国の補助金を受けて整備され、自治体が耐震性を調査した河川管理施設や下水道施設などの防災施設のうち、約6割で電気設備の耐震性を調べていなかったことが会計検査院の調査でわかった。検査院は「電気設備の耐震性が確保されていない場合、地震発生時に河川防災施設の機能が十分に発揮されないおそれがある」として国土交通省に改善を求めた。

河川管理施設とは水門や雨水排水ポンプ場など。建屋や水門、ポンプなどで構成され、制御装置や停電時のための自家発電装置などの電気設備が設けられている。水門は災害時、水位が上がった本流から支流への逆流を防ぐために閉じたり、雨水を排水するために開けたりして防災上の重要な役割を持つ。



検査院が調査の対象としたのは、国の補助金で整備され、2018年度末までに自治体が耐震性を調査した9県38市町の272の防災施設。その結果、8件21市町の158の防災施設(補助金は約945億円)で電気設備の耐震性を調べていなかった。

国交省が自治体に対し、指針で防災施設本体の耐震性の調査方法は明確に示していたが、電気設備の調査方法は示していなかったのが、調査の未実施の原因とみられる。

例えば、三重県は志摩市を流れる前川の河口部に1998年、津波や洪水の被害を軽減するため「鵜方水門」を設置した。南海トラフ巨大地震の被害が想定されていることから、県は2012年に水門の耐震性を調査し改修工事をした。しかし、水門を稼働させるための制御装置や自家発電装置の耐震性は調べていなかったという。

県河川課の担当者は「電気設備の耐震対策は国から明確な指針が示されておらず、どのように対応したらいいのか分からなかった。今年中に耐震性の調査にとりかかる予定で早急に対応したい」と話している。

検査院の指摘を受け、国交省は今年9月、自治体に対して防災施設の電気設備についても耐震性を調査する必要性を伝達している。

一方、自然災害で決壊すると人的被害が生じる恐れがある「防災重点ため池」などについて、23府県が国の補助金を受けて耐久性などを調査した約1万カ所を検査院が調べたところ、約4割で危険性の判定が不十分だったことも判明した。

国の指針では「200年に1度に起こる洪水」が基準だが「50年に1度」にするなどしていた。改修が必要なため池が見逃されている可能性があるという。

ODA効果は不十分 給水施設未使用 検査院指摘

主に発展途上国を対象に、インフラ整備や人道支援などを実施する政府開発援助(ODA)を会計検査院が調べた結果、約20億円の事業で整備したソロモン諸島の給水関連施設が全く使われていないなど、十分に効果を発揮していないものがあったことがわかった。

検査院は10カ国の146事業を抽出調査。返済義務を課さずに資金を提供する無償資金協力で実施したソロモン諸島の給水事業では、水の濁りを改善する施設を整備したが、既存の送水管が漏水していたため、施設経由では目的地まで水が届かなかったという。

施設は2014年の完成直後に使われなくなり水質も改善されなかった。国際協力機構(JICA)が計画時に送水管などの状況を見落としていたという。

海上監視目的で2015年にベトナムに提供した中古船3隻(調達額計約2億円)は、少なくとも3年以上使われずに、造船会社の岸壁に係留されたままだった。また、約110億円の有償資金協力で2008年に建設したインドネシアの下水処理場は、処理後の水質が目標値に達していなかった。

〔共同〕

首都圏の自治体が児童をたばこの煙から守る取り組みを強化している。7月に学校施設内の禁煙を定めた改正健康増進法が施行され、望まない受動喫煙を防止するための取り組みは「マナー」から「ルール」へと変わった。自治体は児童の体内に取りこまれたニコチン量を可視化したり、学校周辺まで禁煙エリアに指定したりして、地域の大人の自覚を促している。

千葉市は10月10日、若葉区の小学校全20校の4年生を対象に、希望者を募って受動喫煙の影響を調べるモデル事業を始めると発表した。尿検査でニコチンが体内に取り込まれてできる「コチニン」の含有量を測り、過去数日の受動喫煙の影響が分かる。尿検査に合わせ、教師らが煙が人体にどのような影響があるかを伝える授業もする。

4カ月児検診に併せて実施しているアンケートによると、若葉区の父親の喫煙率は37%。市平均を11ポイント上回り、突出して高い。千葉市はまず同区の保護者に意識改革を促し、その後全区へと水平展開する。熊谷俊人市長は「屋内の受動喫煙に対し、国民意識が追いついていない。市民理解を広めるためには影響を可視化することが大事だ」と指摘する。

