ゲノム編集で作った受精卵から赤ちゃんを誕生させ、世界的な批判を受けた中国・南方科技大の賀建奎副教授(当時)=2018年11月28日(共同)

中国の研究者が「ゲノム編集ベビー」を誕生させたと発表しておよそ1年。ヒト受精卵の遺伝情報をゲノム編集という簡便な技術で改変し、エイズにかかりにくいようにしてから母親の体内に戻して子を出産させたとの触れ込みだったが、当の研究者は表舞台から姿を消した。生まれた双子がどうなったかも不明だ。世界で非難の声があがり、こうした試みは封印されたかに見えるが、現実には希望する親も手がけてみたい医師、研究者もいる。14、15日にはロンドンで専門家らがこの問題を話し合う国際委員会を開く。禁止を確認しあうというより、慎重ながらも解禁への道筋を探る場になりそうだ。

「ロシアでゲノム編集ベビーが近く生まれる」――。今年の夏以降、こんな情報が世界を駆け巡った。英科学誌「ネイチャー」や米ブルームバーグが、ロシアの国立研究機関の臨床遺伝学者の計画を報じたのがきっかけだ。生まれてくる子どもがエイズにかかりにくいようにするという中国と同様の計画のほかに、特定の遺伝子変異による聴力障害を持つ夫婦の受精卵をゲノム編集し、障害が出ないようにする試みを準備中だと伝えた。

10月にもロシアの審査機関に申請し、承認され次第、開始するとされたが、まだ実行に移されていないようだ。予想以上に騒ぎになり、ロシア政府から事実上の「待った」がかかったといわれる。

ゲノム編集ベビーが生まれた場合、遺伝情報に人為的に手を加えた影響は、その子どもからさらに次の世代へと受け継がれる。人類の進化の道筋すら変える恐れがあり、そんな大それたことをすべきではないという声は多い。未熟な編集技術ゆえ、狙い通りに遺伝子を変えられず、あとから思わぬ障害が明らかになる心配もある。一体、誰が責任をとるのか、容易に答は出ない。

一方で、生まれながら難病に苦しむとわかっていて、事前に「治療」する技術があるなら使うべきだという指摘もある。難しい問題を多くはらむだけに現段階でのゲノム編集ベビーづくりに眉をひそめる人が多いのだが、それでも現実は先へ先へと進もうとする。

受精卵をゲノム編集する基礎研究は止まる気配がない。国立成育医療研究センター研究所の阿久津英憲・生殖医療研究部長の調べによると、論文で確認できるものだけでも、9月時点で世界で13件の報告があった。うち11件は中国。中国のゲノム編集ベビー誕生やロシアの計画は含まれていない。

中国の研究の多くはゲノム編集をより効率的かつ正確にし、遺伝情報を狙い通りに改変しようというものだ。ノウハウを着実に積み上げている様子がうかがえる。難病の治療につながる遺伝子の修復法の研究もあり、多くの研究者が将来的な臨床応用を視野に入れているとみられる。

この動きは中国やロシアに限らない。生命倫理問題を議論する英国の権威ある独立機関、ナフィールド生命倫理協議会が出した2018年の報告書も、将来世代に影響を及ぼすような生殖細胞のゲノム編集は、状況によっては「倫理的に受け入れられる」と結論づけた。驚いた人は多いが、研究の現実をしっかり踏まえた内容になっている。



14日からロンドンで開く「ヒト生殖細胞ゲノム編集の臨床応用に関する国際委員会」は米国科学アカデミー、医学アカデミー、英王立協会が主催する。今すぐゲノム編集ベビーをつくることには慎重でも、決して「禁止ありき」の集まりではない。受け入れの機運が高まったときに混乱なく実行に移せるよう、今から問題点を整理し、認められる条件を国際的に確認しあおうというのが目的だ。世界保健機関(WHO)とも連携し、何らかの共通指針をつくる方向だ。

ただ、WHOの専門家会議は今年3月、ゲノム編集した受精卵から子を誕生させる計画を、現時点では進めるべきではないと勧告した。世界の規制当局に対し、計画の申請があっても承認しないよう求めている。国際委員会には前へ進みたい研究者も多いが、WHOはより慎重だ。8月には世界の研究の実情を把握するため、あらゆるヒト細胞のゲノム編集による病気治療をめざした臨床試験のデータを集約する登録システムを始めると発表した。ルールのあり方を話し合うのに役立つとみられる。

