先月23日、国連本部で開かれた「気候行動サミット」に出席した16歳の少女の訴えは衝撃的でした。

〈「よくそんなことが言えますね」。開幕式で怒りに声を震わせたのは、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさん(16)だった。各国が「緊急性は理解している」と言いながら気候変動対策に背を向けた結果、次世代にツケを回していると首脳らを糾弾した〉

グレタさんは地球温暖化に危機感を持ち、世の大人が真剣に対策に取り組んでいないのではないかと、去年夏から、学校を休み、たったひとりでスウェーデンの国会議事堂の前に座って対策を取るように政治家たちに呼びかけてきました。

これは「学校ストライキ」と呼ばれ、最初はたったひとりの行動でしたが、瞬く間に世界に広がりました。国連でのサミットを前に先月20日には世界150カ国以上で約400万人の若者が一斉にデモ行進しました。日本でも集会やデモ行進が行われましたが欧米ほどではありませんでした。

学校を休んでまでのグレタさんの行動には賛否両論があります。欧州では概して好意的な受け止め方が多かったようですが、米国ではCNNなどが活動を客観的に紹介する一方、トランプ大統領に好意的なFOXニュースは「学校を休んでもいいのか」という批判の声を伝えました。日本でも否定的なコメントが少なくありませんでした。

しかし、このところ毎年のように欧州を襲う熱波を経験すれば、温暖化に対する危機感を持つのは当然のことでしょう。日本列島に近づいても台風の勢力が衰えないのは、日本周辺の海水温が高いからです。

□ ■ □

10代の若者は純粋です。グレタさんの思い詰めたような顔を見ると、彼女あるいは世界の多くの若者たちが危機感を募らせるまでに温暖化対策を怠ってきた我々大人たちの責任を感じます。

もしあなたのお子さんが、「温暖化対策を求めてデモに行く」と言い出したら、どうしますか。あなたが学校の先生だとしたら、教え子が「デモに行く」「ストライキをする」と言い出したとき、どんな対応をするのでしょうか。結局は大人が問われているのです。

それにしても、このところ世界では若い女性の活躍ぶりが目立ちます。香港で民主化運動の先頭に立つ周庭(アグネス・チョウ)さんは22歳。日本の文化に憧れ、独学で日本語を学びました。香港で会いましたが、その日本語能力には瞠目(どうもく)しました。

彼女が民主化運動に参加したのは10代半ばだったというのですから驚きです。香港の未来に危機意識を持っているのですが、香港行政府のバックには中国共産党の存在があります。これ以上の民主化を認めそうもない中で、果敢に戦い続ける姿には頭が下がります。

□ ■ □

さらにパキスタンのマララ・ユスフザイさんは、女性への教育を求めて過激派に命を狙われ、頭部に銃弾を受けました。それでも運動をやめることはなく、2014年には17歳でノーベル平和賞を受賞しました。

彼女たちの奮闘ぶりを見ると、「大人のあなたは何をしているんですか?」という問いが聞こえてくるような気がします。私たちは、若者たちの危機感をしっかり受け止めることができるのでしょうか。

 大岡山は池上教授の活動拠点である東京工業大学のキャンパス名に由来します。日経電子版に「大岡山通信」「教養講座」を掲載しています。

羽田空港(東京・大田)周辺に2020年、自動運転や先端医療の関連施設が入る複合施設が開業する。空港の拡張事業で生じた跡地を活用し、デンソーなどが進出する。地元の大田区も同年夏、町工場やスタートアップの協業を後押しする施設を設ける。2020年春に羽田の国際便の発着回数が増えるなか、創業や先端技術を海外発信する拠点とする。

鹿島やJR東日本などが出資する羽田みらい開発(東京・大田)が開発主体となり、複合施設「羽田イノベーションシティ」を整備する。施設全体の敷地面積は約5.9ヘクタールで、商業施設や3000人規模を収容するコンサートホールなどが入る予定だ。総事業費は約540億円。

