な要因で断線が起きる。倒木や積雪、落雷による切断が多く、キツツキがつついたり猟銃の弾が当たったりして切れることもある。どんなに利用者の少ない地域でも、NTT東日本・西日本の復旧チームは駆けつける。

固定電話はNTT法が「全国での公平かつ安定的な提供」を義務づけるユニバーサルサービスだ。どこでも利用者の求めに応じて電線を引いて維持する必要がある。津々浦々の通信網を維持するコストはNTT東西の収益を圧迫し、2018年度の両社の固定電話事業は360億円の赤字だった。

「電線の再敷設が著しく経済合理性を欠く地域では緩和してほしい」。たまりかねたNTTの要望を受け、総務省は20年の通常国会に改正法案の提出をめざす。過疎地では電線のかわりに携帯電話の電波を使うことを認める。NTT東西は投資を年数十億円減らせる。

固定電話の赤字の一部は携帯大手が補填し、携帯料金に月3円の原資が上乗せされている。赤字が減れば上乗せは減る。NTT東西が全国の光回線サービスなどの料金を下げる余地も広がる。

すでに米国、英国、韓国は電波による代替を認めた。有線よりも音声の伝達が遅いが、大差はない。通信品質のわずかな低下により、全国の利用者に恩恵をもたらす。

総務省は日本郵便が人手不足などを理由に求めた土曜配達の廃止も認める方針だ。これも北欧や韓国が先行する。

人口減で効率の低下した公共サービスを漫然と続けることはできないとの声が経営者や研究者の間で広がる。政府の経済財政諮問会議の民間議員は4月の会合で「水道、電力・ガス、郵便、通信などのユニバーサルサービスのコストを明らかにすべきだ」と注文した。

松村敏弘・東大教授は「全国一律に低廉な料金で、という発想がそもそも正しいのかを見直す必要がある」と語る。地域の実情がわかる自治体がサービスの内容や料金を選ぶ柔軟さがあってもよいというのが同教授の考えだ。「高齢者らの見守りに必要な光ファイバー通信を優先し、他のサービスは低下を受け入れるといったメリハリをつけるべきだ」と提案する。

給水時間や水質などサービスの質を落としにくい水道。静岡市は2020年4月に料金を平均14.8%も引き上げる。総延長2600キロメートルに達する水道管の老朽化が進み、更新を加速する必要があるためだ。住宅がまばらになった地域もあるが、今と同じ場所に引き直す。

同市は「1軒でもあれば水道管を引くのが行政の役目だ」と理解を求めつつ、長期的な負担の抑制策にも取り組む。公共施設や商店を中心部に集め、市民の住む場所も誘導する「コンパクトシティー」だ。居住地域が狭くなればインフラ維持のコストも削減できる。

公共サービスの内容や対象地域の今ある姿を絶対視せず、柔軟に見直すことなしに人口減時代に活力を保つのは難しい。

「残業ゼロ、1日8時間勤務を徹底しています!」。7月28日、東京・池袋で保育士向けの転職イベントが開かれた。現役の保育士など約160人が転職先を探し、保育所の採用担当者が熱心に声を掛ける。イベントの活況は、今の職場に不満を抱える保育士が多いことも意味していた。

「ブラック保育所」。こんな呼ばれ方をされる保育所がある。保育士に十分な給与が支払われず、自宅への業務の持ち帰りも常態化している施設だ。保育所の増設が進む裏で、全体の一部だが、保育士が虐げられる問題が深刻になっている。

2018年11月30日、なとりおひさま保育園(宮城県名取市)で保育士が集団退職した。残業代未払いやパワーハラスメントが横行し経営者に訴えても改善されなかったという。「これ以上、ここでは働けません」。7人の保育士が辞めた。

運営側との対立で保育士が辞職するケースは後を絶たない。東京都中央区のある保育所では園長を含む約10人の職員が一斉退職し、3月9日に運営会社が保護者に謝罪した。娘を通わせる30代の会社員男性は「また同じことが起きるのではないか」と不安げだ。

「同僚の保育士が大勢やめてしまった。強いストレスを感じます」。介護・保育ユニオンの執行委員、池田一慶(39)の元には連日、20〜30代の保育士の女性からこんな相談の電話がくる。

ユニオンの母体はブラック企業対策を目的に2014年に発足した労働組合「総合サポートユニオン」。問題が増える保育の現場でも専門組織をつくった。「8割以上の保育所で残業代未払いなど労働基準法違反がある」。保育士の団体交渉を担当している池田は明かす。