日本では基礎的な研究に限り、一定の条件を満たせば、受精卵などのゲノム編集を認める指針を作成中だ。その目的は不妊症の仕組みの解明や難病の治療法研究などに限定される。ただ、ゲノム編集ベビーに関しては法的な規制などをこれから詰める段階。いずれ解禁時期がやってきた場合を想定してのルールづくりはその先だ。

生命科学の進展は加速しており、「その時」は意外に早くやってくるかもしれない。政府だけでなく、患者団体や一般市民も常時参加し、早めに議論を進める必要がある。ロンドンの国際委員会のような場に参加する日本の研究者も増えてきた。そこで吸収した知見を多くの人と共有し、日本の進路を考えるべきだ。

日本経済新聞コメンテーター 村山恵一

最先端のスーパーコンピューターをしのぐ性能を量子コンピューターで実証したと、米グーグルが英ネイチャー誌で発表した。日本の第一人者、東京工業大学の西森秀稔教授が驚き、注目したのは論文の著者リストに並んだ研究メンバー約80人の顔ぶれだった。

米航空宇宙局(NASA)、スパコンで有名な米オークリッジ国立研究所、欧州を代表するユーリヒ総合研究機構……。2014年に研究室ごと引き抜いた米カリフォルニア大学の人材に加え、さまざまな組織の研究者が集まった。グーグル社内に閉じず、広範。量子オールスターズだ。



求心力の源はグーグルの資金力だけではない。個性的な才能を束ねて方向づけるリーダーシップもいる。量子のような大テーマで、スピード感をもって突破口を開くための研究モデルのひな型を示した――。西森氏はそうみる。オープンな体制で多様な人材を生かすところがポイントといえる。

グーグルと競う米IBM。ネイチャー論文に異議を唱え、対抗心を隠さないが、自らの研究所に閉じこもっていない点は同じだ。

量子コンピューターは誰がどんな用途で使うのか。それを理解するのも研究の一部と考え、発展途上の量子コンピューターを公開し、世界で15万人の登録利用者を抱える。プログラム開発者が交流するソーシャルメディア的なしくみがあり、IBMとともに利用法を探るコミュニティーには80近くの企業や大学が参加する。

社内で秘密裏に研究し、世の中に届けられる段階になってはじめて提供するかつてのIBMの流儀から様変わりだ。コンピューター科学や物理、数学、化学、ソフト開発、デザインなど多分野の学生をインターンに誘う。研究者のつながりを外へ外へと伸ばす。

量子コンピューターの実用化には長い時間を要し、暗号破りのリスクも指摘される。一方で気候変動やエネルギー、ヘルスケアの難問を解く潜在力を秘めている。限られた場所と人で研究していては大事な芽を見落としかねない。

日本は大丈夫だろうか。

量子コンピューター研究の歩みを振り返れば、目を引く日本発の成果があったが、ひょっとするとチャンスを逃したかもしれない。

東工大の西森氏らが土台となる理論「量子アニーリング」を提唱したのは1998年。同じころNECは超電導による量子ビットを世界で初めて実現した。先頭を走る専門家同士がそばにいた。

もしもそこに対話が生まれ、知識が交じり合えば、世界をリードできるような研究の進展がみられた可能性があるが、双方が連絡をとり合うことはなかった。

時は流れ、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の案件で両者の連携が決まったのは昨年だ。NECもIBMに似たコミュニティーづくりをめざすが、具体化はこれから。海外のダイナミックなうねりと差がある。

研究のあり方が刷新を迫られているのは量子の領域に限らない。人工知能(AI)やアルゴリズムの時代だ。テクノロジーを創出するにも、暴走を防ぎながら駆使するにも、いろいろな発想やアイデア、価値観の融合が欠かせない。

トランジスタや太陽電池、パソコンの原型の開発など技術史に残る結果を出した米国のベル研究所、ゼロックスのパロアルト研究所は多士済々が活気のもとだった。さらにいま、組織の壁を越え、大きなスケールで人と人が化学反応を起こす研究環境をコーディネートできるところが優位に立つ。

日本の研究者は67万人と米国や中国の半分以下。研究費も両国の3分の1ほどだ。問題はそうした資源が無駄なく生かされているかどうか。論文数や特許出願の推移をたどると、日本の存在感はじわじわ縮んでいる。よその国以上に知のコラボレーションが必要なはずが、そうはなっていない。

人材の流動性を高め、大学と企業をまたいで研究者が活躍できるようにと国が整えたクロスアポイントメント制度。だが大学から企業に動いたのは2017年度でわずか7人。聞けば大学と企業の給与体系の違いなどイノベーションとかけ離れた事柄が障害だ。専門性を携えて研究者が産官学をわたり歩く米国とは景色が異なる。