空港周辺は政府の国家戦略特区制度を活用し、規制を凍結して新技術の実証実験ができる措置の適用も検討されている。こうした動きを踏まえて、デンソーはイノベーションシティ内に自動運転技術の開発拠点を整備する計画だ。先端医療関連の研究施設も開設する予定だ。

施設が位置する大田区は、新たな複合施設を活用した産業振興策として、創業支援拠点を開設する。2020年にシェアオフィスや交流スペースを備えた施設を開業する計画で、このほど約10法人の募集を始めた。中堅製造業を中心に募り、区内の町工場との連携につなげる。ベンチャーキャピタル(VC)を集めた起業家向けイベントなども開く計画だ。

スタートアップは斬新なアイデアを持つものの、試作品の製造装置や量産技術を持たない企業もある。同区は新拠点でものづくりに関わる事業者が交流することで、スタートアップのアイデアと町工場の製造技術との協業や連携につながる効果を期待している。

城南信用金庫(東京・品川)も20年6月、全国の信金職員らが利用できるスペースを開設する。信金職員が東京出張した時のサテライトオフィスとして提供するほか、企業のマッチングイベントなども開く計画だ。「地方企業同士の協業を促すだけでなく、大田区内の町工場と地方企業との連携も働き掛けたい」(城南信金)という。

中国欠席、足並み乱れ

東京都内で開かれていた海洋プラスチックごみ問題を討議する20カ国・地域(G20)の事務レベル会合が11日までに閉会した。2050年までに新たな汚染をゼロにする目標達成に向け、日米欧が主導し削減に向けて新技術を開発することなどを合意した。ただ最大の流出国の中国が欠席するなど足並みの乱れも目立ち、前途の多難さも浮き彫りになった。

今年6月のG20大阪サミットで宣言された、海洋汚染をゼロとする目標「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」の実現に向け、8日から議論を続けていた。

「(海ごみが集まりやすい)ホットスポットを明らかにすることが大事だ」「データやモニタリングが不十分だ」

参加した各国からはプラ汚染への厳しい現状に対する意見が相次いだ。

各国の取り組みや課題などは共有できた。世界第2位の流出国であるインドネシアは、観光地のバリ州で2019年からレジ袋やストローなどの使い捨てプラスチックを禁止した。米国はごみの流出と回収の状況を調べ対策計画を作ろうとしている状況を紹介した。

海洋プラごみは、世界で年900万トン近く発生しG20がその5割弱を占めていると推定されている。実際の汚染調査は十分に進んでいないため、流出経路などの科学的な知見が不足している。

これらの課題を解決するため日米欧が主導して調査技術を開発する方針を合意した。日本は海洋モニタリングの手法やデータ整備を担う。小泉進次郎環境相は11日の閣議後の会見で「対策を進めるスタートを切れた意義は大きい」と成果を強調した。

一方で、汚染ゼロに向けて各国の温度差も浮き彫りになった。世界最大の流出国である中国のほか、インドや英国などG20の8カ国が欠席した。中国は事前に求められていた現状リポートも提出しなかった。「時間的に間に合わなかったようだ」(環境省)が、流出の約3割を占める中国の姿勢は国際協調に水を差す形となった。

2050年に新たな汚染ゼロとするハードルは高い。途上国ではプラごみが野積みになり豪雨などで流出する地域もある。九州大学の磯辺篤彦教授は「新たな汚染をなくすことは難しい。漏れ出ることを前提に対応を考えるべきだ」と指摘する。

20年のG20はサウジアラビアが議長国だ。最近まで同国はプラ対策に関心を示さなかった。大阪で示されたビジョンは早くも正念場を迎える。

津田塾大、街の課題解決 英語表記で地図/名産品を発信

近代五輪の父、クーベルタン男爵はオリンピックを通じて健全な若者を育て、相互理解や平和を実現しようとした。世界中から人々が訪れ、クリアすべき様々な問題も伴う五輪・パラリンピックの開催は、次代を担う大学生にとっても貴重な学びの機会といえる。日本文化の発信や海外チームをもてなす経験は、2020年東京大会のレガシーとなるはずだ。