埼玉県熊谷市は2007年から児童の「コチニン」を測り、着実な成果を上げた。市立小学校に通う4年生を対象に検査を実施しており、2018年度コチニン濃度が高かった児童は全体の2%あまり。2007年度比で10ポイント低下した。

同市は濃度が高かった場合、保護者に小児科を受診するよう促している。担当者は「数値で受動喫煙の有無が明確に分かるため、親の禁煙・分煙に対する意識付けが進んだ」と胸を張る。

千葉県君津市も今年度から、小学4年生に対する尿検査を実施する。予算250万円を確保し、市内の小学4年生550人に対し一人4000円の検査料を負担する。

日本禁煙学会によると、親らの影響で受動喫煙を受けた小学生以下の児童は、受動喫煙を受けていない児童と比較して1.5〜2倍、気管支炎や肺炎になりやすい。小児白血病やリンパ腫、脳腫瘍の確率は2〜5倍に増えるという。

禁煙学会の担当者は「病気の可能性が高まるのはもちろん、体の小さい子どもは目まいなど受動喫煙による一時的な症状も大人より早く現れやすい」と語る。

児童を受動喫煙から守るため、踏み込んだ条例を施行する動きもある。東京都調布市では学校や児童福祉施設のほか、周囲の道路まで禁煙の対象エリアとして条例に明記した。学校の敷地内のみを禁煙とする国が施行した改正健康増進法よりも厳しい内容だ。

調布市の担当者は「条例策定に向けた検討会では、通学路での受動喫煙に関する問題意識も多く上げられた。市内が会場となっている東京五輪・パラリンピックも控える中、早急に対策を打ちたかった」と語る。

日本禁煙科学会理事長を務める京都大大学院の高橋裕子特任教授は「児童に主眼を置いた受動喫煙対策は世界的にも珍しい。社会の理解を得やすく、自治体としては比較的簡単に政策をまとめることができる点で画期的だ」と語る。今後首都圏の各自治体の取り組みが成果を出せば、全国的な広がりにつながりそうだ。(出口広元)

■受動喫煙
 世界保健機関(WHO)によれば、受動喫煙で死亡する人は年間100万人。うち5歳未満の児童は6万人に達するという。
 禁煙ムードの世界的な高まりや東京五輪・パラリンピックを控え、政府は2018年7月、改正健康増進法を成立させた。同法は段階的に施行され、2019年7月には学校や病院の敷地内が禁煙となった。全面施行は20年4月。以降は飲食店も原則禁煙となる。
 政府の対応を受け、首都圏の各自治体でも取り組みが広がっている。千葉市は2020年4月から改正健康増進法よりさらに規制内容を強化した独自の受動喫煙防止条例を施行する。従業員を雇う飲食店は店舗面積を問わず原則禁煙とする。

強い神経毒、東京港で確認 繁殖力高く根絶は困難

南米原産で強毒を持つヒアリが国内に初めて定着した恐れがある。10月、東京港青海ふ頭で働きアリが約750匹、女王アリも約50匹確認された。巣ができてから少なくとも数カ月たっており、羽のある女王アリが周囲に飛んで新たな巣を作っている懸念がある。海外の事例をみると一度定着してしまうと根絶は難しい。政府は対策を急ぐが、防げるか瀬戸際の状況だ。



ヒアリは体長2.5〜6ミリメートル程度。小さいが慌ただしく動く性質があり、日本の在来アリには見られない繁殖力と攻撃力が特徴だ。

女王アリは雄と交尾した後、1日で1000個以上産卵する力を持つ。年間では25万個にも及ぶ。数キロ先まで飛ぶことができ、飛び降りた地点で産卵し、そこで巣作りを始める。日本の在来アリではまれなドーム状のアリ塚を作り、半年で最大1万匹程度まで一気に増える繁殖力がある。

アリ塚が目立つようになるまでは地面深くに巣を作っているため、潜伏期間中は地面からでは動きが見えづらい。国立環境研究所の生態リスク評価・対策研究室長の五箇公一さんは「気付いた時には女王アリが周囲に拡散し、もう手遅れということになりかねない」と指摘する。

米で数十人の死者

攻撃力も脅威だ。働きアリは尻の部分に針を持ち、「アルカロイド」という成分を敵に注入する。微量でも動物の神経を侵す毒で、人の場合、刺された瞬間に火で焼かれたような激しい痛みを感じることが特徴だ。

アレルギー体質の人は、ハチに刺されたときと同じように、血圧の低下やじんましんがでたり、意識がもうろうとしたりする「アナフィラキシーショック」に襲われることもある。ヒアリが定着した米国ではこれまでに少なくとも数十人の死者が出ている。

