妊婦や産後まもない母親の自殺を防ごうと、行政が専用の相談窓口を設けるなどの取り組みを始めている。子育てに悩み自殺願望を抱く母親は少なくないが、妊産婦に限った統計はなく、実態はよく分かっていない。関係者は「見過ごされてきた妊産婦の心のケアに目を向け、社会全体で防ぎたい」と話す。
 「初めての子育てへの使命感で自分を追い込んでいた」。関東地方に住む30代の女性会社員は長男(3)の出産直後から不眠に悩まされた。相談したメンタルクリニックからは「育児が苦手なだけ」と言われ、産後3カ月の時、遺書を書き、電車に飛び込もうと子供を家に残して駅に向かった。
 自殺未遂の後、医師の勧めで精神科に入院。睡眠薬の処方で少しずつ回復に向かった。「まさか自分が産後うつになるとは思いもしなかった。妊産婦の自殺は特別なことではない」と振り返る。
 全国的な統計がなく実態が分からなかった妊産婦の自殺について、近年、一部地域での調査で明らかになりつつある。東京都監察医務院によると、東京23区内で2005〜14年、妊娠中から産後1年未満の女性63人が自殺していたと判明した。
 大阪市の監察医、松本博志・大阪大教授らは12〜14年の調査から、妊産婦の自殺者数が全国で年間90人近いと推定した。東京、大阪の結果はいずれも病気などによる妊産婦死亡率を上回る数だ。
 こうした調査を機に、大阪府は全国に先駆けて妊産婦からの相談に特化した電話窓口「妊産婦こころの相談センター」を16年2月に開設。16年度は244件、17年度は354件の電話が寄せられた。
 「赤ちゃんを連れて死んでしまいたい」。産後の母親や妊娠中の女性から切実な電話が相次ぐ。「育てられなければ里親制度もある」「しんどい時は何度でも連絡してね」。1時間以上話し込む人もいる。相談は女性本人が約8割で家族や医療機関からもある。死をほのめかす深刻な相談は、地域の保健師に自宅訪問を要請し、精神科への受診にもつなげる。
 重症化すると命に関わる産後うつを啓発する動きも広がる。文京学院大(東京)は17年11月、リーフレット「ママから笑顔がきえるとき」を作成し、全国の個人や自治体に約1万部を無料配布した。産後の心身の変化や対処法を紹介し、「一人でかかえこまないで」と伝えた。埼玉県ふじみ野市は18年4月から保健所で母子手帳を受け取る妊婦に渡している。
 国も妊産婦の対策に動き始めている。厚生労働省は17年にまとめた自殺総合対策大綱で、妊産婦への支援強化を盛り込んだ。17年度からは一部の自治体に向けて、産後2週間と1カ月時に「産後うつ」予防の健診助成制度を始めた。
 大阪母子医療センター(大阪府)の産科医、光田信明さんは「良い母親であることへのプレッシャーなど、今の社会で子育てをする女性は誰しもしんどさの種を抱えている。職種を越えて支援のネットワークをつくり、社会全体で母親を支える体制を広げたい」と話す。


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