メイン会場の新国立競技場、卓球が行われる東京体育館への「玄関」となるJR千駄ケ谷駅。改札手前で外国人観光客が足を止めた。視線を向けたのは、駅周辺や会場が英語で記された「SENDAGAYA MAP」。制作したのは、駅前にキャンパスが広がる津田塾大の学生たちだ。

「こんな近くで五輪が行われる。何か関われることはないか、ということで学内でアイデアを出しあった」と語るのは「梅五輪プロジェクト」学生代表の増野晶子さん(20)。2017年4月に開設された総合政策学部の1期生を中心に、現在は160人の学生が同プロジェクトに参加する。大学が力を入れる英語とデータサイエンスを生かし、16のテーマが進行中だ。

プロジェクトは2つの「志」を持っている。オリパラ開催で生じる課題解決への貢献と、日本の魅力発信だ。「現代社会の課題解決力を養う」という学部の教育方針にもぴったりのフィールドワークといえる。

千駄ケ谷駅の英語マップもその一つ。これまで通勤通学の人ばかりだった街に外国人の姿が目立つようになった。「実際にどんな問題があるのか、商店街や駅を聞き取りして回った。その中で出てきたのが『英語』だった」と増野さん。将棋会館からは英語で説明が難しいと聞き、ルール解説の英語版パンフレットを制作した。アイスクリーム屋の英語メニューも作った。

スマートフォンの利用や飲食など電車内のマナーを説明した外国人向けパンフでは、美術館の協力を得て浮世絵をモチーフに使用した。担当した滝まりなさん(21)は「海外の方たちの関心を引くにはどうしたらいいか、知恵を絞った」と話す。他にはSNS(交流サイト)上で落とし物を探す人と拾った人をマッチングさせる、自動応答システム(チャットボット)の開発にも挑戦中だ。

来夏は今以上に千駄ケ谷周辺を訪れる人が増えるだろう。オリパラ期間中、津田塾大ではキャンパス内で日本文化を体験できるイベントを企画している。

「東京の外にも盛り上がりを広げたい」と、梅五輪プロジェクトでは地方の魅力発信に力を入れる。眼鏡フレームや漆器の産地である福井県鯖江市と連携。学生が開発した商品を販売する。長野県飯田市の名産品として知られる水引の制作実演や販売も企画中だ。

増野さんらを指導する総合政策学部の曽根原登教授(65)は「学生が主体となってやることに意味がある」と語る。オリパラのレガシーとは、大会を触媒に社会の仕組みや価値観を変えることだ。学生にもチャレンジングな機会といえるだろう。

国際交流も深く
早大、事前キャンプ地に 外国選手をおもてなし

東京大会では各国の選手団が日本各地で事前キャンプを行う。トレーニング施設や宿泊所がそろった大学はアスリートにとって格好の練習拠点だ。受け入れをきっかけに、大学生が選手たちと国際交流を深める機会も増え始めている。

7月中旬。早大所沢キャンパス(埼玉県所沢市)では、韓国での水泳世界選手権を間近に控えたイタリアの競泳チームが練習を行っていた。来年の東京五輪の事前キャンプでも使用する同大の視察を兼ねた合宿。選手はプールやトレーニングルームを使用し、施設の感触を確かめた。

韓国と北朝鮮の休戦ラインを挟んで帯状に広がる非武装地帯(DMZ)の韓国側にある唯一の村、台城(テソン)洞。人の出入りが厳しく統制される「陸の孤島」に、韓国通信大手KTが次世代通信規格「5G」インフラを構築した。有事の安否確認やスマート農業、遠隔教育などのサービスを提供する。

ソウルから車で1時間あまり。韓国軍による検問を経てたどり着いた台城洞は46世帯、約200人が暮らすのどかな農村だ。1953年の朝鮮戦争の休戦協定で、南北はDMZ内にひとつずつ村を置くことを決めた。台城洞は同年、そうしてつくられた。休戦ラインの反対側に北朝鮮がつくった宣伝村、機井(キジョン)洞は目と鼻の先だ。