五箇さんは「アマゾンの生きるか死ぬかの生息環境で暮らしているため、子孫を残し生き延びる力が高い」と説明する。南米アマゾンにはヒアリの天敵である「ゾンビバエ」と呼ばれるノミバエがいたり、ほかのアリなどとの激しい生存競争があったりする。日本はそうした環境ではなく、被害が広がる可能性もある。

ヒアリの被害は人間や動物だけでなく、インフラにも及ぶ。熱を好む性質があり、様々な電子製品の内部に集団で入り込む。海外では信号機や空港の着陸灯を故障させた例もある。また電線をかじり、ショートさせ火災の原因となることもある。家畜などの被害と合わせて米国では、年6000億〜7000億円の被害が生じているという報告がある。

世界の貿易が活発になるにつれ、ヒアリは各国で問題となっている。船や飛行機のコンテナに紛れ込み、2000年代以降、オーストラリアや中国、台湾など南米から遠く離れた場所でも発見されるようになった。ヒアリが定着した国では莫大な費用を投じて駆除を進めているが根絶には至っていない。

徹底駆除が急務に

唯一根絶に成功したニュージーランドは、比較的涼しい気温のため巣の成長が急速でなく、さらに早期に徹底駆除したことが奏功したといわれる。温暖な日本は、何としても早期に対策をする必要があるわけだ。

今回見つかったのは、各国から貨物船が寄港する青海ふ頭のコンテナ置き場で、地面のコンクリートの継ぎ目にたまった土からヒアリが出入りすることが確認された。多数の女王アリと働きアリからなる「コロニー」と呼ばれる集団がすでに形成されていた。

「定着すれば日本社会に大きな影響が出る。徹底した防除を進める」。環境相の小泉進次郎さんはヒアリ発見直後の10月18日の記者会見で強調した。政府は21日に緊急の閣僚会議を開き「次元の異なる事態の発生が確認された」として最大限の警戒を呼びかけた。東京都も25日に対策会議を開き、住民に注意を徹底するように念を押した。

見つかった場所から半径2キロメートル圏内には学校や公園もある。環境省は東京都などとも連携してアリのエサを地面に置き、ヒアリの有無を調べる調査などを11月末まで重点的に進めている。

国内のヒアリは17年に神戸港で見つかって以降、すでに14都道府県で発見されている。注意を怠ればいつ定着してもおかしくない状況だ。ヒアリとの水際での攻防戦に終わりは見えない。

(安倍大資氏)

体験会、声掛け合って連携


日本ブラインドサッカー協会が実施している競技の体験会(10月、東京都新宿区)

2020年東京パラリンピックを来夏に控え、ボールから鳴る音を頼りにプレーする視覚障害者向けの「ブラインドサッカー」の競技団体が、平日夜に実施している体験会が好評だ。目隠しして視覚に頼らないことで、周りの人とのコミュニケーションの重要性を学ぶきっかけにもなり、研修に取り入れる企業が年々増えている。

「こっちです」「もう少し右!」。東京都新宿区の多目的ホールで開かれた体験会。アイマスクをしたキッカーがボールをコーンに当てる練習中、アドバイスをする参加者の声が響いた。

ブラインドサッカーは1チーム5人で、キーパー以外は目隠しをする。フェンスで囲んだフットサルコートを使用し、ボールからは鈴のような音が鳴る。2004年のアテネパラリンピックから正式種目に採用された。

月に数回開かれる体験会は1回2時間ほど。輪になった数人がボールを投げて回し、内側にいる見えない状態の人が音や指示を頼りにボールを触りに行く。

10月中旬に参加した東京都中野区の会社員、川本拓也さん(25)は「周りの人の助けがあると全然違う。自分から伝える大切さを改めて学んだ」。大阪府茨木市から訪れた会社員、栗野修至さん(38)は「声を掛け合うことと、相手の気持ちに立つ必要性を実感した」と満足そうだった。

日本ブラインドサッカー協会は普及を目指し、2014年に体験会を開始。当初は1回の参加者が10人に満たない日もあったが、現在は申し込みが定員の20人を超える日も。2019年3月までに計3千人以上が参加した。

職場のチームワーク向上を目的に研修で活用する企業も多い。協会は2012年から講師派遣のプログラムを開始し、昨年度は66の企業と団体の計約4800人に実施した。同僚との信頼関係構築に有効だとして毎年利用する会社もあるという。