仕事場は標高1000メートル――。山頂など自然の中や都心の銭湯など、癒やし空間で仕事をする人が増えている。登山などの趣味を満喫しつつ、仕事の集中力が高まり、新たな発想も生まれやすいと人気だ。普段知り合えない人との出会いもあって、仕事の幅も広がる。仕事と休暇の境目が薄れつつある。



ゴンドラに揺られること8分、北アルプスの絶景が一望できるデッキの近くに山頂シェアオフィスがある。標高1289メートル。ブナ林の中の机で仕事をするのは、新潟県から訪れた40代女性。小学校の先生だ。スマホで調べものをしながら授業の準備に励む。「自然の中は気持ちがいい。自宅や近所のカフェに比べ仕事がはかどる」

8月中旬、東京などは35度以上の猛暑日だが、森の中は25度とひんやり涼しい。「仕事の後は趣味で始めたマウンテンバイクで山を下る」と笑顔を見せる。

女性が利用するのは、白馬観光開発(長野県白馬村)が7月に開設した白馬岩岳マウンテンリゾートの山頂シェアオフィス「森のテラス」。ウッドデッキのアウトドア・ワーキングスペースだ。Wi-Fi環境などを整えた。近くには人気ベーカリーもありパンやコーヒーが楽しめる。

「登山を楽しむ人も多い。自然の中で仕事をする方が圧倒的に生産性があがる。日常の職場と異なる場所なので、チームで来ても新たな発想が生まれやすい」と、和田寛社長は話す。

ゴンドラ料金は往復1800円。山頂オフィスは無料で利用できるが、開設は期間限定。今年は11月10日までの予定だ。

都心にも癒やし空間併設のコワーキングスペースが登場している。極楽湯が運営する「RAKU SPA 1010 神田」だ。JR御茶ノ水駅から徒歩5分。平日午後にもかかわらず、社会人や学生らが吸い込まれていく。RAKU SPAコース(1460円)食コーナーのほか、ハンモックもあるくつろぎスペースを利用でき、漫画・雑誌5000冊以上が読み放題だ。

4階のコワーキングスペースで、館内着でリラックスしながら取引先と打ち合わせをするのは、飲食店などを経営する堀越元太さん(37)。「仕事に行き詰まったらひとっ風呂浴びれば集中できる。今後はここを仕事場にしたい」と話す。

海岸近くの場所もある。江ノ島電鉄稲村ケ崎駅徒歩5分の「Think Space鎌倉」だ。海と山に囲まれた自然豊かな場所にある陶芸家の作業場をリノベーションした。精神を穏やかに整える環境を重視。土間や囲炉裏もある和モダン空間で、建設的な対話を生みやすくした。

「個人のほか10人程度での企業利用が増えている」(Think Spaceの岩浜サラ代表)。お試し利用は1日(午前10時〜午後7時)3000円(税別)。

自然の中で仕事をする環境を求めて、2拠点生活を始めた人もいる。東京と長野を月4〜5回往復するのは、ウェブ・映像製作会社を経営する栗原大介さん(44)。趣味の登山やキャンプを楽しむため月の半分は長野で仕事をする。

主な仕事場は、八ケ岳山麓の「富士見 森のオフィス」(長野県富士見町)。キッチンや食堂もあり、他の利用者との交流も活発。地元案件も請け負え、地元の人を巻き込んだイベントも企画する。

コワーキングスペースの動向に詳しいプロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会(東京・中央)の平田麻莉代表理事は「当初の作業場という役割から、つながりを得られる場、託児など機能性が加わってきた。最近は癒やしや気分転換という新たな価値がキーワードになりつつある」と指摘する。

不動産サービス大手CBRE(東京・千代田)によると、共用オフィスは2017年以降急増中で都内だけで355カ所(2019年9月)ある。「企業も人材確保のため働きやすい環境づくりを急いでおり、ネット環境があれば働く場所は問わなくなっている」(鈴木孝一リサーチシニアディレクター)

時間や場所にとらわれない働き方が広がる中、仕事の場が自然や癒やし空間へ広がりそうだ。

(杉原梓)



「1メートル四方に700本。瀬戸内海で盛んなカキ養殖のパイプが漂着している」。一般社団法人「E・Cオーシャンズ」(愛媛県八幡浜市)で代表理事を務める岩田功次氏(58)は浜辺を見つめ語気を強める。海洋プラスチックごみによる環境汚染が世界中で注目を集めている。岩田氏は2016年から、愛媛近海の無人島や陸路では行けない浜辺など、秘境に漂着したプラごみの清掃活動をけん引する。