南北関係の改善で多少は和らいだとはいえ「私たちはいまも緊張下で暮らしている」(村の男性)。500メートルしか離れていない休戦ラインに近づくときは軍人のエスコートが必要だ。村の出入りにも門限がある。

KTは5Gを使い、村民の不便を解消するソリューションを提供する。一例は安否確認システムだ。村には警察も病院もない。問題が起きればまずは里長が対応する。全世帯に非常ベルが設置され、村民がボタンを押せば、里長が常駐する村民会館の大型モニターでどの家で押されたかがすぐにわかる。

農業のスマート化も進めた。センサーが土壌の状態を検知し、スプリンクラーが自動散水する。2キロ離れた貯水池の水門の開閉はスマートフォンで遠隔操作できるようにした。これまでは軍人同行で毎日現場に行き、手動で開閉していた。里長の金東九(キム・ドング)さん(50)は「時間が節約でき、家族と過ごす時間が増えた」と語る。

村にある唯一の学校、台城洞小学校では仮想現実(VR)などを使った授業が取り入れられている。室内体育ではボールを使った的当てなどのゲームができ、他校とのオンライン対戦も可能だ。

KTでは8月現在、携帯電話の加入者のうち4.8%が5Gを利用しており、同社は今後も比率の拡大をめざしている。南北分断の象徴である台城洞を「ショーケース」とすることで、5G普及に弾みをつけたい考えだ。

(台城洞で、鈴木壮太郎氏)

就職情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリア(東京・千代田)が「内定辞退率」の予測を販売していた問題で、情報を購入した企業にも厳しい目が向けられている。採用選考に利用していたのではないかとの疑いは消えず、個人情報保護委員会と厚生労働省は法違反がなかったかなどを調べている。



面接の順番左右

国立大4年の女子学生は8月にリクルートキャリアから受け取ったメールで自分の「辞退率」が企業に販売されていたことを知った。「合否に影響したのでは」。不本意だった就職活動を思い返し、疑念が浮かんだ。

資料の開示を求めたところ、企業に提供したという資料約20点のPDFファイルが届いた。しかし内容や利用方法についての詳しい説明はなく、記載された数値を見ても辞退率が高いのか低いのかすら分からなかった。「こんな説明では『合否に使ってない』と言われても信じられない」

リクルートキャリアは自社と親会社リクルートホールディングスを含む38社との間で辞退率の販売契約を結んでいた。社名は公表していないが、トヨタ自動車やホンダ、三菱電機、りそなホールディングスなどが契約を認めている。

優秀な学生が他社に移るのを防ぐための「参考情報」として提供していたとされ、リクルートキャリアは「合否判定に使った例はないと認識している」と説明している。

これに対し、ある顧客企業の担当者は「辞退率を面接の順番を決める材料として使っていた」と打ち明ける。「一般論だが、採用したい学生には早いうちに会っておいた方がいいと考える」と話し、間接的に合否に影響した可能性を否定しなかった。

個人情報保護委と厚労省は8〜9月、個人情報保護法と職業安定法に基づきリクルートキャリアに行政指導をした。その後、顧客企業についても両法違反などがなかったか調べている。

顧客企業はリクルートキャリアとデータ解析の業務委託契約を結び、就活生の個人情報を本人の同意なく提供していたとみられる。提供された情報はリクナビや提携サイトの閲覧履歴などと結合され、人工知能(AI)で辞退率を算出するのに使われていた。

採用担当の思惑

本人同意のない第三者提供も業務委託の枠組み内であれば法的に許容される。ただ「一般的に業務委託というのは統計的処理など単純な作業を外注するもの」(厚労省幹部)。今回の情報提供が業務委託の範囲と認められるかどうかが調査のポイントとなっている。

厚労省は法の下の平等を定める憲法14条に基づいて「公正な採用選考」を企業に求めており、この観点でも問題がなかったか調べている。「学生に不利に働きかねないデータを利用することへの認識が甘すぎる」と省幹部は苦言を呈する。

東京労働局の幹部によると、聞き取りをした顧客企業では、内定を辞退する学生の数によって採用担当者の人事評価が左右される仕組みが目に付いたという。「プレッシャーが機微な情報を使うリスクへの感度を鈍らせたのか」