同協会D&饂業部の剣持雅俊部長は「見えないからこそ、互いの意思疎通が重要になる。多くの再発見があるので、たくさんの人に体験してほしい」と話す。

日用品で日本初、米新興と連携 漂着多い日本に照準

米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)は6日、日本の海岸で回収した海洋プラスチックごみを洗剤容器に再生すると発表した。海洋を漂うプラごみは環境などへの影響が問題になっているが、回収や再利用は進んでいない。プラスチック容器を扱う企業への消費者の視線は厳しさを増しており、対策が求められている。再利用が定着するには高い回収コストなどの課題の解決も必要になる。


P&Gジャパンのベセラ社長(右)は海洋プラスチック問題の解決に意欲を示した(6日、東京都内)

「アジアはプラごみの海洋流出が多く、日本もプラ製品に依存している。業界代表として再利用の取り組みを示していく責任がある」。日本法人のP&Gジャパンのスタニスラブ・ベセラ社長は同日、都内での記者会見で語った。

台所用洗剤「JOY(ジョイ)」で容器原料の25%に海洋プラごみを使った製品を今月9日から55万本出荷する。1〜2カ月分の販売量に相当する。店頭想定価格は158円で、既存品と同水準にした。日本で海洋プラごみを使った日用品は初めてという。

取り組みは再利用ノウハウを持つ米スタートアップのテラサイクルと連携している。P&Gは欧州で2017年から海洋プラごみを容器の一部に使用した台所用洗剤やシャンプーを発売し、北米でも今年から販売している。環境配慮の商品を好む「エシカル(倫理的)消費」が定着する欧米の消費者に対応する狙いだ。

次の展開地域として日本を選んだのはアジアからの漂着ごみが多いうえ、高い再生技術を持つリサイクル企業が多いことが理由だ。回収から加工まで国内で完結でき欧州より多くの量を再生できる。今回は長崎県対馬市の海岸に漂着したごみをボランティアが回収。テラサイクルの提携業者が分別し6トンのペットボトルを選別し粉砕・洗浄して容器に再利用した。

世界では年間約800万トンのプラごみが海に流れこむ。日本の海岸への漂着物は市区町村単位の最大推計でプラスチック以外も含み年40万トン超とされ、世界の中でも海洋プラごみの漂着は多いと見られている。



それでも日本で海洋プラごみの再利用の取り組みが少なかったのは、コスト面で課題があるためだ。P&Gジャパンの台所用洗剤も陸上で正規ルートで回収した再生プラよりも原材料費は割高だ。海洋プラごみは回収量が安定しないうえ、再利用できる品質にするための分別費用が通常のプラスチックの再生に加えて必要になる。

国内の日用品メーカーは使用量の削減や通常の再生プラの活用などで海洋プラごみの削減を目指している。花王もプラ使用量を減らした新容器を30年までに年3億個普及させる目標を掲げる。ライオンも旭化成などとプラ容器再生の新技術開発に乗り出した。

海外のメーカーも同様の取り組みは進めているが、加えて海洋プラごみの再利用を始めているのは国際社会の関心の高まりも大きい。6月に大阪で開いた20カ国・地域(G20)首脳会議では廃プラによる新たな海洋汚染を50年までにゼロにする目標が掲げられた。日本もコストの課題が解決され消費者の需要を確認できれば、P&Gのような取り組みが相次ぎそうだ。

大雨被災地 1カ月で5億円超、地域間で寄付額に差



台風19号やその後の記録的な大雨の被災地支援を目的に返礼品なしで募集しているふるさと納税の寄付金が、少なくとも5億7千万円に上ることが6日までに分かった。発生後わずか1カ月弱で集まった多額の支援。熊本地震や西日本豪雨でも活用され、被災地支援の手段として定着した形だ。ただ、被害が頻繁に報道されている地域に寄付が集中し、自治体間の差が広がっている。


ふるさと納税の仲介サイト「さとふる」の画面

寄付金は、一部の仲介サイトが被災地支援の一環として募集。返礼品がある一般的なふるさと納税と違って仲介手数料を取っておらず、自治体は全額を復旧に使える。

最大手の「ふるさとチョイス」と、ソフトバンクグループの「さとふる」の両サイトを介した寄付が、5日時点で計約5億7千万円。ほかの仲介サイトでも支援を募っており、寄付総額はさらに多い見込みだ。

両サイトは2018年の西日本豪雨で約18億円、2016年の熊本地震で約22億円を集めており、さとふるの担当者は「年末に向けて金額は積み上がるだろう」と予想する。

中心地が浸水した宮城県丸森町には約3300万円が寄せられた。被災前のふるさと納税の月平均は100万円弱で、担当者は「大変ありがたい。一日も早い復興に役立てたい」と話す。