パイプのほかにも漁業ブイ、空の食品容器にペットボトル……。愛媛県伊方町の佐田岬半島のある浜には、幅100メートル以上にわたって漂着したプラごみが散乱する。地面を踏みしめるとクッション性があり、地下1〜2メートルまでの堆積が想像できる。「夏場は台風などで山口県側に流れるから、これでも随分きれいだよ」と岩田は苦笑する。

活動を始めたきっかけは2016年、佐田岬で人が寄りつかない浜辺に、大量のプラごみが漂着していることを知人に教えられた。岩田自身、20代から清掃活動への参加など環境保全に取り組んできたが、海洋プラごみの実態は知らなかった。

船舶免許を有しており独自に船を使って周辺を調査すると至るところで汚染が見つかった。瀬戸内海の入り組んだ地形から、外洋に流出せず滞留していることがわかった。「海水浴場のごみは目立つから拾う人がいる。無人島のプラごみは誰も気付かない」。微細なマイクロプラスチックとなって生態系や人体へ影響するのを防ぐため、あえて一般の人が行けない秘境を活動の中心に据えた。

時に岩礁が隠れた危険な水域に船で接近しボートで上陸する。プラごみの堆積した足場は不安定で転倒の危険と隣り合わせ。ブイはマムシの格好のすみかで注意が必要だ。岩田は参加者に対して時給1450円を支給する。「仕事を休んで継続参加してもらうには必要なこと」と説明する。

「自分の体が動くのはあと10年」と話す岩田が目指すのは、後進が活動に専念しながら生活していけるような仕組みづくりだ。現在は活動資金をトヨタ自動車など企業や自治体からの助成金と、本業のデザイン業での収入に頼っている。

個人と法人合わせて20人強の会員数を、全国で1000人規模にまで増やせれば、2000万円以上の年会費が見込めて雇用ができる。各地での講演など啓発活動にも注力する方針だ。

法人化から1年で延べ約270人が清掃に参加し、2トントラック約40台分を回収した。その中で海外からとみられるごみは1%にも満たず、ほとんどは国内で投棄されたものだという。

「みんな知らない、誰も行かない、気付かない。生物は黙って死んでいくだけ。そんな環境を変えたい」と、きょうもまたごみを拾う。=敬称略

(棗田将吾)



厚生労働省は6日、希望しても認可保育所に入れない待機児童の数が2019年4月1日時点で1万6772人だったと発表した。2020年度末の待機児童ゼロを目指すなかで、2年連続の減少となった。もっとも、10月に始まる幼児教育・保育の無償化の影響は読み切れず、待機児童に含まない「隠れ待機児童」も約7.4万人いる。保育士不足などの課題もあり、共働き世帯が安心して子どもを預けられる環境はまだ十分とはいえない。



「待機児童解消は安倍政権の最重要課題の一つとして取り組んできた。引き続き取り組みを推進する」。6日、根本匠厚生労働相は閣議後会見で強調した。

19年4月1日の待機児童数は18年同期に比べ3123人(16%)減。これまで最も少なかったのは2007年の1万7926人だった。厚労省はその後、待機児童の定義を見直したため単純比較はできないが、1994年の調査開始以降で最少となった。待機児童全体の6割を占める都市部で、企業主導型保育所を含む保進んだ。

待機児童を年齢別にみると、0〜2歳児の割合は0.7ポイント低下の87.9%となった。一方で3歳以上は0.7ポイント上昇の12.1%になった。

10月の幼保無償化は0〜2歳児がいる世帯では住民税が非課税の低所得世帯のみ保育料を無料にするのに対し、3歳以上の子どもでは原則として全世帯で保育料が無料になる。「無償化でどれだけ申込者数が増えるかはわからない」(厚労省)といい、3歳以上児の申し込みが増え、一部の地域で待機児童が増えた可能性は否定できない。

待機児童の定義に当てはまらない「隠れ待機児童」の数も増加した。18年の同時期に比べ6028人(9%)増の7万3927人となった。隠れ待機児童とは、認可保育所に入れずに不本意ながら保育料が高い認可外の保育所に通っている例などだ。

表面上は待機児童数にカウントされないこうした児童の受け皿を整えることも課題だ。ただ根本厚労相は「まずは待機児童解消に向けて取り組む」と、隠れ待機児童対策については明言を避けた。