辞退率問題の影響か、9月下旬に東京都内で開かれたリクナビ主催の就活イベントでは参加企業が前年より1割以上減り、集まった学生は4割以上減った。私立大3年の女子学生は「就活にリクナビを使わない選択肢はない」としながらも「自分の情報がどう使われるのか不安はある」と話していた。

(寺岡篤志氏、伴正春氏)

厚生労働省は18歳未満の子どもの死亡事案の背景について、全件検証する取り組みを始める。都道府県に医療、警察、福祉などの専門家からなる委員会を設置し、多角的に問題を分析する。刑事事件に発展しない事案も含めて検証し、虐待や事故の発生防止に生かす狙いだ。2020年度から全国5地域でモデル事業を始め、順次ほかの地域に展開していく。



子どもの死亡の全件検証は「チャイルドデスレビュー」と呼ばれ、虐待対策として米国で1978年に始まった。英国でも同種の取り組みがされている。

日本でも2018年12月に成立した成育基本法で導入を進める方針が盛り込まれたことを受け、厚労省は2020年度の概算要求に5900万円を計上した。検証を担当する専門家への報酬や自治体の体制整備に充てる。

まず各都道府県の児童福祉や衛生部門に子どもの死亡についての情報収集担当者を配置する。各地域の医療機関に、18歳未満の死者が出た際には自治体への通報と、死因や既往症の報告をするよう求める。

自治体は第三者の立場にある小児科医や精神科医、検視官、救急隊員、保健師などからなる検証委員会を設置する。死亡した子どもに関する情報を持つ教育機関、児童相談所、警察などから養育環境や通学状況などの報告を求め、内容を精査する。委員会は再発防止策を提言するほか、必要に応じて関係機関に調査を依頼する。

厚労省の人口動態調査によると、2017年の18歳未満の死者は3800人。うち11%は詳しい死因が特定できていない。また21%は事故や自殺・他殺など「外因死」で、社会的な対策の検討が重要とされる。いずれも18歳以上に比べ、割合が大幅に大きい。

厚労省によると、死亡するなどした子どもの担当医が虐待を見落としている懸念がある。たんの吸引などが日常的に必要な「医療的ケア児」の保育ミスや子どもの自転車の単独転倒事故など、刑事事件に発展しない死亡事案では詳細な検証がされない傾向にある。

同省の担当者は「細大漏らさず検証をして、細かな対策を積み上げていくことが重要だ」としている。

「日本で成功するわけがない」。今回のラグビーワールドカップ(W杯)は、そんな前評判を覆しつつある。チケット売上高は当初予想の1.5倍超の350億円に達し、総収入はラグビー発祥の地イングランドで開かれた前回大会を上回る見通しだ。だがここに至るまでには、様々な曲折と日本代表OBや関係する企業人ら裏方の奮闘があった。

■南ア戦勝利、もう一つの意味



2015年9月19日、英ブライトンで行われた前回W杯予選の南アフリカ戦。優勝2回を誇る強豪を日本代表が破った「ブライトンの奇跡」には今回のW杯を左右する大きな意味があった。

日本でのW杯開催は2009年には内定していたが、実はこの時、その座が揺らいでいた。開幕戦と決勝戦を行う予定だった新国立競技場の建設費が3000億円を超えることが判明。世論の反発からデザイン公募がやり直され、W杯開催に間に合わないことが明らかになったからだ。

「新国立競技場を使えないなら客席やVIPスペースが減り、数十億円の減収になる」「減収分を補填するため日本政府に追加で1億ドル払ってほしい」「無理なら開催地の変更も辞さない」。ラグビーW杯を主催するワールドラグビー(WR)は日本のW杯組織委員会に対し、再三厳しい要求を突きつけてきた。