千曲川の堤防決壊で甚大な被害が出た長野市は約5900万円。福島県いわき市は約1300万円、千葉市は台風15号被害への寄付も合わせて約1100万円だった。

一方、多数の住居が浸水した福島県須賀川市では200万円程度、2人が死亡した栃木県鹿沼市は約100万円にとどまる。鹿沼市の担当者は「甚大な被害が広く知られていない」と分析する。

神戸大の保田隆明准教授(金融論)は「自治体がSNS(交流サイト)などを活用して被災状況を発信することが重要だ。具体的な使途を明示することで、支援の輪が広がる可能性もある」と指摘する。

高校生「災害の教訓広める」 「世界津波の日」、国連で討論会
【ニューヨーク=共同】「世界津波の日」の5日、津波防災への意識向上を目指す討論会がニューヨークの国連本部で開かれた。世界の高校生が災害の脅威を学ぶため9月に札幌市で開いた高校生サミットの共同議長、札幌国際情報高2年の井戸静星さん(17)らが午後の討論会でサミットの成果を報告し「災害の教訓を世界に広めるのが私たちの責務だ」と語った。

午前の討論会では、被災地に残る言い伝えとインターネットの技術を防災にどう生かすかなどが議題になった。

サミットの共同議長、札幌日本大高1年の桐越航さん(16)は「防災関連の情報を北海道からSNS(交流サイト)を通じ世界の高校生に発信する。小さな一歩だが皆が同じことをすれば大きな動きになる」と強調した。



参院国土交通委員会で質問するれいわ新選組の木村英子議員(手前から2人目)。車いすに座り、秘書らの介助を受けた=5日午後

7月の参院選比例代表で初当選した重い障害のある木村英子議員(れいわ新選組)が5日、参院国土交通委員会で初の質疑に臨んだ。木村氏は脳性まひで体がほとんど動かせない。車いすに座り、秘書らの介助を受けながら「障害者が地域で生活するにはさまざまなバリアーがある。(障害者の社会参加に向けた)合理的配慮を進めるため質問したい」とはっきりした口調で抱負を述べた。

参院によると、障害のため車いすと介助者が必要な議員による質疑は初めて。国交委は公設秘書による質問代読を認めるほか、介助に要する時間は割り当ての質問時間に含めないといったルールを定めた。

木村氏は8月1日の参院本会議で初登院。同5日に国交委に出席したが、自ら発言する場面はなかった。れいわ新選組から同期当選し、難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)を患う船後靖彦参院議員は7日の文教科学委で初の質疑をする予定。〔共同〕

「合理的配慮」とはどのようなものか

働く人、個人個人の事情に合わせた「合理的配慮」とはどのようなものだろうか? 2016年4月施行の「障害者差別解消法」により、一人ひとりの困りごとに合わせた「合理的配慮」の提供が行政・事業者に義務化された。こうして、雇用者が働く人になすべき「合理的配慮」はまず、障害者雇用に際して行われることになった。

あるリハビリテーション科専門医は、多くの障害のある人の社会復帰に携わってきた。私の専門領域は、脳の病気やケガによって頭の働きが悪くなってしまう障害(高次脳機能障害)である。

健常だった人が、ある日突然、交通事故などによって脳に損傷を負い、記憶力や注意力、感情をコントロールする能力などの頭の働きが悪くなる。これらが永続する後遺症となれば、それが高次脳機能障害だ。

高次脳機能障害は、労務能力などの、社会生活能力が低下することにつながる。彼らが社会復帰するうえで、「合理的配慮」は欠かせない。社会的リハビリテーションには、後遺障害をもつ人が働くために必要な「合理的配慮」を見極め、彼らが属する社会にこの「合理的配慮」を導入するという、重要な役割がある。

一般にリハビリというと、骨折に対して行われるような“運動療法”をイメージする人が多いと思う。しかし、リハビリにはもっと広い意味がある。リハビリテーションの語源はラテン語で、re(再び)+ habilis(適した)であり、「再び適した状態になること」や「本来あるべき状態への回復」などの意味を持つ。それには当然、後遺障害を持つ人に必要な合理的配慮の見極めと導入も含まれる。

発達障害の子どもたち 学校での合理的配慮とは?