望みがないわけではない。

AIスタートアップのカラクリ(東京・中央)でデータサイエンティストをつとめる吉田雄紀氏。機械学習を研究する東京大学の大学院生、内科の医師でもある。量子コンピューターを使いこなすコンテストで優勝経験があり、能力を縦横に発揮している。

ひとつだけに打ち込めばときに行き詰まるが、「3足のわらじ」なら新たな問題意識が芽生え、知見が高まるという。柔軟な研究スタイルを欲する若者は日本にも少なくない。うまく環境をつくれば組織間の人の流れも太くできる。

VALUENEX(バリューネックス)という情報解析ベンチャーがある。大量の特許文書を分析し、企業がもつ研究の強み、弱みを浮き彫りにするサービスを手がける。大手を中心に日本でも導入する会社が増えている。

自社の研究の実力を知れば、どんな企業と手を組むべきか、スタートアップを買収すべきか見極めやすい。内向き色が濃い伝統的な研究体制から脱するひとつのきっかけになりうる。

グーグルやIBMの動きを遠巻きに眺めているだけでは、日本の研究力が細るばかりだ。

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ダスキンは4月、社員の復職制度の対象者を広げた。介護や育児に限っていた退職理由を、キャリア形成のための留学や転職などでも使えるようにした。人手不足で売り手市場が続くなか、若手の離職率は上昇している。自社での就業経験がある人材が門戸をたたきやすくし、即戦力を確保する。

入社後に一度だけ使える復職制度「よつ葉Dターン」を2009年に導入。今では退社時に正社員としての就業期間が2年以上で、一定の社内評価が条件となる。復職時には50歳以下で退職日から数えて5年未満、復職後に3年以上働けることが求められる。

復職後の部署や役職、給与水準は基本的に退職する時と同じ。事前に人事担当者と面談し、勤務時間や勤務エリア、職域などを決める。早くなじめるよう上長が直接復職者を指導するサポート体制も準備する。



同制度で戻った片山友香さん(34)は、2015年に結婚に伴う転居がきっかけでダスキンを辞めた。子どもが1歳半になり、2019年2月に復職。愛知県在住のため退社時とは違う東海エリア限定の総合職として復帰し、以前とは違うクリーニング関連サービスを担当する。未経験の部署のため不安もあったが「上長がマンツーマンで指導してくれ、早くなじめた」と話す。

ダスキンが同制度を始めたきっかけは社内の声だった。社内制度全般について改善点を吸い上げたところ、復職に関する制度がないことへの意見が多かった。4月の改定前の段階で同制度の累計申請人数は14人。うち5人が復職した。

制度を改めた狙いは辞めた若手の再獲得だ。ダスキンでは入社後2〜3年間は販売店の店長などとして働く。営業などで加盟店のオーナーとやりとりするには現場経験が必要だからだが「思っていた仕事と違うと辞める人もいる」(人事部の野口幸延氏)。

理由を介護などに限らない復職制度があれば「一度辞めてよそで経験を積んでからでも戻れる安心感は、学生にとってもダスキンへの入社の後押しになる」とみる。

終身雇用が崩れるなかでも最初に入った会社への思い入れが強い人も多い。経験値をあげて学生時代に選んだ会社に戻る。そんな選択肢を設ければ、多様な戦力を得やすくなるかもしれない。

(下野裕太)

子育て世帯の経済的負担を減らす幼児教育・保育無償化が10月に始まってから1カ月。2017年秋、安倍晋三首相が衆院解散時に方針を打ち出してから2年で制度設計しただけに急ごしらえの感は否めず、国の要請とは異なる動きも出てきた。保護者に広がる戸惑い。現場で何が起きているのか。

内容同じで値上げ

「保育内容は良くなっていないのに」。東京都世田谷区に住む女性はモヤモヤしている。9月中旬、子供が通う幼稚園が値上げすると知った。10月に教材費と冷暖房費の合計額を月4千円から6千円に引き上げたうえで、保育料も無償化上限額まで値上げするという内容だった。

園は人手不足で行事も縮小。値上げに合わせた保育の見直しはない。補助もあり女性の支出は減ったが、釈然としないという。

国は無償化に際し、質の向上を伴わない保育料引き上げを控えるよう求めていた。だが実際には「便乗値上げが疑われる例が複数報告された」(文部科学省)。東京都によるとここ数年、都内の私立幼稚園は平均0.8〜0.9%値上げしてきたが、今年は4月時点で2.2%と例年より上げ幅が大きかった。