■勝利で鎮まった反対論

日本開催の反対派の急先鋒(せんぽう)が実は南アだった。新国立の問題による減収に加え、南半球の最高峰リーグ、スーパーラグビーへの日本の参戦準備の遅れなどを理由に、開催地を"強奪"しようとWRに働きかけていた。日本の身内であるはずの前日本代表ヘッドコーチ、エディー・ジョーンズ(59)すら南ア開催に賛成したとされる。だが「ブライトンの奇跡」を目の当たりにしたWRのブレット・ゴスパー最高経営責任者(CEO)は試合直後、日本の協会幹部に「おめでとう。これで問題はなくなった」と握手を求めた。反対論は一気に鎮まった。

この南ア戦を語る上で欠かせないのが日本代表元主将の広瀬俊朗(37)だ。ジョーンズに生来のリーダーシップを見込まれ、代表経験がほとんどなかったにもかかわらず主将に抜てきされた。だがW杯開幕1年半前に主力から外れ、リーチ・マイケル(30)に主将を引き継いだ後も、相手チームの分析や先発する選手のフォローなど裏方として汗をかいた。

プラスチックごみ(廃プラ)が国際的な問題となるなか、日本は削減対策で「後進国」との見方が浮上している。野心的な削減目標を公表しているものの「燃やすリサイクル」を重視し、プラ使用量の削減や新素材導入では欧米に出遅れているためだ。企業の一部では危機感が広がり、原料そのものを見直して新たなリサイクル体制を築こうとの動きも出始めた。

日本政府が5月末に掲げた「プラスチック資源循環戦略」。使い捨てプラの排出量の累計25%削減や廃プラ100%有効利用などの数値目標を盛り込んだ。業界関係者は「先行する欧州の目標を上回る野心的な数値だ」と解説する。

6月末の20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)では、廃プラによる新たな海洋汚染を2050年までにゼロにする目標を掲げた「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を主導し採択した。

日本は自国の排出する海洋プラごみは世界全体の1%未満で、プラ再生率は2017年時点で86%と世界トップ水準だと公言してきた。だが世界が日本を見る目は異なる。

日本の対策は焼却時に発生するエネルギーを使う「サーマルリサイクル」が6割を占める。2018年の経済協力開発機構(OECD)の報告書では、二酸化炭素(CO2)の排出を理由にリサイクルと認められず再生率は約2割に低下した。再生率は欧州連合(EU)平均の約3割に及ばない。



日本の課題はプラ排出量の多さだ。2017年の総排出量は前年比0.4%増の903万トンと4年ぶりに増加した。1人当たりプラスチック包装容器の排出量は、年間30キログラム超(2014年時点)と中国やEUに比べて多い。

詰め替え用が普及し廃プラ対策の優等生のはずの洗剤でも増えている。日本石鹸洗剤工業会によると、洗濯用の液体洗剤やシャンプー・リンスなど8製品の2017年のプラ総使用量は前年比2.5%増の7万9千トンだった。

プラ削減の有効打は代替材料や原材料へのリサイクルだが、日本は出遅れた。化学大手の独BASFやブラジルのブラスケムなどがバイオプラの量産に動き、現時点で世界の使用量は日本の50倍の年約200万トンにもなる。

米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)は2030年までに全ての包装の再利用などを可能にする。英蘭ユニリーバなどは2025年までに包装用プラを再利用やリサイクル、生分解性に切り替える。

背景には環境配慮などを企業に求める「ESG投資」の広がりがある。日本企業の間では世界とのズレを感じ、「機関投資家などの投資対象から排除されかねない」との危機感も出る。

一部の企業は動いた。花王や三菱ケミカルホールディングスなどは今年1月、対策に取り組む企業連合をつくり、足元で265社・団体に広がった。会長を務める花王の沢田道隆社長は「焼却ではなく回収方法を含め、廃プラリサイクルの技術開発を進める」と語る。

花王は詰め替え用の活用により、全品が本体用だったときと比べ、プラスチックを9.3万トン削減できたという。削減量は日本全体の1%にすぎないが、30年までにバイオプラなど低環境負荷の包装容器を年3億個流通させる。工場を含む全拠点で廃プラのリサイクル率100%を目指す。