2016年4月に施行された障害者差別解消法により、発達障害のある子どもたちに、学校が「合理的配慮」をすることが義務づけられました。しかし実際は、適切な支援がなく、不登校に陥いる子どももいます。どうしたら発達障害のある子どもたちが、いきいきとした学校生活を送れるのか?そのヒントを探ります。

「合理的配慮」義務化も、学校はなお理解不足
教師と保護者の連携 促進のカギは「個別の指導計画」
教師が抱える悩み 解決の糸口は「チームで支援」
発達障害の子どもの教育が全体の底上げに
専門家から
「合理的配慮」の義務化も、学校はなお理解不足
対人関係が苦手、こだわりが強いなどの特徴がある、自閉スペクトラム症「ASD」。注意を持続させられない、じっとしていられないなど特徴がある、注意欠如多動症の「ADHD」。読む、書く、計算するなどが苦手な学習障害「LD」などを主とする「発達障害」は、脳機能の一部がうまく働かないために生じると考えられています。

2016年4月に障害者差別解消法が施行され、障害のある子どもが他の子どもと平等に学べるよう、国公立学校が「合理的配慮」(*1)をすることを義務化されました。しかし、その配慮はまだまだ全体に行き渡ってはいません。

*1「合理的配慮」とは?
障害のある人が他の人と平等に暮らすために、
周囲の人や学校、会社などが無理のない範囲で行うべき〇抉腓筬▲襦璽襪諒儿后↓4超の調整。
例えば、仝えない人に声で文字情報を伝える、音に敏感な子どもに教室でヘッドフォンの着用を認める、車いすの人のために動線を広くする…など。

番組にはこの問題について、さまざまな声が寄せられました。そのなかには次のようなメッセージがありました。

自閉症スペクトラムの小4の息子。IQは高く、学習には問題なし。学校では、大きな問題はなく過ごしていると言われてきました。しかし、3年生の後半から自宅で荒れ始め、行き渋りが増え、4年生になってすぐに不登校になってしまいました。(むらさん、クモくん)

メッセージを寄せてくれた、むらさん(仮名)と息子のクモくん(仮名)。クモくんは小学1年生の時、「自閉症スペクトラム」と診断されました。

クモくんは、全国の路線を知り尽くす鉄道博士。関心のある特定のことに強いこだわりがある一方、相手のちょっとした言葉遣いに敏感で、つい攻撃的になってしまいます。

3年生になった頃から、一部の友達の言葉や態度に強いストレスを感じるようになりました。次第に学校に行くのが怖くなり、4年生からは通えなくなってしまいました。母親のむらさんは学校に、5年生では苦手な子とクラスを分けてもらいたいと伝えました。そして、その結果を事前に教えてほしいと頼みます。しかし、前向きな返答はありませんでした。

「苦手な子とクラスが違うと前もって分かっていたら、皆と同じ時間に私と一緒なら、もしかしたら行けるかもっていう期待もちょっとあって。とにかく閉ざされているというか、クレーマー的にだけとらえられているというか。配慮とか支援とは思ってなくて、まあ、直訴されたぐらいの感じに受け取っているんじゃないかっていう印象は持ちましたよね。」(むらさん)

結果的に、クモくんは新学期に合わせたクラス替えで配慮されました。ただ始業式よりも前に知らされるということはなく、始業式の当日に知りました。
しかし、このように配慮されるケースばかりではありません。そもそも発達障害がどういうものなのか、なかなか学校で理解してもらえないという声がたくさん届きました。

厚労省、70歳雇用延長に対応

厚生労働省は45歳以上の中高年の会社員に特化したリカレント教育(社会人の学び直し)の講座を始める。希望する高齢者が70歳まで働けるようにするとの政府方針を受け、中高年層に長く働き続けるための準備を促す。社内で教育メニューを構築することが難しい中小企業の社員を対象に、若者への技術伝承に有用なコーチングの技術などを学ぶ機会を提供する。



2020年度予算の概算要求に1億9千万円を計上した。同年度は1800人程度を対象に試験的に実施する方針だ。2021年度以降、企業や受講者からの評価を基に講座の内容を見直しながら、受け入れ人数を拡大していく。

厚労省所管の独立行政法人「高齢・障害・求職者雇用支援機構」(千葉市)が全国で運営している生産性向上人材育成支援センターが、企業や受講者本人からの相談に応じて教育メニューを提案する。実際の講座は民間のコンサルタント企業などに委託する。

同センターはこれまで、中小の社員の生産性アップを目的とした講座を展開してきた。6〜30時間でマーケティングや生産管理の基本を学べるもので、受講料は3千〜6千円。2018年度は約3万3千人が受講した。

2019年度からはこの講座をベースにして、中高年が65歳以上になっても働くための内容を加える。

自身の技術を後進に伝える際、若手社員のやる気を引き出すコミュニケーションの方法や、体力が落ちても仕事への高いモチベーションを維持していくための思考法などを学ぶ。基礎的なプログラミングなどIT(情報技術)を学ぶ講座も、慣れない中高年層向けに授業のスピードを落として展開する。