増税もあり、多少の値上げは仕方ない面がある。世田谷区の担当者は「私立の値上げを行政が規制するものでもない」と話す。ポイントは保護者に納得感があるかだが、中央大学の宮本太郎教授は「経営状態が悪い園の延命にならないか」と懸念する。国は10月に入り、妥当性を確認し必要に応じて指導するよう都道府県などに通達した。

別におかず代発生

「なぜ負担が増えるの」。千葉県市川市のこども政策部では10月になっても保護者からの電話が続いた。無償化に伴い市内の認可保育所などに通う3〜5歳児約5千人のうち、約280人の利用料が増額。9月までに負担していた保育料より割高になる「逆転現象」が起きたのだ。

同市は9月まで18歳未満の子が3人以上いる家庭向けに、認可保育施設の保育料を月最大2万5千円独自に減額してきた。例えば5歳になる第3子が保育所に通っている場合、本来2万円の保育料が0円になる、という具合だった。



無償化に伴い、国は3〜5歳児のおかず代を保育料から切り離し、原則保護者が支払う仕組みとした。市川市のケースでは、保育料が0円だった5歳児に、月4500円程度のおかず代が発生する。

市は「幼稚園ではお昼代は保護者負担。施設間の公平性を期す」との立場。国は年収360万円未満の家庭でおかず代を無料にするなど低所得層に目配りした。負担増の家庭が出ないよう自治体に配慮を求めたが、堺市や甲府市などでも2020年度以降、逆転が起こる見通しだ。多子世帯に手厚く補助してきた自治体で制度とのズレが出ている。

質の担保置き去り

「子供の命を危険にさらすのでは」。保育事故の当事者らが集まる「保育の重大事故をなくすネットワーク」共同代表を務める藤井真希さんは今回、保育士配置など一定の基準を満たさない認可外も一律無償化されたことを心配している。

2018年に起きた保育中の死亡事故9件のうち、6件は認可外だ。団体では今夏、認可外の安全対策について自治体に調査。276自治体のなかで、基準外の認可外を無償化の対象にしないなど何らかの安全確保に取り組む考えを示したのは72自治体にとどまった。

認可に入れられず、苦渋の選択として通わせている家庭もある。甲南大の前田正子教授は「認可外の質を担保する仕組みをつくらないまま、見切り発車してしまった」と危惧する。認可外の安全監査を担うのは都道府県などの自治体。専門知識を持つ人員の配置や育成など体制充実が急務だ。

(天野由輝子氏)

国の補助金を受けて整備され、自治体が耐震性を調査した河川管理施設や下水道施設などの防災施設のうち、約6割で電気設備の耐震性を調べていなかったことが会計検査院の調査でわかった。検査院は「電気設備の耐震性が確保されていない場合、地震発生時に河川防災施設の機能が十分に発揮されないおそれがある」として国土交通省に改善を求めた。

河川管理施設とは水門や雨水排水ポンプ場など。建屋や水門、ポンプなどで構成され、制御装置や停電時のための自家発電装置などの電気設備が設けられている。水門は災害時、水位が上がった本流から支流への逆流を防ぐために閉じたり、雨水を排水するために開けたりして防災上の重要な役割を持つ。



検査院が調査の対象としたのは、国の補助金で整備され、2018年度末までに自治体が耐震性を調査した9県38市町の272の防災施設。その結果、8件21市町の158の防災施設(補助金は約945億円)で電気設備の耐震性を調べていなかった。

国交省が自治体に対し、指針で防災施設本体の耐震性の調査方法は明確に示していたが、電気設備の調査方法は示していなかったのが、調査の未実施の原因とみられる。

例えば、三重県は志摩市を流れる前川の河口部に1998年、津波や洪水の被害を軽減するため「鵜方水門」を設置した。南海トラフ巨大地震の被害が想定されていることから、県は2012年に水門の耐震性を調査し改修工事をした。しかし、水門を稼働させるための制御装置や自家発電装置の耐震性は調べていなかったという。

県河川課の担当者は「電気設備の耐震対策は国から明確な指針が示されておらず、どのように対応したらいいのか分からなかった。今年中に耐震性の調査にとりかかる予定で早急に対応したい」と話している。