厚労省は今回の調査結果を踏まえ、自治体の状況を3つに分類。2020年度末の待機児童ゼロ実現に向け、今秋にも各自治体の保育所の整備計画などについて個別に聞き取り、必要に応じて指導する方針だ。特に今回、自治体の見込みを上回って待機児童数が増加した123自治体には重点的にヒアリングを実施する。

例えば今回大幅に増えた福岡県福津市やさいたま市では、新興住宅地の開発が進み若い世代の流入が市の想定以上に加速している。東京都東村山市では2018年に待機児童数を大きく減らしたことが潜在的な保育需要を呼び起こし、申し込みが急増したという。こうした個別の状況を聞いた上で、今後の保育所増設の計画などを助言する。

働く女性の数は6月に初めて3000万人を超え、子育て世代の25〜44歳の就業率も2018年に76.5%と5年前から7ポイント上昇した。共働き世帯が増えるなか、安心して子どもを預けられる環境づくりは、労働力を確保する上でも欠かせない。




学校教員の業務負担をIT(情報技術)で軽減するサービスが広がっている。教育関連製品を手掛ける内田洋行は教員の勤怠情報をICカードなどを使ってクラウド上で打刻できるシステムを開発した。ソフトウエア開発のサイボウズは教員の業務用ソフトをクラウドで提供する。教員の長時間労働などを受けた「働き方改革」の需要の高まりに対応する。

内田洋行は「校務支援システム」を8月末から、まず兵庫県姫路市への提供を始めた。同市の小中学校の約3千人の教員の利用を見込む。今後3年間で100自治体以上への導入を目指す。

教員自身が勤務時間をクラウド上で打刻し、出張や休暇の申請もできる。ICカードやQRコードを使いワンタッチで入力できる機能も提供。現在は多くの学校で教員の勤怠管理が企業などに比べて徹底されていないが、同システムでは勤務時間や日数を日常的に把握でき、長時間労働の抑制などにつながるという。

児童・生徒のデータ管理にも使える。従来は紙やエクセル上の数字で把握していた生徒の成績や健康診断の結果を、グラフなどで「見える化」して表示。生徒別の苦手分野などを効率的に把握するのに役立つという。

サイボウズは4月から北海道釧路市の小中学校4校で、サービスの試験提供を始めた。同社が提供するクラウドサービス「kintone」を応用したシステムで、出退勤情報をはじめ、職員名簿や月間予定などを管理できる。教員自身が必要とする機能だけを選んで自分専用のウェブページに表示でき、使い勝手が良いという。釧路市での試験導入の成果を踏まえ、全国展開を検討する。

このほか、ベネッセホールディングスがソフトバンクと折半出資で設立した教材会社のクラッシー(東京・新宿)は1月、教員向けの業務支援システムを提供するEDUCOM(愛知県春日井市)を子会社化した。EDUCOMは全国に拠点を持ち、地域別に異なる校務に対応したシステムを提供している。

教員は授業や生徒指導以外にも、部活動や保護者対応など様々な業務に時間を取られ、負担が重い。教員志望者の減少の一因にもなっている。文部科学省の2016年度の調査では教員の平日1日当たりの学内勤務時間は小中学校ともに平均11時間を超え、10年前に比べて30〜40分伸びた。一方で教員の勤怠管理などの仕組み作りは遅れている。




教育サービス会社が英語指導を重視した学童保育を増やす。英会話教室大手のECC(大阪市)は2020年春から「日本語禁止」の学童保育を全国展開する。4年間で高校生レベルの英語力を目指す。学習塾のウィザスも20年3月までに現在よりも5割増やす。2020年度から小学校で英語が正式教科になる。子供の英語力を高めたい共働き世帯などの需要を取りこむ。

学童保育は小学校の放課後に児童を預かるサービス。ECCは英語を母国語とする外国人とバイリンガルの日本人をスタッフとし、原則としてすべて英語で会話する学童保育を関西で3カ所運営している。2020年春から首都圏などでも開設し、5年以内に100カ所とする方針だ。

児童は学校の宿題をするほか、実用英語技能検定(英検)対策を含めた1時間のレッスンを1週間に3回受ける。英語漬けにすることで、4年間で高校中級程度の英検準2級に合格する水準の英語力を身につけられるようにする。

ECCは約2400の幼稚園・保育園に英語教育カリキュラムを提供している。学童保育は提供先の幼稚園などの空きスペースを借りて開く。基本料金は週5日の利用で月額4万円を想定する。企業が運営する一般的な学童保育の目安は同6万円程度とされる。ECCは間借りで費用を抑え、通いやすくする。