また、人事労務担当者に、高齢の社員が増えたときに必要な健康管理や安全管理の方法を学ぶ場も提供する。

政府の未来投資会議は5月、希望者全員の65歳までの雇用を企業に義務付けている高年齢者雇用安定法の改正案を発表。70歳までの社員が働ける場を提供することを企業の努力義務とする考えだ。企業は定年延長や契約社員などでの再雇用のほか、再就職支援や起業支援などの取り組みが求められる。


子育てに追われ孤立、早めの治療を ストレスが脳に影響/精神疾患もリスクに

親が子を虐待し、時に死に至らしめるような痛ましい事件が相次いでいる。子の心身の傷は深いが、虐待する親の側も心の病をもつ場合が多い。早めに気付き、治療や支援をすれば虐待を防げる可能性もある。

「いけないとわかっていても、つい子どもをたたいてしまう。どうしたらいいのか」。福井大学医学部付属病院子どものこころ診療部を受診した30代の母親は友田明美診療部長(同大教授)と話すうちに少しずつ心を開き、涙ながらに訴えた。ストレスを感じ、うつの状態に陥って自信をなくして息子に手を出してしまったという。

子育てに追われているとき、心の状態にかかわる脳の働きには変化が起きる。友田部長らは就学前の子どもを育てている健康な母親30人の協力を得て、その様子を調べた。大人の顔写真を見せて感情を推測する課題を与え、回答時の脳の働きを機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)で測定するとともに、過去2週間の「気分」がどうだったかを記入してもらった。

すると、抑うつ傾向が強いと答えた人は、課題の実施中に右半球の下前頭回(かぜんとうかい)という部分の活動が低下していた。大脳の前頭前野にあり、相手の気持ちを読み取る能力と密接に関係する部分だ。課題の成績自体は落ちていなかったので、画像検査によって能力が実際に低下する前の「兆候」をとらえたとも言える。

こうした能力の低下が起きると家族や地域の人たちに子育ての相談をしたり、互いに協力しあったりしづらくなるおそれがある。結果として自分を追い込み、虐待につながることもあり得る。より簡便な方法で定期的に検査できる仕組みができれば、「親のストレスが深刻化する前に支援の手をさしのべることが可能になる」(友田教授)。

国立成育医療研究センターこころの診療部の立花良之部長によると、精神疾患は母親による乳幼児虐待の重要なリスク因子だ。なかでも「発達障害」と「衝動コントロールの不全」を重視している。1800人近い妊婦を対象にした世田谷区の調査データを分析すると、発達障害のうち「自閉スペクトラム症」や「注意欠陥多動性障害」(ADHD)と虐待との間に統計的な関連性がみられた。

ADHDは身体的な虐待に、自閉スペクトラム症は育児放棄などのネグレクトに、より関係が深い傾向があるという。ただ、ADHDと衝動コントロール不全が重なる場合もあり、因果関係は複雑だ。「精神疾患があるからといって実際に虐待リスクのある人はあくまでごく一部で、孤立して精神的に追い詰められるなどさまざまな要因が絡む」(立花部長)

金井剛・三重県立子ども心身発達医療センター長は「子の虐待は親からのSOS信号。背景に精神疾患があるなら治療して安定な状態にもっていく必要がある」と指摘する。前に勤めていた児童相談所で「子どもを階段から突き落とそうと考えるだけで快感を覚える」と母親に打ち明けられたこともある。しかし、精神が安定すると子どもの体調を心配する優しい顔を見せたという。

近年は父親や継父による虐待事件も目立つ。精神疾患に仕事のストレス、「父の役目をしっかり果たさなければ」という気負いや責任感が重なっているケースもあるのではないかと金井センター長はみる。これまで、母による虐待が多かったのは養育負担が母に偏っていたのが主な理由のようだ。「男性が育児参加するにつれ、父親による虐待も増えるのではないか」(福井大の友田教授)

虐待する多くの親に共通するのは「孤立感と余裕のなさだ」と金井センター長はみる。うつやADHDなどは、こうした状態を強めうる。「患者が自身と相性のよい精神科医と出会い、治療を受け続けられるよう後押しが必要だ」という。

減らせる「世代間連鎖」

幼児期に虐待を受けるとトラウマとなり、自分の子どもにも同じように虐待するケースは「虐待の世代間連鎖」と呼ばれ、よく知られている。海外の調査で、虐待を受けたことのある親の約3分の1が自身の子を虐待するとの報告がある。一方で3〜4%とする説もあり、ばらつきが大きい。