検査院の指摘を受け、国交省は今年9月、自治体に対して防災施設の電気設備についても耐震性を調査する必要性を伝達している。

一方、自然災害で決壊すると人的被害が生じる恐れがある「防災重点ため池」などについて、23府県が国の補助金を受けて耐久性などを調査した約1万カ所を検査院が調べたところ、約4割で危険性の判定が不十分だったことも判明した。

国の指針では「200年に1度に起こる洪水」が基準だが「50年に1度」にするなどしていた。改修が必要なため池が見逃されている可能性があるという。

ODA効果は不十分 給水施設未使用 検査院指摘

主に発展途上国を対象に、インフラ整備や人道支援などを実施する政府開発援助(ODA)を会計検査院が調べた結果、約20億円の事業で整備したソロモン諸島の給水関連施設が全く使われていないなど、十分に効果を発揮していないものがあったことがわかった。

検査院は10カ国の146事業を抽出調査。返済義務を課さずに資金を提供する無償資金協力で実施したソロモン諸島の給水事業では、水の濁りを改善する施設を整備したが、既存の送水管が漏水していたため、施設経由では目的地まで水が届かなかったという。

施設は2014年の完成直後に使われなくなり水質も改善されなかった。国際協力機構(JICA)が計画時に送水管などの状況を見落としていたという。

海上監視目的で2015年にベトナムに提供した中古船3隻(調達額計約2億円)は、少なくとも3年以上使われずに、造船会社の岸壁に係留されたままだった。また、約110億円の有償資金協力で2008年に建設したインドネシアの下水処理場は、処理後の水質が目標値に達していなかった。

〔共同〕

首都圏の自治体が児童をたばこの煙から守る取り組みを強化している。7月に学校施設内の禁煙を定めた改正健康増進法が施行され、望まない受動喫煙を防止するための取り組みは「マナー」から「ルール」へと変わった。自治体は児童の体内に取りこまれたニコチン量を可視化したり、学校周辺まで禁煙エリアに指定したりして、地域の大人の自覚を促している。

千葉市は10月10日、若葉区の小学校全20校の4年生を対象に、希望者を募って受動喫煙の影響を調べるモデル事業を始めると発表した。尿検査でニコチンが体内に取り込まれてできる「コチニン」の含有量を測り、過去数日の受動喫煙の影響が分かる。尿検査に合わせ、教師らが煙が人体にどのような影響があるかを伝える授業もする。

4カ月児検診に併せて実施しているアンケートによると、若葉区の父親の喫煙率は37%。市平均を11ポイント上回り、突出して高い。千葉市はまず同区の保護者に意識改革を促し、その後全区へと水平展開する。熊谷俊人市長は「屋内の受動喫煙に対し、国民意識が追いついていない。市民理解を広めるためには影響を可視化することが大事だ」と指摘する。

埼玉県熊谷市は2007年から児童の「コチニン」を測り、着実な成果を上げた。市立小学校に通う4年生を対象に検査を実施しており、2018年度コチニン濃度が高かった児童は全体の2%あまり。2007年度比で10ポイント低下した。

同市は濃度が高かった場合、保護者に小児科を受診するよう促している。担当者は「数値で受動喫煙の有無が明確に分かるため、親の禁煙・分煙に対する意識付けが進んだ」と胸を張る。

千葉県君津市も今年度から、小学4年生に対する尿検査を実施する。予算250万円を確保し、市内の小学4年生550人に対し一人4000円の検査料を負担する。

日本禁煙学会によると、親らの影響で受動喫煙を受けた小学生以下の児童は、受動喫煙を受けていない児童と比較して1.5〜2倍、気管支炎や肺炎になりやすい。小児白血病やリンパ腫、脳腫瘍の確率は2〜5倍に増えるという。

禁煙学会の担当者は「病気の可能性が高まるのはもちろん、体の小さい子どもは目まいなど受動喫煙による一時的な症状も大人より早く現れやすい」と語る。

児童を受動喫煙から守るため、踏み込んだ条例を施行する動きもある。東京都調布市では学校や児童福祉施設のほか、周囲の道路まで禁煙の対象エリアとして条例に明記した。学校の敷地内のみを禁煙とする国が施行した改正健康増進法よりも厳しい内容だ。

調布市の担当者は「条例策定に向けた検討会では、通学路での受動喫煙に関する問題意識も多く上げられた。市内が会場となっている東京五輪・パラリンピックも控える中、早急に対策を打ちたかった」と語る。