関西中心に学習塾を運営するウィザスは、英語特化型の学童保育を3月時点で16カ所持つ。入会3カ月後にすべて英語でコミュニケーションし、平日に一日40分ほど英検対策をする。2020年度までに首都圏や関西などで8カ所開く。基本料金は週5か利用で5万5000円に設定する。




トロント大学名誉教授のジェフリー・ヒントン(71)が人の脳の仕組みをまねた深層学習(ディープラーニング)を駆使して人工知能(AI)革命を起こした2012年。世界のAI研究者を驚かせた出来事がもうひとつあった。米グーグルがコンピューターに猫の顔を認識させることに成功したのだ。

■コンピューターが猫の顔を認識



人間と違い、コンピューターが猫を猫と断定するのは簡単ではない。グーグルはユーチューブの動画から1000万枚の画像データを取り出して、AIに猫とは何かを学ばせた。ここにもディープラーニングの理論が使われていた。

グーグルが「AI大国」をめざし本腰を入れ始めたのは、この2年前。きっかけはグーグル創業者、ラリー・ペイジ(46)と2人のAI研究者との出会いだった。

その1人がスタンフォード大学教授だったセバスチャン・スラン(52)。2005年に米国防高等研究計画局(DARPA)主催の自動運転車の賞金レースで優勝。実力を買ったペイジが2010年にグーグルにスカウトした。

誘い文句は「ムーンショットに挑戦しないか」。ペイジが自動運転のハードルの高さを、アポロの月面着陸計画のキャッチフレーズになぞらえたことを、スランは今も覚えている。

スランはスタンフォード大に籍を置きつつ、その年にグーグルが設けた秘密組織「グーグルX」のトップとして、AIを使った自動運転技術の開発を進めた。

■2人の立役者

スタンフォード大のスランの隣の部屋でAIを研究していたのがアンドリュー・ング(43)。2人は米東海岸にあるカーネギーメロン大学を経て、西海岸に移ったという共通項を持つ。

ングは当時、こんな思いを強くしていた。「これからのAI研究はいかに大量のコンピューターを使うかがモノを言う世界になる」。グーグルの世界最先端の設備はまさに最適な環境だった。

2010年3月のある日、2人は夕食をともにする約束をしていた。スランはそこにペイジを誘った。ングは初対面のペイジに思いを伝えようとプレゼン資料を用意していた。

3人が腰を落ち着けた高級日本料理店。パソコンを取り出す雰囲気ではないと感じたングは、ペイジに強い口調で語りかけた。

「グーグルが持つコンピューターを駆使して巨大なニューラルネットワークを築くべきです」。こう言うとAI大国への野望を持つペイジは関心を示した。「提案書を書いてくれ」。後日、ングは6ページの書類をまとめてペイジに送った。これがグーグルのAI研究機関「グーグルブレイン」の設立へとつながる。

ングがペイジに出した6ページの提案書の作成を手伝ったのがエンジニアのジェフ・ディーン(51)だ。ディーンはグーグルにある、エンジニアが就業時間の20%を好きなプロジェクトに使える、いわゆる「ルール」を使ってAIを研究していた。だがングとともに次第にグーグルブレインにのめりこんでいく。

グーグルのAI集団に異才が集まり始めた。

猫の顔を識別する手法は、ングのもとにいたインターン生のアイデアだった。参考にしたのはヒントンの論文だという。ングもヒントンから強い影響を受ける。「ジェフを『AIのゴッドファーザー』と呼び始めたのは実は僕」。ングは明かす。グーグルは2013年にヒントンもフェローとして招きAIの研究を強化していく。

■日本のスタートアップに触手

グーグルはAI大国の実現の過程で、日本のスタートアップにも手を伸ばした。

2013年、グーグルはヒト型ロボットの開発で知られる東京大学発スタートアップ「SCHAFT(シャフト)」を買収。AIの頭脳を持つロボットの開発がねらいだった。

シャフトは東大の研究者だった中西雄飛(37)と企業再生を手がけた経験を持つ加藤崇(40)が2012年に創業した。当初、中西らは「AKB49」と名付けた女性ヒト型ロボットを実用化したいと考えていた。

「誰がこれにお金を出すと思いますか」。加藤が問いかけると、中西は答えた。「秋元康さんかアラブの石油王でしょうか」。結局、より地に足のついた、災害時に人間の代わりとなる作業ロボットの開発へとカジを切った。
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