虐待を受けると脳が影響を受けることがわかってきた。福井大の友田明美教授は米国で、子どものころに虐待を受けた18〜25歳の男女の脳を調べた。厳しい体罰を受けた人はそうでない人に比べ、感情や思考を制御する前頭前野の一部が小さくなっていた。集中力や意思決定、共感に関係する部分の容積も減っていた。

ただ、医師やカウンセラーが過去の経験にじっくり耳を傾け、心理療法を施すなどして治療することは可能だという。時間はかかっても脳が修復すれば、世代間連鎖のリスクを減らせる。

(編集委員 安藤淳氏)

ウーバー配達員、労組結成も交渉「門前払い」 個人契約、保護に課題

 スマートフォンの普及を背景に、個人が好きな時にインターネット経由で仕事を請け負う自由な働き方が広がっている。空き時間を利用して手軽に収入を得られるのが魅力だが、法律などが想定していない新たなワークスタイルは働き手の立場が不明確で、国の議論も始まったばかりだ。人気の宅配代行サービスの現場で課題を探った。(朝倉侑平氏)

「自由な働き方と安心・安全に働くことは相反するものではなく、両立可能だ」。10月3日、東京都内であった「ウーバーイーツユニオン」の設立総会。執行委員長に選ばれた前葉富雄さん(29)が設立趣意書を読み上げると、参加者から拍手が起きた。

前葉さんらは米ウーバーテクノロジーズが手掛ける、飲食店からの宅配代行サービス「ウーバーイーツ」の配達員。「配達パートナー」と呼ばれる個人事業主だが、事故時の補償や報酬の基準が明確でないとして日本法人に団体交渉に応じるよう求めた。

しかし、18日にユニオンに届いた文書は"門前払い"だった。「皆様は『労働者』に該当しませんので、団体交渉の要求についてはお断りさせていただきます」

「交渉する権利すら認められないのか」。前葉さんらは団体交渉を求めて労働委員会に申し立てる検討を始めた。

ウーバー側によると日本で稼働する配達員は1万5千人を超す。日本で事業を始めた2016年9月以降、配達エリアは全国10都市以上に拡大、副業で始める人も多い。

一方、労災保険や雇用保険が適用されないといった課題も指摘されてきた。東京都内に住む40代男性は、身をもってそれを体験した一人だ。

経営する靴修理店が振るわず、生活費の足しにと配達員を2年半前に始めた。報酬は配達先までの距離などに応じて増額され、件数をこなせばボーナスも出る。スマホの操作だけで働く時間が自由に選べるのも魅力に映った。妻や小学生の娘を養うため、約1年前に専業となった。

暗転したのは半年前だ。配達中に交通事故に遭い、尻の骨を折る大けがで約1週間入院した。約10万円の入院費用は自費。働けない期間は貯金を取り崩してしのいだ。

事故の翌月から復帰し、通院しながら1日計100キロ前後をスクーターで走る。収入は多い月で45万円。税金や社会保険料を支払うと生活費が足りず、妻も働いて家計を支える。「始めた時はこんな生活になるとは思いもしなかった」

事故に遭った配達員への補償としてウーバーは10月から、配達中のけがに上限25万円の治療費や日額7500円(最大30日)の入院費などを支払う制度を導入した。同社は「個人事業主という働き方の質と安全性を高めていきたい」と強調する。しかし、配達以外の移動中のけがは補償されないなど限界もある。

自由な働き方は急速に広がるが、働き手をどこまで保護すべきかを定めた法的なルールは未整備だ。海外では待遇改善を求める動きが活発化し、米カリフォルニア州で9月、ライドシェアサービスの運転手らを従業員として扱うよう企業に義務付ける新法が成立した。

龍谷大の脇田滋名誉教授(労働法)は「過去にはバイク便の配送員を労働者と認めた判例もあり、企業と個人事業主の関係はたびたび問題になってきた」と指摘。ウーバーイーツと配達員について「今後は裁判手続きなどを通じ、実態として従属的な立場かどうかなどで団体交渉の可否が判断されるだろう」と話す。

「フリーランス」170万人に


ウーバーイーツ配達員など、インターネットの仲介サイトを介して仕事を請け負う働き方は「ギグワーカー」などと呼ばれる。同様の働き方をする職種にはプログラミングや翻訳、家事代行などがあり、個人で企業などから仕事を請け負う「フリーランス」として働く人も多い。

労働政策研究・研修機構は4月、フリーランスが国内に約170万人いるとの試算をまとめた。うち「本業」とする人は約130万人、「副業」は約40万人で、フリーランスの仕事による平均年収(税込み)は「50万円未満」が最多。権利保護が不十分との指摘もあり、厚生労働省は「雇用類似の働き方」と位置づけ、昨年10月以降、有識者会議で論点を整理している。


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