日本禁煙科学会理事長を務める京都大大学院の高橋裕子特任教授は「児童に主眼を置いた受動喫煙対策は世界的にも珍しい。社会の理解を得やすく、自治体としては比較的簡単に政策をまとめることができる点で画期的だ」と語る。今後首都圏の各自治体の取り組みが成果を出せば、全国的な広がりにつながりそうだ。(出口広元)

■受動喫煙
 世界保健機関(WHO)によれば、受動喫煙で死亡する人は年間100万人。うち5歳未満の児童は6万人に達するという。
 禁煙ムードの世界的な高まりや東京五輪・パラリンピックを控え、政府は2018年7月、改正健康増進法を成立させた。同法は段階的に施行され、2019年7月には学校や病院の敷地内が禁煙となった。全面施行は20年4月。以降は飲食店も原則禁煙となる。
 政府の対応を受け、首都圏の各自治体でも取り組みが広がっている。千葉市は2020年4月から改正健康増進法よりさらに規制内容を強化した独自の受動喫煙防止条例を施行する。従業員を雇う飲食店は店舗面積を問わず原則禁煙とする。

強い神経毒、東京港で確認 繁殖力高く根絶は困難

南米原産で強毒を持つヒアリが国内に初めて定着した恐れがある。10月、東京港青海ふ頭で働きアリが約750匹、女王アリも約50匹確認された。巣ができてから少なくとも数カ月たっており、羽のある女王アリが周囲に飛んで新たな巣を作っている懸念がある。海外の事例をみると一度定着してしまうと根絶は難しい。政府は対策を急ぐが、防げるか瀬戸際の状況だ。



ヒアリは体長2.5〜6ミリメートル程度。小さいが慌ただしく動く性質があり、日本の在来アリには見られない繁殖力と攻撃力が特徴だ。

女王アリは雄と交尾した後、1日で1000個以上産卵する力を持つ。年間では25万個にも及ぶ。数キロ先まで飛ぶことができ、飛び降りた地点で産卵し、そこで巣作りを始める。日本の在来アリではまれなドーム状のアリ塚を作り、半年で最大1万匹程度まで一気に増える繁殖力がある。

アリ塚が目立つようになるまでは地面深くに巣を作っているため、潜伏期間中は地面からでは動きが見えづらい。国立環境研究所の生態リスク評価・対策研究室長の五箇公一さんは「気付いた時には女王アリが周囲に拡散し、もう手遅れということになりかねない」と指摘する。

米で数十人の死者

攻撃力も脅威だ。働きアリは尻の部分に針を持ち、「アルカロイド」という成分を敵に注入する。微量でも動物の神経を侵す毒で、人の場合、刺された瞬間に火で焼かれたような激しい痛みを感じることが特徴だ。

アレルギー体質の人は、ハチに刺されたときと同じように、血圧の低下やじんましんがでたり、意識がもうろうとしたりする「アナフィラキシーショック」に襲われることもある。ヒアリが定着した米国ではこれまでに少なくとも数十人の死者が出ている。

五箇さんは「アマゾンの生きるか死ぬかの生息環境で暮らしているため、子孫を残し生き延びる力が高い」と説明する。南米アマゾンにはヒアリの天敵である「ゾンビバエ」と呼ばれるノミバエがいたり、ほかのアリなどとの激しい生存競争があったりする。日本はそうした環境ではなく、被害が広がる可能性もある。

ヒアリの被害は人間や動物だけでなく、インフラにも及ぶ。熱を好む性質があり、様々な電子製品の内部に集団で入り込む。海外では信号機や空港の着陸灯を故障させた例もある。また電線をかじり、ショートさせ火災の原因となることもある。家畜などの被害と合わせて米国では、年6000億〜7000億円の被害が生じているという報告がある。

世界の貿易が活発になるにつれ、ヒアリは各国で問題となっている。船や飛行機のコンテナに紛れ込み、2000年代以降、オーストラリアや中国、台湾など南米から遠く離れた場所でも発見されるようになった。ヒアリが定着した国では莫大な費用を投じて駆除を進めているが根絶には至っていない。

徹底駆除が急務に

唯一根絶に成功したニュージーランドは、比較的涼しい気温のため巣の成長が急速でなく、さらに早期に徹底駆除したことが奏功したといわれる。温暖な日本は、何としても早期に対策をする必要があるわけだ。

今回見つかったのは、各国から貨物船が寄港する青海ふ頭のコンテナ置き場で、地面のコンクリートの継ぎ目にたまった土からヒアリが出入りすることが確認された。多数の女王アリと働きアリからなる「コロニー」と呼ばれる集団がすでに形成されていた。