素材メーカーも呼応する。クラレは米工場で1500万ドル(約16億円)を投じ、食品包装用フィルムにする生分解性プラスチックの生産を2020年初めにも開始する。三菱ケミカルはバイオプラ関連の基幹特許の外部へのライセンス供与を決めた。

一方、新素材はコストが従来品の2倍以上になるケースが多い。それでも導入する企業が増えるかが焦点だ。サントリーホールディングスは、使用済みペットボトルからの再生原料とバイオプラを組み合わせ、30年までに新たな化石燃料由来の原料調達をゼロにする。

日本はかつて自動車の環境規制や家電の省エネ技術が製品の強みにもなった。素材転換やリサイクル強化などによる循環経済が実現すれば、国内総生産(GDP)の4%弱に当たる20兆円以上の経済効果をもたらすとの試算もある。

総力戦でイノベーションの芽を育み、「廃プラ後進国」の汚名を返上できるかが問われる。

(京塚環氏、後藤宏光氏)

6月上旬から7月中旬まで断続的に行われたラグビー日本代表の宮崎合宿。豪華なリゾートホテルの一室から、時折「君が代」が聞こえてきた。

慣れない日本語の歌詞と格闘しながら声を合わせていたのは、同部屋だった南アフリカ出身のピーター・ラブスカフニ(30)と、オーストラリア出身のジェームス・ムーア(26)。海外生まれながら、「3年以上継続してその国・地域に居住」という、国際統括団体ワールドラグビー(WR)の規定をクリアして今夏、日本代表となった選手だ。

【前回記事】 リーダーが10人 ラグビー日本の意思決定力
9月6日のワールドカップ(W杯)前哨戦、南アフリカとの試合前の国歌斉唱では、大きく口をあけて歌う2人の姿があった。「君が代に敬意をもっているので、ちゃんと練習した。何回も歌っているのでほぼマスターしたと思う」とラブスカフニ。

もちろん母国との対戦に抱いた複雑な感情も隠さない。「小さいころはまさか自分が日本代表として国歌を歌うとは夢にも思わなかった。南アの国歌を聴くと感情が高ぶるが、いまは日本の国歌を歌うことを誇りに思うし、振り返ってみても(日本代表になる)選択は良かった」

今回のW杯日本代表31人中、海外出身者は15人。前回2015年大会の10人を上回り、過去最多だ。他競技を見渡してみても、これほど「多様性」をキーワードに語られる日本代表はかつてなかった。その重要性を最も理解しているのが、ニュージーランド出身で日本に帰化した主将、リーチ・マイケル(30)だ。

■日本史も学べるクイズ大会も開催

前回大会も主将として海外出身選手たちに「君が代」を教え、歌うことを促した。リーチは「ラグビーというスポーツは情熱と愛国心が大事。情熱を出すために、国歌を歌うことは重要だと思う」と話す。リーチ自ら歌唱指導し、歌詞の意味も教えた。

出身国が7つと、これも過去最多となる代表をまとめる工夫はそれだけではない。代表の滞在先の一室には昨年から、甲冑(かっちゅう)が飾られている。名前は「カツモト」。ハリウッド映画「ラストサムライ」で渡辺謙が演じた「勝元」にちなんだ。他にも過去の代表選手の名が刻まれた模造刀などが飾られている。

リーチはスライドを使って日本史を教え、ゲーム感覚で歴史を学べるクイズ大会も主催。ラブスカフニやムーアのように、日本での滞在期間が短い選手たちに、日本代表の心棒のようなものを通すためには、こうした"授業"は欠かせないとリーチは言う。「潜在意識を強化することが、その後につながる。そこで相手と差をつけないといけない。それで歴史を入れたりした」

表面的に日本の文化を受け入れるだけでは足りない。心の奥底に植え付け、いざという時に無意識で引き出せないと、チームの一体感を保てないということか。チーム全体の半分を海外出身者が占めるとなるとなおさらだろう。W杯3大会連続出場の田中史朗(34)も「外国人で固まったりするから、日本人の中に引き入れている。もっと日本の文化を理解してもらってチームとしてやっていきたい」と宮崎合宿中に語っていた。
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