「定着すれば日本社会に大きな影響が出る。徹底した防除を進める」。環境相の小泉進次郎さんはヒアリ発見直後の10月18日の記者会見で強調した。政府は21日に緊急の閣僚会議を開き「次元の異なる事態の発生が確認された」として最大限の警戒を呼びかけた。東京都も25日に対策会議を開き、住民に注意を徹底するように念を押した。

見つかった場所から半径2キロメートル圏内には学校や公園もある。環境省は東京都などとも連携してアリのエサを地面に置き、ヒアリの有無を調べる調査などを11月末まで重点的に進めている。

国内のヒアリは17年に神戸港で見つかって以降、すでに14都道府県で発見されている。注意を怠ればいつ定着してもおかしくない状況だ。ヒアリとの水際での攻防戦に終わりは見えない。

(安倍大資氏)

体験会、声掛け合って連携


日本ブラインドサッカー協会が実施している競技の体験会(10月、東京都新宿区)

2020年東京パラリンピックを来夏に控え、ボールから鳴る音を頼りにプレーする視覚障害者向けの「ブラインドサッカー」の競技団体が、平日夜に実施している体験会が好評だ。目隠しして視覚に頼らないことで、周りの人とのコミュニケーションの重要性を学ぶきっかけにもなり、研修に取り入れる企業が年々増えている。

「こっちです」「もう少し右!」。東京都新宿区の多目的ホールで開かれた体験会。アイマスクをしたキッカーがボールをコーンに当てる練習中、アドバイスをする参加者の声が響いた。

ブラインドサッカーは1チーム5人で、キーパー以外は目隠しをする。フェンスで囲んだフットサルコートを使用し、ボールからは鈴のような音が鳴る。2004年のアテネパラリンピックから正式種目に採用された。

月に数回開かれる体験会は1回2時間ほど。輪になった数人がボールを投げて回し、内側にいる見えない状態の人が音や指示を頼りにボールを触りに行く。

10月中旬に参加した東京都中野区の会社員、川本拓也さん(25)は「周りの人の助けがあると全然違う。自分から伝える大切さを改めて学んだ」。大阪府茨木市から訪れた会社員、栗野修至さん(38)は「声を掛け合うことと、相手の気持ちに立つ必要性を実感した」と満足そうだった。

日本ブラインドサッカー協会は普及を目指し、2014年に体験会を開始。当初は1回の参加者が10人に満たない日もあったが、現在は申し込みが定員の20人を超える日も。2019年3月までに計3千人以上が参加した。

職場のチームワーク向上を目的に研修で活用する企業も多い。協会は2012年から講師派遣のプログラムを開始し、昨年度は66の企業と団体の計約4800人に実施した。同僚との信頼関係構築に有効だとして毎年利用する会社もあるという。

同協会D&饂業部の剣持雅俊部長は「見えないからこそ、互いの意思疎通が重要になる。多くの再発見があるので、たくさんの人に体験してほしい」と話す。

日用品で日本初、米新興と連携 漂着多い日本に照準

米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)は6日、日本の海岸で回収した海洋プラスチックごみを洗剤容器に再生すると発表した。海洋を漂うプラごみは環境などへの影響が問題になっているが、回収や再利用は進んでいない。プラスチック容器を扱う企業への消費者の視線は厳しさを増しており、対策が求められている。再利用が定着するには高い回収コストなどの課題の解決も必要になる。


P&Gジャパンのベセラ社長(右)は海洋プラスチック問題の解決に意欲を示した(6日、東京都内)

「アジアはプラごみの海洋流出が多く、日本もプラ製品に依存している。業界代表として再利用の取り組みを示していく責任がある」。日本法人のP&Gジャパンのスタニスラブ・ベセラ社長は同日、都内での記者会見で語った。

台所用洗剤「JOY(ジョイ)」で容器原料の25%に海洋プラごみを使った製品を今月9日から55万本出荷する。1〜2カ月分の販売量に相当する。店頭想定価格は158円で、既存品と同水準にした。日本で海洋プラごみを使った日用品は初めてという。

取り組みは再利用ノウハウを持つ米スタートアップのテラサイクルと連携している。P&Gは欧州で2017年から海洋プラごみを容器の一部に使用した台所用洗剤やシャンプーを発売し、北米でも今年から販売している。環境配慮の商品を好む「エシカル(倫理的)消費」が定着する欧米の消費者に対応する狙いだ。

次の展開地域として日本を選んだのはアジアからの漂着ごみが多いうえ、高い再生技術を持つリサイクル企業が多いことが理由だ。回収から加工まで国内で完結でき欧州より多くの量を再生できる。今回は長崎県対馬市の海岸に漂着したごみをボランティアが回収。テラサイクルの提携業者が分別し6トンのペットボトルを選別し粉砕・洗浄して容器に再利用した。

世界では年間約800万トンのプラごみが海に流れこむ。日本の海岸への漂着物は市区町村単位の最大推計でプラスチック以外も含み年40万トン超とされ、世界の中でも海洋プラごみの漂着は多いと見られている。



それでも日本で海洋プラごみの再利用の取り組みが少なかったのは、コスト面で課題があるためだ。P&Gジャパンの台所用洗剤も陸上で正規ルートで回収した再生プラよりも原材料費は割高だ。海洋プラごみは回収量が安定しないうえ、再利用できる品質にするための分別費用が通常のプラスチックの再生に加えて必要になる。

国内の日用品メーカーは使用量の削減や通常の再生プラの活用などで海洋プラごみの削減を目指している。花王もプラ使用量を減らした新容器を30年までに年3億個普及させる目標を掲げる。ライオンも旭化成などとプラ容器再生の新技術開発に乗り出した。

海外のメーカーも同様の取り組みは進めているが、加えて海洋プラごみの再利用を始めているのは国際社会の関心の高まりも大きい。6月に大阪で開いた20カ国・地域(G20)首脳会議では廃プラによる新たな海洋汚染を50年までにゼロにする目標が掲げられた。日本もコストの課題が解決され消費者の需要を確認できれば、P&Gのような取り組みが相次ぎそうだ。

大雨被災地 1カ月で5億円超、地域間で寄付額に差



台風19号やその後の記録的な大雨の被災地支援を目的に返礼品なしで募集しているふるさと納税の寄付金が、少なくとも5億7千万円に上ることが6日までに分かった。発生後わずか1カ月弱で集まった多額の支援。熊本地震や西日本豪雨でも活用され、被災地支援の手段として定着した形だ。ただ、被害が頻繁に報道されている地域に寄付が集中し、自治体間の差が広がっている。


ふるさと納税の仲介サイト「さとふる」の画面

寄付金は、一部の仲介サイトが被災地支援の一環として募集。返礼品がある一般的なふるさと納税と違って仲介手数料を取っておらず、自治体は全額を復旧に使える。

最大手の「ふるさとチョイス」と、ソフトバンクグループの「さとふる」の両サイトを介した寄付が、5日時点で計約5億7千万円。ほかの仲介サイトでも支援を募っており、寄付総額はさらに多い見込みだ。

両サイトは2018年の西日本豪雨で約18億円、2016年の熊本地震で約22億円を集めており、さとふるの担当者は「年末に向けて金額は積み上がるだろう」と予想する。

中心地が浸水した宮城県丸森町には約3300万円が寄せられた。被災前のふるさと納税の月平均は100万円弱で、担当者は「大変ありがたい。一日も早い復興に役立てたい」と話す。

千曲川の堤防決壊で甚大な被害が出た長野市は約5900万円。福島県いわき市は約1300万円、千葉市は台風15号被害への寄付も合わせて約1100万円だった。

一方、多数の住居が浸水した福島県須賀川市では200万円程度、2人が死亡した栃木県鹿沼市は約100万円にとどまる。鹿沼市の担当者は「甚大な被害が広く知られていない」と分析する。

神戸大の保田隆明准教授(金融論)は「自治体がSNS(交流サイト)などを活用して被災状況を発信することが重要だ。具体的な使途を明示することで、支援の輪が広がる可能性もある」と指摘する。

高校生「災害の教訓広める」 「世界津波の日」、国連で討論会
【ニューヨーク=共同】「世界津波の日」の5日、津波防災への意識向上を目指す討論会がニューヨークの国連本部で開かれた。世界の高校生が災害の脅威を学ぶため9月に札幌市で開いた高校生サミットの共同議長、札幌国際情報高2年の井戸静星さん(17)らが午後の討論会でサミットの成果を報告し「災害の教訓を世界に広めるのが私たちの責務だ」と語った。

午前の討論会では、被災地に残る言い伝えとインターネットの技術を防災にどう生かすかなどが議題になった。

サミットの共同議長、札幌日本大高1年の桐越航さん(16)は「防災関連の情報を北海道からSNS(交流サイト)を通じ世界の高校生に発信する。小さな一歩だが皆が同じことをすれば大きな動きになる」と強調した。


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